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がん治療:歯科医が参加 口腔ケアで合併症予防--静岡がんセンター

 静岡県立静岡がんセンター(同県長泉町)が、歯科医が参加したがん治療に取り組み、効果を上げている。抗がん剤投与による免疫低下が引き起こす口内炎などの悪化を、歯石除去などの口腔(こうくう)ケアで防止。合併症の割合を低く抑えることに成功しており、専門家も注目している。【山田毅】

 抗がん剤や放射線治療は口内の粘膜を傷つけたり免疫力を低下させるため、口内炎や感染症を起こす患者が多い。悪化すると肺炎などを併発し、がん治療にも影響する。

 このため、センターは02年の設立当初から治療チームに歯科医が参加。手術前に口内に1億~100億あるといわれる細菌数を減らすようにしている。センターで02年9月~03年12月に耳やのどなどの手術前に口腔ケアをした患者56人のうち、16%が合併症を発症。口腔ケアをしていない関東のがん専門病院のデータ(98年4月~02年2月、患者35人)と比べ、割合が約4分の1にとどまった。

 センターの太田洋二郎歯科口腔外科部長(45)は「がん治療では腫瘍(しゅよう)の治療を最優先し、口腔ケアまで手が回らないケースが多い」と、歯科医を参加させた理由を説明。このほか、がん治療で歯茎から出血しやすくなることから、低刺激の歯磨き粉や歯茎に触れずに奥まで届く歯ブラシなどの専用セットをサンスター(本社・大阪府高槻市)と共同開発したり、地域の歯科医42人と連携して退院後も投薬などを続ける患者について情報交換などをしている。

 ◇モデルケースに--国立がんセンター(東京都中央区)の垣添忠生名誉総長の話

 人手不足もあり、口腔ケアは一部の専門病院を除くと十分実施されていない。歯科医が参加した医療チームは全国でも珍しく、地域の歯科医との連携はモデルケースになるだろう。(え・香取泰行)

毎日新聞 2007年10月3日 東京朝刊

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