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主張救急医療 問題点洗い出し充実を

公明新聞:2007年10月4日

公明、プロジェクトチーム設置し取り組み強化

広域連携などに課題

 自民、公明の連立政権合意にも重要課題として盛り込まれ、国民の命を守る取り組みとして救急医療体制の整備が急がれている。もちろんこれまでも国や自治体が力を入れてきたことは間違いないが、8月に起きた、奈良県の妊婦が多数の病院に受け入れを断られた末に救急車内で死産したケースなどを検証してみると、医師不足なども背景に、広域の連携などで多くの課題のあることが浮き彫りになる。率直に問題点を洗い出し、行政のタテ割りを排して取り組むことが求められている。

 公明党は先月(9月)、これまで以上に救急医療体制の整備に力を入れるため、政務調査会に「救急医療の体制整備に関するプロジェクト(PT)」(座長=渡辺孝男参院議員)を設置した。同プロジェクトチームは厚生労働省や総務省などから現状について聞き取りを行うとともに、2日には日本航空医療学会理事長の小濱啓次氏を招いてあるべき救急医療体制について聞き、さらに救急医療で先進的な取り組みを行っている東京都を視察するなど、積極的に活動を進めている。

 奈良県では、昨年(2006年)8月にも分娩中に意識を失った女性が19の病院に受け入れを断られた後、搬送先の病院で死亡している。厚労省と総務省消防庁はこうした現状を踏まえ、産科救急患者の受け入れを断られたケースの実態調査を行い、現在、集計を行っている。

 産科に限らない類似の調査(消防庁「平成18年版 救急・救助の現況」)を見ると、2005年中に救急車で運ばれた495万5976人のうち、0.7%に当たる3万5122人が実際に1回以上転送され、その半分以上を「処置が出来ない」という理由が占めていた。0.7%という数字をどう見るかは難しいところだが、タライ回しされる以前に、受け入れ先の病院探しに窮し、救急車が現場に長時間とどまっているケースは、これを上回る割合で起きていることが容易に想像される。転送の件数だけを見ても、奈良の妊婦のような事例が全国で頻発しても不思議ではない状況と言えよう。

 命にかかわるような高次の救急医療のほかにも、日常の生活では「子どもが急に熱を出した」など小児救急の体制整備も課題になる。とりわけ休日・夜間の急な病気の対応が問題になるが、入院を要する患者の受け入れでは、396ある小児救急医療圏の62%に当たる246地域で、地域の病院が輪番で受け入れる体制をつくっているにとどまっている。

 小児科については医師不足を背景に、医師を地域の拠点病院に集約配置する取り組みも同時に進められており、各地の実情に合わせたシステム構築へ、自治体の調整能力が問われている。

親たちの不安の表れ

 小児の救急では、入院を要する患者を受け入れる「二次医療機関」を訪れる患者の90%以上が、入院を要しない軽症患者であることも分かっている(東京都の調査)。周囲に相談できる人がいない若い親たちの不安の表れともいえる現状に合った保健、健康教育も併せて進める必要があるだろう。

 「先進民主主義国家とは、政府が一人の国民の命もゆるがせにしない仕組みを確立した国家」(危機管理総合研究所の小川和久所長)との指摘がある。ドクターヘリを有機的に組み合わせるなど役割分担と連携、情報のネットワークで医療機関の力を最大限に発揮できる体制を構築すべきだろう。

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