平成19年9月7日

地方公共団体におけるホームページ等ウェブアクセシビリティ
に関するアンケート結果の概要

  地方公共団体のウェブアクセシビリティ(注1)に関する取組の現状を調査するため、平成19年7月、全国の地方公共団体に対して、アンケート調査を実施しました。結果概要は別紙のとおりです。
(注1)ウェブアクセシビリティ 高齢者・障害者を含む誰もが、ホームページ等を支障なく利用できること、あるいはその使いやすさ。
1 アンケートの概要
(1) 調査目的
     地方公共団体のホームページ等が高齢者・障害者にとっても使いやすいものとなるよう、各地方公共団体の取組現状を把握することにより、今後のウェブアクセシビリティの向上のための施策の検討・展開に資するため。
(2) 調査対象
      全国の地方公共団体(都道府県含む) 合計 1874団体(平成19年7月1日時点)
  有効回答数 1873団体

2 アンケート結果のポイント
(1) 地方公共団体におけるウェブアクセシビリティ等の認知度は上昇している
     ウェブアクセシビリティという言葉及びウェブコンテンツに関するJIS規格について「内容を知っている」「聞いたことはあるが内容は知らない」と回答した地方公共団体は、それぞれ合計で、95.8%、76.9%となっており、平成17年度調査(注2)(94.9%、66.6%)と比較すると、上昇している。
(注2)   平成16年11月から平成17年11月まで開催された「公共分野におけるアクセシビリティ確保に関する研究会」において実施した調査。

(2) 「みんなの公共サイト運用モデル(以下「モデル」と言う。)(注3)」は浸透してきている
     モデルについて「活用している」「活用していないが内容は知っている」「聞いたことはあるが内容は知らない」を含めて76.9%の地方公共団体でモデルを認知しており、浸透してきている。
(注3)   ウェブアクセシビリティ維持・向上に必要と考えられる取組を、PDCAサイクルとして整理するとともに、取組実践のために地方公共団体で活用できる各種手順書やワークシート類を策定したもの。 (平成17年12月、総務省作成)
  PDCAサイクルとは、具体的には、P(Plan:基本方針策定等の全体計画策定、体制整備)、D(Do:研修実施等の計画実行)、C(Check:定期評価による実施成果の検証)、A(Action:定期評価を受けた業務プロセスの改善)
  詳細は、参考資料参照。

(3) ウェブアクセシビリティへの取組状況は全体的には進んできているが、具体的な取組状況は未だ十分ではない
     ウェブアクセシビリティへの取組状況は全体的には進展してきているが、アクセシビリティに関する基本方針を策定している地方公共団体は15.5%に過ぎず、ホームページの発注・制作・公開に当たっての配慮も十分とは言えない。
  また、モデルで「最低限の対応」としている項目では、最も多くの地方公共団体で実施している対応(「文字サイズ変更可」)でも51.9%に過ぎず、取組は十分とは言えない。

(4) 地方公共団体が抱える課題は、「職員の理解・知識不十分」が最多
     地方公共団体が抱える課題としては、「職員の理解・知識不十分」(61.9%)が最多である。
  また、モデルで示している「職員研修の実施」、「定期評価」、「定期評価を受けての業務プロセスの見直し」によるPDCAサイクルを実施している地方公共団体はわずかであり、職員の研修や継続的なノウハウ継承の仕組みがまだできていない。

(5) モデルを活用している地方公共団体ではアクセシビリティ向上のための取組が進展している
     モデルを「活用している」と回答した地方公共団体の98.5%、「活用していないが内容を知っている」と回答した地方公共団体の81.6%が、アクセシビリティ向上のための取組については「既に十分取り組んでいる」又は「まだ不十分で、今後更に進める予定」と回答している。

(6) 地方公共団体の規模が大きいほど取組が進んでおり、小さいほど取組はこれから
     地方公共団体の規模が小さいほど、アクセシビリティの認知度や取組について、「全く知らない」、「これまで取り組んでおらず、今後も取組予定なし」といった回答が多くなる。

