本日の読売など夕刊各紙には、沖縄戦で「集団自決を日本軍が命令した」などの記述が、文科省の検定意見で修正された高校日本史教科書検定をめぐり、渡海文部科学相が教科書会社から訂正申請が出された場合、「真摯に対応したい」と述べたと報じています。また、検定意見を出した教科用図書検定調査審議会に再度諮ることを検討する考えも示したとありました。
安倍前首相という「防波堤」を失った今、こういう圧力に屈した無原則な動きが、これから幾度となく繰り返されるのかな、という感想を抱きました。別に教科書検定に限らず、外交交渉でも何でもそうです。振り子が左に振れきった感のある自民党では現在、保守系議員の発言権は非常に弱く、正体不明の「民意」にひたすら怯えて恭順の意を示そうと努めています。こうした流れに抗することはなかなかできそうもありません。
では私自身はどう思うかというと、昨年10月5日の衆院予算委員会で安倍前首相が述べていたように、「歴史的な認識については、本来、政治家は検挙であるべきなのは当然のことだ」という立場です。私は、この政治家に歴史認識を決めてもらおう、判断してもらおうなんて考えて一票を投じていませんし、そのときどきの政治の動きで勝手に歴史問題を決着されてたまるかと思っています。
そして政府が安易な対応をとった場合、諸外国のメディアに日本政府は事実を曲げた検定意見をつけていた、と報じられ、さらに日本の国際イメージは悪くなり、いかに弁明しても政府が認めたじゃないかと言われそうです。河野談話のパターンですね。この問題で検定見直し決議案を参院に提出することにした民主党にも、少しは日本全体のことを考えてもらいたいと思います。政府を揺さぶることができれば何でもいいというやり方ばかりはでなく…。
まあ、そんなこんなで、今日のところは、この問題をめぐっていろいろな議員がどんな発言をしているのかを時系列に沿って紹介しようと思いつきました。町村官房長官は、初代文部科学相だけあってなかなか骨のあることも言っていますが、結局、流されるのでしょうね。何だか意味不明のとにかく言うとおりにするのが一番、という感じの発言もありました。以下は、各担当記者の取材メモを集めたものです。人それぞれのタイプや見方が表れていますから、どうぞ参考にしてください。
・10月1日午前、町村官房長官記者会見
記者 沖縄の集団自決をめぐる教科書記述の関係で沖縄で11万人を集めた県民大会が開かれたが、これについての政府の対応は
町村氏 教科書をどうするかという話はいま文科省で検討していると思います。基本的な考え方は私が先般申し上げたとおりでございます。
・同日午後、町村官房長官記者会見
記者 沖縄の集団自決に関して、民主党が教科書記載の改訂を求める参院決議案を提出する方向で調整しているが、こうした動きに対して長官の受け止めは
町村氏 いろんな政治的な思惑からそういうことをなさろうということなんだと思います。先般も申し上げたとおり、沖縄のみなさんの気持ち、そして軍の果たした役割というものは私なりに理解しているつもりでありますし、大変な被害を受けられた多くの方々がいらっしゃるということについても私は深い理解をしているつもりであります。
私が生まれて初めて沖縄に参りましたのは、昭和39年、大学2年生のときだったと思います。当時はまだ占領下ですから、私はパスポートをもらって行きました。パスポートをもらって、一番最初に行った先が沖縄でありました。そして、まだまだ、まさに米軍が今よりもっと大きな存在でありましたし、日本への復帰というものがはるか彼方というような状態でありました。そこで今でも覚えておりますが、大田中将の最後の台詞というものを、みなさん有名だからいまさらだと思いますが、こういう思いで「後世ご高配あらんことを」と大田中将が心底からそういうことを言われた沖縄への気持ちというものは我々ちゃんと受け止めなければならないと思います。
そういう思いがありながらもなおかつ、教科書の中身というものがそのときどきの政治的な思惑によって動かされることがあって本当にいいんだろうか。我々自民党の立場からすると、マルクス・レーニン主義によって、あるいはマルクス・レーニン主義者を自ら認めているような教科書の執筆者によって書かれたものが率直に言って不満に思ったことはずいぶんあります。しかし、それでも自由民主党としては、これは教科書検定という制度の中で認められたものだから、ということでそれ以上のことはいいませんでした。それが、やはり政治と教科書というもの、政治と行政というものに対する、それは1つの節度だと私は思ったからこそ、自民党はそれ以上のことはいいませんでした。
