1巡目で5球団が競合した仙台育英の快速右腕・佐藤由は校内で抽選の行方を見つめた。
5球団が順にくじを引き始めると、お茶を一口飲んでから深呼吸。ヤクルト・古田監督が右こぶしをかかげて当たりをアピールしても、笑みはなかった。しかし「やっとプロの世界に入れるという実感がわいた」と入団に前向きな意思を示し、甲子園で155キロを計測した直球について「日本最速、世界最速を目指したい。目標は楽天の田中さん」と抱負を述べた。
思わず涙を浮かべたのは、家族への思いを問われたとき。「兄の影響で無理やり始めた野球が、今では自分の大切な宝物になった。ここまでこれたのは、両親の支えがあったから。家族孝行できるよう、精いっぱいプレーしたい」と話した。
◇退団前に大仕事
退団を前に、古田監督が佐藤由との交渉権を引き当てる大仕事をやってのけた。抽選前、楽天の島田社長と握手。昨年の田中ら2年連続でくじを当てている強運の持ち主から「運をもらう」ため、手を差し出した。
くじを引いたのが5球団の一番最初。「『当たり』は絶対残ってるわけだから」と、箱の中をのぞき込み、最も目立った右から4番目を引いたら、本当に大当たり。
「開けた時は信じられなかった。心拍数がえらい上がりました」。昨年、西武と争った増渕に続き、2年連続で「当たり」を引く運の強さに、笑顔が絶えなかった。