3 今後の課題 

  モデルを活用している地方公共団体ほどアクセシビリティ向上のための取組が進展しており、取組の進展に向け、より一層のモデルの活用促進が重要。
  多くの地方公共団体が課題としている「職員の理解・知識不十分」については、モデルが示しているPDCAサイクルの確実な実施が重要。
  特に規模の小さな地方公共団体でのアクセシビリティ向上のための取組促進が必要。


連絡先 情報通信政策局情報通信利用促進課
担当 横田課長補佐、中島企画係長
電話 (代表)03-5253-5111(内線5743)
(直通)03-5253-5743
FAX 03-5253-5745




別紙
1 概況

(1)   「ウェブアクセシビリティ」の認知度
    78.2%の地方公共団体がウェブアクセシビリティの内容を理解しており、平成17年度調査(74.1%)と比べて上昇している。「内容を知っている」、「聞いたことはあるが内容は知らない」とを合計すると、9割を超える地方公共団体がウェブアクセシビリティという言葉を認知している。一方で、「全く知らない」と回答した地方公共団体は4.2%であり、平成17年度調査(5.1%)より減少。
  図表1 ウェブアクセシビリティという言葉の認知度。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。
(2)   ウェブコンテンツに関するJIS規格の認知度
    42.2%の地方公共団体がJIS X 8341-3(注4)を内容まで理解しており、平成17年度調査(28.2%)と比較すると、その認知度は高まっている。一方で、「全く知らない」と回答した地方公共団体は22.9%であり、平成17年度調査(33.3%)より減少。
  図表2 JIS X 8341-3の認知度。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。
 
(注4)JIS X 8341-3 : 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス−第三部:ウェブコンテンツ

(3)   「みんなの公共サイト運用モデル」の認知度
    平成17年12月に総務省が策定したモデルについて、「活用している」と回答した地方公共団体は10.6%だが、「活用していないが内容は知っている」、「聞いたことはあるが内容は知らない」と併せると認知度は76.9%に達している。
  図表3 「みんなの公共サイト運用モデル」の認知度。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。
(4)   ウェブアクセシビリティへの取組状況について
    「既に十分取り組んでいる」と回答した地方公共団体は8.9%に過ぎないが、平成17年度調査(2.6%)と比較すると、取組状況は進展している。「まだ不十分で今後更に進める予定」、「これまで取り組んでこなかったが、今後進める予定」と回答した地方公共団体を併せると90.7%であり、平成17年度調査(77.7%)より進展している。
  図表4 アクセシビリティへの取組状況。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。
(5)   ウェブアクセシビリティに関する具体的な取組状況について
    平成17年度調査と比較すると、アクセシビリティに関する基本方針の策定(6.9%→15.5%)、アクセシビリティ主管部署の設置(58.6%→76.9%)、具体的目標や実施計画の策定(9.2%→13.7%)、ホームページ作成・更新の際の実施手順の策定(21.4%→24.3%)、庁内向けのガイドラインの策定(21.3%→31.3%)、利用者意見の窓口の設置(50.5%→58.7%)については、いずれも増加がみられ、モデルで示されている事項についての取組に進展がみられる。
図表5 アクセシビリティに関する具体的な取組。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。

