新橋演舞場の10月公演「錦秋演舞場祭り 中村勘三郎奮闘」の夜の部「寝坊な豆腐屋」(鈴木聡作、栗山民也演出)で、勘三郎と森光子が初共演する。
昭和37(1962)年の東京・下町を舞台に、勘三郎が独身の豆腐職人、森が長く姿を消し、突然舞い戻ってきたその母を演じる。
森は先代勘三郎と親しく、当代との共演も待ち望んでいたという。「とても気持ちのいい涙が流れる本で幸せです。けいこ場で拝見していても勘三郎さんの芝居には毎日圧倒されます」
勘三郎は「酒場におかあさんがすっと入ってくるシーンがあるんですが、その時に風が吹いたように感じるんですよ。幾つになったらそういう芝居が出来るようになるのかと思います」。波乃久里子、佐藤B作、米倉斉加年らの共演で、坂東弥十郎、中村扇雀、片岡亀蔵ら歌舞伎俳優も出演する。
昼の部は歌舞伎公演で「俊寛」(勘三郎の俊寛)、「連獅子」(勘三郎の親獅子、勘太郎、七之助の仔獅子)、「人情噺文七元結」(勘三郎の長兵衛、芝翫の角海老女房、扇雀のお兼)が上演される。
映画監督の山田洋次がこの公演の「連獅子」と「文七元結」を撮影し、シネマ歌舞伎として来秋に全国公開する。「文七」では台本に手を加える補綴(ほてつ)を行い、演出にも参加する。「楽しい芝居をより一層楽しくするために僕なりの知恵を注いでみたい」と山田。
勘三郎は「現代日本映画界の最高の巨匠に、今の歌舞伎を撮っていただきたいと思いました。いい台本です。寅さんのような長兵衛になります」と話している。2日から26日まで。【小玉祥子】
毎日新聞 2007年10月1日 東京夕刊