仮に民主党の政権になって、あるいは共産党の政権になって、その時々の政権の思いで教科書の中身がどんどん変わって本当にいいんだろうか。あるいはもっと極端なことをいえば、参院はこういう決議をしました、衆院は別の決議をしました。どういうことになりますか。そういう形でその時々の政治の思惑によって教科書の内容が揺れ動くということは決していいことだと私は思わないのであります。
ただ、そうした沖縄のみなさん方の気持ちを何らかの方法で受け止めて、訂正できるものかどうかですね。修正できるものかどうか。それは関係者の工夫と努力と知恵というものがありうるのかもしらん。その辺は全体として今、文部科学大臣に改めてしっかりとまず、担当の省庁として責任をもって、しっかり検討しなさいということを渡海大臣には指示をしたところでございます。まだ彼らからちゃんとしたというか、きちんとした回答が戻っておりませんから、お答えを待ちたいと思います。
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記者 集団自決の教科書検定の意見抗議で、11万人の県民が集会に参加した。総理はどのように受け止めているか
福田氏 そうねえ、ずいぶんたくさん集まったねえ。そういう沖縄県民の気持ちは、私も分かりますよ。ええ。それでどうするかということについては、それは検定制度があるので、そのことについては、まずは文部省の方でどうするかということだと思います。私の方から言う立場にはない。
記者 具体的に文科省には指示をしたか
福田氏 私からはしてません。官房長官がしてるかはどうかは知りませんけど。
・10月2日午前、岸田沖縄北方担当相記者会見
記者 教科書検定問題で昨日、官房長官と文科相が記述修正について柔軟対応の発言があった。県民大会で求めた検定意見の撤回は否定的だが、教科書会社が訂正申請を出すならば、対応すると。動きが急だが、この件での大臣の見解を。また内閣府として、どんな対応を考えているか
岸田氏 指摘のあった動きについては、教科書の検定制度そのものは文科相の所管なので、所管でない私が具体的なことについてふれることは控えなければ行けないと思っているが、いずれにしても今回の教科書の検定の問題、沖縄でも本土復帰後、最大の県民大会が開催されるなど、この問題について、先の沖縄戦において、多くの貴い命が失われた、そして多くの方々が大変悲惨な苦しい思いをされた。この歴史に対する深い思いの表れだということで、重く受け止めている。
そして、この沖縄担当相として、関係者のこうした思いはしっかりと丁寧に聞かせていただき、受け止めなければいけないという風に思っているし、文科相をはじめ関係大臣に対しては、是非地元のみなさまの声については誠実に丁寧に対応してもらいたいとお願いしているところだ。直接文科相にもそういうことをお願いした。そうした思い、そしてこうした姿勢で是非これからも地元のこういった声には、誠意をもって対応させていただきたいと思っている
記者 沖縄の声に答えるかたちで文科相が方針を示したわけだが、評価するか
岸田氏 具体的な中身については触れることは控えるが、文科相が誠実にこうした声に対して対応しようと努力されていることは評価できると思おう。
記者 閣議ではこの件で総理から言及はなかったか
岸田氏 直接の言及はなかった
記者 文科相への申し入れはいつか
岸田氏 先週金曜日(28日)の閣議後、文科相に直接話した。
記者 文科相の答は
岸田氏 「是非自分も丁寧に誠意をもって話をきかせてほしいと思う」という答えだったと記憶している
記者 県民集会で11万人という非常に多くの人が集まったが、それを踏まえて改めて申し入れるか
岸田氏 金曜日は大会前だったが、大会後の閣議前後にも文科相には話をしている。
記者 大会後も?
岸田氏 そうだ
記者 深い思いを丁寧にくみ取ってくれという内容か
岸田氏 そうだ。大会前は、まず大会の様子をしっかりみなければならないという話だったが、大会の後も前も、やはり丁寧にしっかりと話を聞かなければならない。その点では同じだ
記者 大会後の閣議は、いつ?
