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2007年10月2日(火) 朝刊 1・2・27面
訂正申請で記述復活か/政府側が柔軟姿勢
文科相 きょうにも方針/教科書検定
 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校歴史教科書の検定問題への対応で、渡海紀三朗文部科学相は一日夜、記者団に「検定制度を守りながら、沖縄県民の気持ちに何ができるか、いろいろと考えたい」と述べ、何らかの方針を打ち出すことを明らかにした。関係者によると、渡海文科相は二日にも検討方針案を発表する。与党幹部は「教科書会社の『訂正申請』を認める方法が有力」としており、今後、教科書出版社側の自主的な申請という形を取り、何らかの表現で記述が復活する可能性が出てきた。

 渡海氏は一日午前の臨時閣議前に首相官邸で町村信孝官房長官と会談し、同問題への対応を協議。両氏は「政治的介入があってはいけない」として、政治主導の形を取らない方法で解決するべきだとの認識で一致した。

 町村官房長官は同日午後の記者会見で、「(教科書の記述訂正・修正について)関係者の工夫と知恵があり得るかもしれない」との認識を示す一方、渡海文科相に修正が可能かどうか指示したことを明らかにした。

 出版社側の「訂正申請」の働き掛けに応じれば、「政治介入」の構図とはならず、渡海文科相は「通常の法律のルールでも真摯に対応する。こういう状況の中でそういうものがもし出てきたら、真摯に対応したい」と前向きな姿勢を示した。

 一方で、渡海氏は「私が意見を申し上げて修正するということは選択肢として基本的にない」と述べ、文科相の訂正勧告は「政治介入」に当たるとしてこの手法を取らないとの認識を示した。

 検定意見に基づく記述の訂正申請では、一九八○年度の高校現代社会の教科書検定で、水俣病の原因企業名「チッソ」が削除され、世論の反発などで文部省(当時)が事実上検定意見を撤回。教科書会社各社の訂正申請を承認するという形で、記述が復活したケースがある。

首相「気持ち分かる」

 【東京】福田康夫首相は一日、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定意見の撤回を求める県民大会に十一万人が集まったことに「随分たくさん集まったね。沖縄県民の気持ちは私も分かる」と一定の理解を示した。首相官邸で記者団に語った。

 一方で検定撤回については「検討制度というのがあるから。そのことについては、まずは文部科学省の方でどうするかということだと思う。私の方から言う立場にはない」と述べるにとどめた。

 渡海紀三朗文科相への指示には「私からはしていない。町村信孝官房長官からしてるかどうか知りませんけどね」と述べ、首相自身の指示ではないとの認識を強調した。

     ◇     ◇     ◇     

知事「いい結果期待」/文科相修正発言を評価

 仲井真弘多知事は一日夕、町村信孝官房長官が、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定について、修正を指示し、渡海紀三朗文部科学相も対応を検討する考えを示したことについて、「県民の意向にも耳を傾けてその方向で検討されることであれば、非常にありがたい。いい結果を形で出していただくよう期待する」と評価した。県議会内で記者団の質問に答えた。

 その上で「県議会の一般質問が(四日に)終わったら、なるべく早く上京し、文部科学大臣に県民大会の要求を聞き入れていただきたいとお願いしたい」と述べ、検定意見撤回を早期に要望したい考えを示した。

 また、十一万人が集まった県民大会を受け、政府が対応したことについて「超党派で、あらゆる団体が入った各界各層の広がりではないか。十万人を超える大集会をみたことがない。県民のこのテーマに対する強い思いも加え、国の政策に対する地方の意見に耳を傾けて、という思いが強く一緒になって出た結果」と大会の意義を述べた。

[ことば]

 集団自決の記述削除問題 文部科学省はこれまでの教科書検定では沖縄戦の住民集団自決が日本軍の強制によるものとの記述を認めてきたが、今年3月末公表の高校歴史教科書の検定意見で「沖縄戦の実態について誤解する恐れのある表現」と指摘。教科書会社が記述を削除し、検定に合格した。軍の自決命令の有無をめぐり、当時の軍指揮官らが作家大江健三郎さんらを訴えた名誉棄損訴訟が係争中であることも理由の一つとされた。

県内に期待と慎重姿勢/「撤回まで行動共に」

 県民の強い意志が、政府を揺さぶり始めた。「教科書検定意見撤回を求める県民大会」から週が明けた一日、渡海紀三朗文部科学相が検定について「何ができるか」と、対応の検討を省内に指示した。町村信孝官房長官も「修正」の可能性に言及。政府与党の踏み込んだ発言や、事態打開の模索が続いた。実行委員会の関係者や「集団自決(強制集団死)」の体験者は「壁が少しずつ削られている」と期待を込めつつ、決着の行方を慎重に見守る考えを示した。

 大会実行委員長の仲里利信県議会議長は、「県民の気持ちをくんでもらい、ありがたい。大変な配慮だと思う」と歓迎した。「ただ、今は検討を指示しただけ。ぬか喜びすることなく、どういう結論が出るのか冷静に見守らなければ」と強調した。

 副委員長の玉寄哲永沖子連会長は「国が動揺し始めた」とみる。「要請を受け付けなかった文科省の壁が、県民の声で少しずつ削られている。文科省のシナリオや判断の甘さが、反発を買った」と断じた。

 「こんなに対応が早いのは、県民のエネルギーが政府を突き動かしたからだ」と驚いた様子の仲村守和県教育長。「本当に検定意見が撤回できるまで、関係団体と行動を共にして頑張りたい」と力を込めた。

 渡嘉敷村で起きた「集団自決」の惨劇を大会で証言した吉川嘉勝さん(68)は、「求めたのは、あくまで従来の記述に戻すこと。(玉虫色の)政治決着はあってはいけない」と強調する。「大会をお祭りのように終わらせず、県民みんなで見届ける必要がある」と呼び掛けた。

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