小児の専門病院に6:1看護?

 「小児医療の質全体を上げるためにはトップレベルのところをしっかりしてもらう」――。2008年度の診療報酬改定に向けて10月3日に開かれた中医協・診療報酬基本問題小委員会(会長=土田武史・早稲田大商学部教授)では、厚生労働省保険局の原徳壽医療課長が小児医療の診療報酬見直しについて説明。診療報酬の施設基準以上の医師を配置し、特に手厚い体制が取られているような小児医療の専門病院について診療報酬を引き上げることを提案したが、委員からは異論が噴出。「専門病院を手厚くしても医師にはストレートに伝わらない」「センター的な専門病院の6対1看護を評価してほしい」といった意見が出された。

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 次期診療報酬改定に向けた審議は10月から毎週水曜日と金曜日の週2回のペースで開催し、19項目について審議する。
 第1回目となったこの日の中医協・診療報酬基本問題小委員会では、「小児医療の診療報酬の引き上げ」などについて審議した。

 厚労省の原医療課長は、「小児入院医療管理料の創設」や「乳幼児の救急医療の加算の創設」など、これまでの小児科における診療報酬改定の変遷を振り返り、「この10年間で小児科の勤務医は8.8%増加している。小児科医は微増だが年々増えている」と強調。小児医療に重点的な評価を行ってきたことにより、一定の成果を上げているとした。

 その上で、原医療課長は「小児医療入院管理料1」について触れ、最も手厚い小児医療を提供している施設では、同管理料の配置基準である「常勤の医師5人」を超える20人以上の医師を配置している施設があることを指摘。「都道府県の小児医療の水準を向上させている割には評価されていない」として、「専門的な小児医療機関に対しては、さらなる診療報酬上の評価を行ってはどうか」と提案した。

■ 専門病院に限定すべきか
 
竹嶋康弘委員(日本医師会副会長)は「県立こども病院しか取れないだろう。専門病院の入院医療を偏重することなく、(診療所などを含めた)初期医療の外来対応を評価してほしい」と述べ、専門病院に限定することのない点数評価を求めた。

 これに対して、厚労省の原医療課長は「もちろん、プライマリーケア(初期医療)で対応していただくことは重要だ。従来からもさまざまな工夫をして点数を付けてきた。『その点数をさらに上げるのか』という議論もあるが、“もう少しの工夫”という点では良いものはない。小児医療の質全体を上げるためには、トップレベルのところをしっかりしてもらうという提案だ」と答えた。

 対馬忠明委員(健康保険組合連合会専務理事)は「小児医療にはさまざまな論点があるので、手厚い体制の専門病院に限定する必要はない。支払い側としては言いにくいが、場合によっては専門病院に限定せずに小児入院管理料を上げることが必要かもしれない」と述べた。

■ 開業志向を止められるか
 
松浦稔明委員(香川県坂出市長)は「専門的な病院を手厚くしてもストレートには医師に伝わらない。そこを工夫しないと勤務医は充実しない」と指摘。診療報酬上の評価は病院経営にとってはメリットになるが、個々の医師に対するインセンティブとしては十分に機能しないとした。

 松浦委員の意見には丸山誠委員(日本経団連社会保障委員会医療改革部会部会長代理)も賛成した。丸山委員は「産科、救急にも同じことが言える。個々のドクターそれ自体に対して、その苦労に報いる“報酬”や“手当て”を検討すべきだ。小児、産科、救急の医師は苦労ばかりで報いがない」と指摘し、それぞれの医師に行き渡る工夫がないと開業に向かってしまうおそれがあるとした。

 土田会長は「重要なご指摘だ。小児科だけを特別に扱うのは工夫が難しいので、“勤務医の負担を軽減する何らかの対応が必要だ”と解釈したい。これは大きな項目だと思う」と述べ、勤務医の開業志向に対する歯止めは「負担軽減」を中心に審議する方針を改めて確認した。

■ 6対1看護も評価?
 
竹嶋委員は「専門病院には医師が集まるが、他の病院から小児科医がいなくなる。患者にとってアクセスしやすい病院が減ってしまう。しかし、地域の仕組みをつくれば専門病院がなくても対応できるのではないか。また、小児の採血には看護師が2人ぐらい必要だろうし、このような点も併せて小児医療全体を考えていく必要がある」と述べ、小児医療の提供体制などにも目を向けた議論を求めた。

 古橋美智子委員(日本看護協会副会長)は「先端的な医療を提供している小児の専門病院には医師も多く、同時に看護師も多く配置されている。現実的には6対1看護、さらに5対1看護という病院もある。そこを評価されないと、経営の赤字領域が広がって採用人数にブレーキがかかる」と指摘。「7対1が大きな議論になった時なので、こういうことを言うとひんしゅくを買うかもしれないが、小児医療のセンター的な病院における6対1を評価していただきたい」と求めた。

 土田会長は「1つの提案として受け止めたい」と答えるにとどまった。


更新:2007/10/04   キャリアブレイン

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