岸田氏 日曜日、30日の臨時閣議後に文科相と話をしたと記憶する
記者 文科相が訂正申請についてふれているが、その決着の仕方について大臣はどのように評価するが
岸田氏 繰り返しになるが、所管でない大臣が具体的な制度、手続きについてふれるのは控えさせてほしい
記者 教科書検定の話はおいておいて、政治家として集団自決への軍関与について岸田大臣自身は、どのような認識をもっているか
岸田氏 事実がどうであったかということについて私も断定的にものを言うことは出来ないとは思うが、先の沖縄戦で大変悲惨な出来事が数多くあった。多くの方々が筆舌尽くしがたい思いをされた。このことは政治家として重く受け止めなければいけないと思うし、私も選挙区が
記者 一般論かもしればいが、結果として政治が教科書の検定に介入するととられかねないが、どういう見解か
岸田氏 教科書検定制度のありよう、中身については、所管にない大臣という立場にあるので、控えさせてほしい
・同日午前、町村官房長官記者会見
記者 文科相が、県が県民大会で求めた修正の撤回について、大臣からの要求は政治的な要求になるので難しいと発言したが、官房長官の見解は
町村氏 文科大臣のお考え通りであります
記者 検定結果について、撤回、修正を求める考えは
町村氏 審議会に対してということですか?ありません。政府から、あるいは大臣の立場から、審議会に対してああせい、こうせいというのはまさに政治介入になりますから、それはいたしません
記者 出版社が修正申請をする前段階として、政府側から情報提供などをする用意はあるか
町村氏 さあ、それはちょっと分からないから文科大臣に聞いてください
記者 この問題について民主党が批判を強めていて、政治争点化する気配があるが、こういう状況についてどう思うか
町村氏 いろいろな思惑があって、いろいろな行動をされることは、それは自由ですけれども、本質的に何が大切なのか、もちろん、沖縄県民の気持ちをしっかりと受け止めることも大事であります。しかし、同時に、全く別の次元ですけれども、教科書の検定、しっかりとした教科書がどうやって作られるのかということについて民主党がどうお考えなのか。そこのところを民主党さんの聞いてみたいような気がしますけれども。
細田氏 公明党の太田昭宏代表は「当時の軍の関与は否定できないではないか。史実を的確かつ客観的に伝えられるように調査研究機関を設けてはどうか。検定制度を維持しつつ、史実というものは調査研究機関で明確にしていくというのは大事ではないか。史実を正確に伝えていかないとならない」と語っていた。
記者 教科書検定の問題については、太田昭宏代表以外から発言はあったのか。細田代理はどう考えているのか
細田氏 私は沖縄担当相もやっているので、どちらかというと個人的には沖縄県民の思いというものは尊重していかないとならないし、かつ沖縄県民が直に経験した人がたくさんいるので、いろんな形で悲劇が繰り返されたわけだから、そのことを率直に認めていくべきであるというのが基本だと思う。それは太田昭宏代表が言ったことと同様の感じだ。
検定問題は、1つは官房長官も少し触れられたが、何でも政治が介入してあらゆる教科書の内容を良いとか悪いとか言ってはならないということで今の検定制度が成り立っていることは事実だから、いわば独立した判断の問題と、今の沖縄県民の思いあるいは史実がどうだったかということがいま大きな開きがあるということに問題の原点があるので、それは太田昭宏代表の言われたことも1つの解決策かなと思う。史実は事実だから、教科書自体をこれを盛り込めといえばこれは国家の介入、政治の介入になるのでそこが一番難しいところだ
記者 官房長官はどういう発言をしたのか
細田氏 あまり細かくは触れなかった。「これは大変重要な問題である。対応しないとならない。この検定問題に政治介入というものは避けないとならないということは基本におきながら対応していくべきだ」と。
記者 1つの解決策ということだが、今後この案で自民党で検討するのか
細田氏 提案があったばかりだから、これは専門の文教関係の人たちも含めて検討するべきだと思う。
記者 太田代表の提案はいまいったことだけか
細田氏 いま言ったことがすべてだ。太田代表は検定制度自体は堅持しつつ何ができるかということをしっかり考えていくべきだといいながら、1つの具体案としては先程言ったような史実についてはその道の専門家を集めて、きちんとした調査をすることが必要ではないかといった。
・同日午後、太田公明党代表、政府与党協議会後のぶらさがり
太田氏 私は3点目に沖縄戦、教科書問題について触れました。私が申しあげたのは、沖縄戦における集団自決ということについて旧日本軍が関与したという事実は否定できるものではない、事実であるということの上にやはり後世に歴史を残すという意味から言っても沖縄の人たちも含めた共同研究ということを例えばやるとかいうような何らかの措置が必要であると。
教科書検定というものに政治が関与しないということはしっかり踏まえながら、政府として沖縄の痛み、沖縄の人たちの心というものをしっかり受け止めて、重きをおいて善処していってもらいたいということを私は申しあげました。これに対して町村官房長官が、「教科書検定について政治が関与しないということをしっかり踏まえなくてはいけないけれども、現在、そうした沖縄の人たちの今、太田さんが言った心や痛みというモノをしっかりとうけとめて、何がどのようにできるかということを文部科学省に考えてもらっている。渡海文部科学大臣がいろいろ検討しているようである。今日報告できるのはそこまでですがという話。