(6)   ウェブアクセシビリティに対する配慮手法(複数回答、単純合計)
    ウェブアクセシビリティに対する配慮手法に関し、モデルでは下記の項目を示しているが、「何もしていない」と回答した地方公共団体は、平成17年度調査(58.5%)と比べて減少しているものの40.7%存在している。
  平成17年度調査と比較すると、「発注に当たりJIS等の具体的な指針への準拠を要件」(6.7%→19.9%)、「発注に当たりアクセシビリティ確保を要件」(12.4%→19.9%)、「制作途中で委託業者と要件を検討」(14.2%→22.1%)、「制作途中で職員が試用して点検」(14.0%→22.0%)、「公開前に職員がツールで点検」(4.7%→15.6%)、「公開前に職員が読み上げソフトで点検」(4.9%→9.7%)の全てについて増加しており、取組に進展が見られる。
  図表6 ウェブアクセシビリティに対する配慮手法。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。
(7)   ウェブアクセシビリティに対する具体的配慮事項(複数回答、単純合計)
    「文字サイズ変更可」が最も多く51.9%の地方公共団体で実施している。「画像に代替テキスト付与」(47.6%)、「ページ識別タイトル付与」(45.0%)が続いており、モデルにおいて「最低限の対応」としている項目の取組は進展しているものの、まだ十分ではない。(※印以外が「最低限の対応」としてモデルで示しているもの)
  図表7 ウェブアクセシビリティに対する具体的配慮事項。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。
(8)   ウェブアクセシビリティ向上の取組への課題(複数回答、単純合計)
    「職員の理解・知識不十分」(61.9%)、「予算や人手が配分されない」(44.6%)、「効果的な支援・チェックツールがない」(36.7%)、「異動によりノウハウが引き継がれない」(36.5%)が上位を占めており、平成17年度調査と比較して傾向に変化はない。
  図表8 ウェブアクセシビリティ向上の取組への課題。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。
(9)   ウェブアクセシビリティ向上のため期待する支援(複数回答、単純合計)
    「点検・支援ツールの紹介」(56.1%)、「アクセシビリティに配慮したデザインテンプレートの提供」(50.0%)、「集合研修・eラーニングプログラムの提供」(47.2%)が上位を占めており、平成17年度調査と比較して傾向に変化はない。
  図表9 ウェブアクセシビリティ向上のため期待する支援。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。
(10)   その他取り組んでいる事項(複数回答、単純合計)
    モデルで示しているPDCAサイクルの具体的な取組のうち、「CMS(注5)を導入している」 地方公共団体は33.6%と一定の割合を占めているが、「職員向け研修」を実施している地方公共団体は11.4%と少なく、「定期評価」、「定期評価を受けての業務プロセスの見直し」を実施している地方公共団体はごくわずかにとどまる。
  なお、携帯サイトからの情報提供を行っている地方公共団体は45.9%に上る。
  図表10 その他取り組んでいる事項。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。
 
(注5)CMS(コンテンツ・マネジメントシステム) : ウェブページのタイトルや本文、抄録、画像などの部品をデータベースを利用して管理するシステムのこと。画像やリンクを埋め込んだHTMLファイルを一から作るのに比べ、コンテンツの制作や修正、管理に関する手間を大幅に減らすことが可能となる。


2 クロス分析(概要)

(1)   モデルの活用状況に応じた分析
    「モデルを活用している」と回答した地方公共団体では、取組状況について「既に十分取り組んでいる」又は「まだ不十分で、今後更に進める予定」という回答が98.5%、「活用していないが内容は知っている」と回答した地方公共団体では81.6%となっており、モデルの存在により取組が進展していることがわかる。
    図表11 モデルの活用状況に応じたアクセシビリティへの取組状況。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。
(2)   地方公共団体の規模に応じた分析
  1)   ウェブアクセシビリティの認知度
      全体では9割を超える地方公共団体が認識(都道府県は全て)しているものの、人口5千人未満の地方公共団体では16.8%の地方公共団体が「まったく知らない」と回答している。
    図表12 人口規模に応じたウェブアクセシビリティという言葉の認知度。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。
  2)   アクセシビリティ向上のための取組
      全体では6割強の地方公共団体で「既に十分取り組んでいる」又は「まだ不十分で、今後更に進める予定」と回答しているものの、人口5千人未満の地方公共団体では、25.4%の地方公共団体が「取り組んでおらず、今後も取組予定なし」と回答している。
    図表13 人口規模に応じたアクセシビリティへの取組状況。さらに詳しい説明はここをクリックしてください。




参考

みんなの公共サイト運用モデルについて

1  経緯
  総務省では、高齢者や障害者を含む誰もが公共分野のホームページやウェブシステムを利用することができるよう、平成1611月から平成1711月まで「公共分野におけるアクセシビリティの確保に関する研究会」を開催。平成1712月、ウェブアクセシビリティ維持・向上のための運用モデルである「みんなの公共サイト運用モデル」を策定し、普及促進に努めている。


2  概要
  ウェブアクセシビリティの維持・向上に必要と考えられる取組を、PDCAサイクルとして整理するとともに、取組の実践のための各種の手順書やワークシート類を策定したもの。

「みんなの公共サイト運用モデル」の全体像(PDCAサイクル)