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2007年10月4日

◎法人税減税 都会と地方の格差是正こそ

 政府税調が法人税減税の必要性について検討を始めた。諸外国に比べて日本の法人税率 は高く、企業を活性化するためには減税が必要だという声に異論はないが、大企業が史上最高の利益を上げているなかで、減税を支持する声が多数派になっていくとは思えない。

 今、真剣に考えてほしいのは、これまで私たちが繰り返し主張してきたように、全国一 律の減税ではなく、過疎地に「軽減課税」を導入して税率を下げ、都会から地方への企業移転を促すことだ。それが地方経済を活性化させる最も確実な方法だと思うのである。

 都会と地方の格差は、公共事業の大盤振る舞いや、ばらまき型の政策では決して解消し ない。弱った体にカンフル剤を打つような、その場しのぎの発想でお茶を濁すのではなく、体質の強化につながる骨太の政策が必要である。地方にヒト、モノ、カネを呼び込むために、税の仕組みを根本から変えてもらいたい。

 北陸三県の景気動向を示す九月の「北陸短観」を見ると、全産業の業況判断は三期連続 で悪化しており、企業経営者の心理が徐々に冷え込んできているのが分かる。原油や原材料高が進む一方で、コスト高を値上げに転嫁できていないのだろう。全国ベースの景気動向を探る「日銀短観」を見ても、大企業が好調を維持している半面、中小企業の景況感の悪化が目立っている。

 大企業と中小企業の業績の差は、都市と地方経済の体力差でもある。広がる一方の地域 間格差を食い止めるには、もはや税制を変えるしかないのではないか。参院で与野党の議席が逆転するなかで、法人税減税が実現する可能性は低いと言わざるを得ないが、発想を転換し、法人税減税を地域間格差解消の「切り札」と位置づけ、軽減課税を導入してはどうだろう。

 企業や人は、いやでも税の低い地域に集まってくる。海外に工場を移転するより、過疎 地に工場を立地させた方がソロバンに合うような仕組みができないだろうか。過疎地の税を、地域の実情に合った低さに抑えられたら、さまざまなアイデアが生まれ、地方は息を吹き返すだろう。地方が本当にほしいのは、自分たちの力で輝くチャンスである。

◎輪島の「午後市」 復興の意欲を示す型破り

 輪島市の朝市が開かれる本町・朝市通りで六、七日、夕方まで露店が延長営業する「午 後市」が試行されることは、能登半島地震で客足が戻っていない中、活気を呼び寄せる一つのステップになろう。朝市はこれまで、その名の通り、ほとんど午前中で閉店しており、今回の延長営業は、長年の商慣習の「型」を破る発想だが、地域ブランドとして知られる朝市の「舞台」を活用した、復興の意欲を示す誘客策として期待したい。

 午後市は、北陸三県を含めた日帰りの地元客のニーズに応えるとともに、午後に能登空 港から首都圏に向かう人にとっても、新鮮な食材がその日のうちに賞味できるという点で魅力が増すのではないか。参加する露店の数は、朝市ほど多くないようだが、午後市を定着させる中で徐々に増やしていきたい。

 能登半島地震で県内各地の観光地の入り込み客は伸び悩み、中でも輪島の朝市は、県が 八月末にまとめた今年一月から七月までの入り込み状況によると、前年同期比で33・7%も少なかった。地元消費も落ち込む中、朝市に軒先を貸す商店街の各店も苦戦を強いられている。

 午後市は、こうした状況を打開するため、本町商店街振興組合が企画し、朝市組合も協 力して実施される。通常、昼ごろで終わる露店を午後六時ごろまで延長して、新鮮な魚や野菜を並べるという。これまで、午後から朝市通りを訪れた観光客から「なぜ、市をやっていないのか」との質問が寄せられることも、しばしばあったことから、観光客の要望を反映した今回の企画となった。

 同商店街は、先に岐阜県郡上市から国重要無形民俗文化財「郡上おどり」の踊り手を招 いて能登復興イベントを開いているが、今回も、朝市の時間帯では見られない各種出店やイベントなども開催される。

 今後は、朝市のように連日とまでいかなくとも、不定期の単発開催ではなく、月に数回 程度、週末などに定期開催しなければ「午後市」として広く定着することにはならないだろう。

 「朝市ブランド」を生かしながら、知恵を出し合い、新しい趣向も取り入れて、朝市と は一味違った、通りの魅力を発信してほしい。


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