兵庫県立尼崎病院(尼崎市東大物町一)で二〇〇三年十月、女性薬剤師が必要量の十倍にあたる濃度の強心剤「ジゴシン」を誤って処方し、服用した生後五カ月の男児が死亡した医療事故で、尼崎東署は三日までに、事故を未然に防ぐ注意義務を怠ったなどとして、業務上過失致死の疑いで、この薬剤師(37)と調剤を監査した別の女性薬剤師(55)を立件する方針を決めた。同日午後にも書類送検する。
調べでは、二人は〇三年十月五日、先天性の心疾患で入院していた男児が退院する際、一万倍に薄めた薬剤を処方すべきところ、薬剤の瓶を取り違え、千倍に薄めたものを誤って処方。確認作業でもミスに気づかず、九日後、男児を急性薬物中毒で死亡させた疑い。
同病院ではこれ以前にも調剤ミスがあり、識別しやすいよう瓶のふたの色を変えるなどしていた。同署はこうした措置にもかかわらずミスを起こしていたことを重視、立件に踏み切った。
同病院によると、男児は心臓から血液を送り出す動脈に障害があり、〇三年八月に手術を受けた。術後の経過は良好だったが、誤った濃度の強心剤を服用後、発熱や嘔吐(おうと)の症状が現れ、緊急入院。十月十四日、心室細動で亡くなった。
事故をめぐっては、男児の遺族が〇四年六月、神戸簡裁に損害賠償を求め調停を申し立て、過失を認めた県がその後、遺族側に賠償金三千八百万円を支払っている。