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【暮らし】

投資家保護の規定強化 金融商品取引法 30日に全面施行

2007年9月20日

 投資信託や株式など購入した人が損失をこうむる危険性(リスク)がある金融商品の販売について一律にルールを定めた金融商品取引法(金商法)が今月三十日に全面施行される。投資家保護の規定が格段に強化されており、顧客への商品説明は全体的にはこれまでより適正になりそうだ。ただ、不適切な勧誘が一掃される見込みは薄く、消費者側は今後も投資する商品について十分に調べなければならない。 (白井康彦)

 ある地方銀行の支店幹部Aさんは「うちの銀行も金商法への対応でバタバタしている」と話す。いくつかの店舗の行員を集めた集合研修やビデオを使った店内での勉強会など、行員が金商法について勉強する時間が長く、日常業務に支障が出ている。「切り替えなければいけないパンフレットなどの書類も新しいものがまだ届いていません」

 金商法のルールの多くは「販売する側が違反すると行政処分の対象になる」という形だ。金融庁は銀行、保険など各業界への行政処分を次々と実施してきた。Aさんは「行政処分が怖いから、どこの銀行も金商法の対応に神経を使わざるを得ない」と説明する。

 営業現場を様変わりさせる金商法のポイントの一つは「投資するのに適した人に勧誘する」という「適合性の原則」が販売する側にはっきり求められることだ。

 売る側は顧客の知識や経験、財産の状況に加えて「契約をする目的」を尋ねて「顧客カード」のような書類を残さねばならない。顧客が「元本割れの危険がある商品は買いたくない」と言ったら、投資信託の勧誘はできない。

 リスクの説明もこれまで以上に必要になった。現行の金融商品販売法では、販売する側が金融商品のリスクを説明しなければならないことになっており、説明義務を果たさなければ顧客の損害を賠償する責任を負うことがある。同法も改正されて今月末に施行。「取引の仕組みの重要な部分」の説明も必要になり、「顧客に理解できる説明」も求められるようになった。金商法でも同等の説明義務が販売業者に課された。

 金商法で広告規制が強化された影響も大きそうだ。消費者グループ「金融オンブズネット」は毎年、金融商品広告のチェックを行ってきた。いつも問題点として強調してきたのが「セールスポイントは大きな字、リスクなど消費者に購入をためらわせる点は小さな字で表示する広告が目立つ」という点だった。

 今回、金商法の内閣府令により、リスクについての情報の文字の大きさは、同じ広告内の最大の文字と著しく異ならない大きさにしなければならなくなった。新聞や雑誌の広告、パンフレット・ビラ、郵便だけでなく、インターネット広告や電子メールで送信される広告まで対象になる。

 多くの消費者に対して「高い利回りが得られる」とアピールして資金を集める詐欺的な投資商法が近年、盛んになっている。集めた金を何かの事業で運用してその成果を投資家に還元するというふれこみだが、投資商法の業者が経営破たんして投資家が大損害を受ける事例が続いている。

 金商法では、多くの人から集めた資金を運用する仕組みを「集団投資スキーム」とし、投資商法も規制の枠内に入れた。ただ、悪質業者の取り締まりにどれだけ効果があるかは未知数だ。銀行や証券会社などの監督についても、問題のある勧誘すべてをチェックしきれるわけではない。

 金融オンブズネット代表の原早苗さんは「金商法でルールがしっかりしたのだから、消費者は自立した判断がより求められるようになる。望んでもいないのに電話してきたり訪問してきたりして『もうかりますよ』と言う悪質業者の話には絶対に乗らないことが大事」と消費者にアドバイスしている。

 

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