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2007年10月3日

 送られてくる映像を見て、失礼ながら下手な演出がハナについた。平壌での二度目の南北首脳会談のことである

任期が残り少ない韓国大統領の「卒業旅行」に似た北朝鮮入りである。車を止め、わざわざ軍事境界線を歩いて越えた。対する北の首領は、ソウル訪問を約束しながら、命を狙われることを恐れてか出無精を貫いている。いつ姿を現すかは謎だ、とマスコミは騒いだが、到着早々に出迎えるのが礼儀というものである

落ち目の南の大統領と北の独裁者との顔合わせに、国際世論は冷ややかである。だから、徒歩での越境や突然の出迎えという小細工が生まれたのだろうが、どれほど内外の目を集めることができたか

「二度目の見直し、三度目の正直」という。半島に平和と繁栄が訪れるためには、まだ時間が必要なことを教えてくれるような演出である

過日、列車乗り換えで降りた大阪・鶴橋の街で、北朝鮮の水害に支援を訴える募金活動に出くわした。しばらく見ていたが、足を止めずに去る市民の姿が目立った。善意を寄せても、飢える人々にきちんと届く保証はないことを、多くの人は知っているからだろう。


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