記者 教科書の問題は総理からは話はなかったのか
太田氏 総理からは発言はありませんでした。町村長官やあるいは渡海文科大臣が昨日も発言をしているということもあり、今日は官房長官から今の状況について話しをいただいたということだ。
記者 沖縄の集団自決の教科書問題についての考えは
小沢氏 沖縄戦における集団的な自決、大量の自決、これはもう当然、軍が戦時下でもあるし、戦闘のまさに戦争の最中なので、軍が管理し、指導し、あらゆる戦争の作業を行っていたはずなので、これがまったく関与していないということはあり得ないことだと思っている。もちろん、その戦前の、とくに戦争、戦時下における日本の政治、戦争史は軍人内閣の下に軍人がそれぞれの要職について戦争を指導してきたわけなので、もちろん、そういう全般、大きな意味でも関与というか、指導というか、それは間違いのないことで、あると私は思っている。
ただ、今ちょっと確認しているが、この検定問題については。ボクも不勉強でちょっと、検定というのがどういう仕組みで、どういう権限に基づいて行われ、どういう強制力を持つのか。それを制度的に法的に今、調べようと思っているが、今回のことは検定のアレで意見がついたんでしょ。だから出版社の問題ではないんだよね、本当は。そこはマスメディアもちょっと論調が違うと思う。検定でこういう意見だという意見書がついたんでしょ。次の機会に制度的、法的なことを私もしっかり勉強して話すが、これはその意味においては、政府自体に歴史的な認識、考え方、事実認識。それが集団自決という軍の関与ということを教科書から削除させたということだろうと。結論はそう思う。
記者 決議を出す意義は。
小沢氏 決議は、そういうことも沖縄県民みなさんの思い、それが本当に日本であんなに集まったのは、10万人以上の人が集まった集会は初めてではないか。本当にやっぱり、政府の態度に怒りが爆発したのだろう。簡単に言えば、本当に頭に来たのだと思うが、国民、県民みなさんのそういった心情を無視したやり方、そしてまた、歴史認識の違いということを、現政府の、これを浮き彫りにするためにも、決議というものが有効であるなら、それを視野に入れて、あとは執行部に任せるということになった。
・同日午後、町村官房長官記者会見
記者 きょうの政府与党連絡協議会で、公明党の太田代表が沖縄の集団自決について史実を正確に伝えられるように調査研究機関を作ったらどうかという話をしたが、長官、政府の受け止めは
町村氏 どういう形で作るかというところまでは太田代表は言わなかったと思いますので、私は公明党の中にそういうのをお作りになるのかなという風に聞いていたが、違うのかな?あるいは与党の中でお作りになるのかな。ちょっとそこはよく意味がとれませんでした。いずれにしてもいろんなことをしっかりと勉強することは大切なことだと思います。
記者 長官は昨日、文科相に工夫や知恵があるのか、検討したと指示したとおっしゃったが、この指示は総理の意向を受けて指示したのか、あるいは長官ご自身の考えで指示したのか
町村氏 ま、指示というかな。当然、文部科学大臣の権限に関わる話のことですから、主管大臣としてしっかりやってくださいねと。この問題の基本的な取り組み方。まず、文部科学省でしっかり意見を取りまとめるようにということは申し上げました。具体にどうこう言ってくれということは申し上げておりません。
記者 総理の意向を受けて指示したわけではないのか
町村氏 私の指示です。
・同日夜、福田首相ぶらさがりインタビュー
記者 政府与党連絡会議で、公明党太田代表が、沖縄戦の教科書検定をめぐって、専門家による調査研究機関を設けるべきだという見解を示したが、総理はそういった機関が必要だと考えるか。
福田氏 まあね、そういう事実関係を調査するとかいうようなことはね、必要に応じてやるということはあると思うんです。ただ、検定制度のことですからね、もしこの問題についてどうしたらいいかということであれば、文部省で適切に対応していくということが大事だと思います。
記者 政府として設けることが必要だと言うことか。
福田氏 政府というじゃなくて、太田代表がどういう風な機関をお考えになっているか、ちょっと分かりませんけどね、ええ、政府ということであればね、やはり検定制度があるということですから、まあ、そこで文部大臣が所管していることですから、文部大臣がしっかりと対応するということが必要だと思います。
記者 民主党は、検定意見の撤回を求める国会決議案を提出する方針を決めたが。
福田氏 検定制度を撤回するということですか。そうですね、まあ、今の検定制度は、それが、そういうのが一番いいという考え方に基づいてやっているわけですからね。ですから、今、私どもして検定制度をね、変えるとかいう考えはありません。
記者 教科書改編に至った、検定意見の撤回を求めることについてはどう思うか。
福田氏 これはあの、政治的な立場でね、申し上げるということは関与すべきでないと思っております。
by 暁
沖縄集団自決と教科書検定に関…