韓国の盧武鉉大統領が金正日総書記との南北首脳会談のため二日、北朝鮮入りした。平壌では金総書記が出迎え、両首脳が初めて握手を交わした。
南北首脳会談は二〇〇〇年六月に当時の金大中大統領と金総書記との間で行われて以来、七年ぶり二回目になる。盧大統領は韓国の元首として初めて、歩いて南北を隔てる軍事境界線を越えた。
金総書記の出迎えは当初予定になかったが、平壌中心部にある四・二五文化会館前の広場で盧大統領を待ち受け、到着した大統領を歓迎した。総書記は金大中氏の訪朝時にも突然平壌国際空港に迎えに出て二人が抱き合う映像は世界を驚かせた。今回も直々の出迎えで存在感を示し、一部ささやかれていた健康不安説も打ち消した形だ。
盧大統領は二日午後、北朝鮮ナンバー2の金永南最高人民会議常任委員長と会談、金総書記との首脳会談は三日に予定されている。訪問は四日までの計画だ。
大統領は、平壌到着時の声明で「南と北が力を合わせ、この地に平和と新しい歴史を定着させていかなければならない」と述べた。大統領は朝鮮半島の平和定着を最優先課題と位置付けており、南北の経済協力の拡大や、朝鮮戦争休戦協定に代わる平和体制を構築したい考えといわれる。首脳会談の定例化にも意欲を示しているという。成果を期待したい。
韓国では十二月に大統領選が行われる。盧大統領としては今回の訪朝の成果をアピールし、与党陣営を有利に導く狙いもあるのだろう。
しかし、北朝鮮は一筋縄ではいかない。盧大統領は北朝鮮への経済協力などに力点を置く「包容政策」をとってきたが、昨年十月に北朝鮮が核実験を行い、融和路線は内外から批判を浴びた。
北京で行われている北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議では寧辺の三核施設の無能力化や核計画申告の年内実施で暫定合意した。だが、他の核施設の無能力化など先行きは不透明なままだ。
北朝鮮には協調を進めることで韓国と日米など他の関係国との間に亀裂を誘い、自国の利を図る狙いもあろう。北朝鮮を動かすには関係国の結束が欠かせない。盧大統領自身、出発直前の談話で北朝鮮問題は「南北の合意だけで解決できる事柄ではない」と述べている。関係国との連携を重視し、包容政策を突出させるべきではない。
韓国は事前に日本人拉致問題を首脳会談で取り上げる方針を日本側に伝えている。大統領は、総書記に解決を強く迫ってもらいたい。
阪急百貨店と阪神百貨店が経営統合し、持ち株会社「エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリング」が発足した。
会社の名称は、両百貨店の頭文字のH二つにOを組み合わせ、地球環境に不可欠な水(H2O)のように地域になくてはならない存在になる、との理念を表したという。売上高は計約五千億円で業界七位だが、百貨店競争が激化する大阪・梅田では圧倒的な存在感を持つことになろう。
百貨店業界は人口減による市場縮小や、大型ショッピングセンターを展開するスーパーに押され、売上高が二〇〇六年まで十年連続で減少するなど、厳しい環境下にある。
このため、統合による規模拡大で生き残りを目指す動きが広がっており、〇三年には西武百貨店と再建中だったそごうが統合し、今年九月には大丸と松坂屋が統合してJ・フロントリテイリングが誕生した。来年四月には三越と伊勢丹の統合が決まっており、売上高一兆円規模の百貨店グループの再編が進んでいる。
H2Oリテイリングは、一五年三月期の連結売上高目標を七千億―八千億円、連結営業利益目標を四百億円とする、と発表した。経営効率化を進め、営業利益率を5%台に乗せることで厳しい競争に生き残る構えだ。
両百貨店の老舗ブランドを維持しながら、統合の相乗効果をいかに出すかが課題といえよう。今後のグループ運営について、新経営陣は「阪急百貨店はファッション性の高い専門的な百貨店に、阪神百貨店はより幅広い客層に対応する親しみやすい店に」としている。関西経済圏の地盤沈下が指摘される中、活力を生み出すけん引力になれるかどうか。消費者に夢を与える知恵が求められる。
(2007年10月3日掲載)