2005.09.08
「プロリーグ設立準備委員会」設立2
■ファンもメディアも支援できるプロリーグ作りを目指して!
「BASKETBALL FOR ALL」
これがJABBA(日本バスケットボール協会)が掲げたプロリーグ化のスローガン。9/6に行われた「プロリーグ設立準備委員会設立についてのメディア・ミーティング」において、はじめてというか、やっというか、ようやく「協会の本気」を見た気がした。プロリーグ設立準備委員会の杉浦良昭委員長(男子強化部長)は会の始めに心の底からこう叫んだ。
「プロリーグを立ち上げる目的は『強い日本を作ること』。オリンピックに行きたい! この1点です。それにはプロ化しかないんです」
このことはこれまでも協会が訴えてきたことだが、こうして「プロリーグ設立準備委員会」が設立されたうえでの発言になると、現実味を帯びてきた気がする。しかし、今回はその熱意こそ感じることができたが、具体的には今年の3月31日に「プロ化実行検討委員会」が会見上で「2007-2008シーズンからプロ化を目指す答申案」を発表した時からたいした進展はなかった。だからこそ、記者発表ではなくメディア・ミーティングだったのかもしれないが。ちなみに、このメディア・ミーティングには新聞・通信社の記者、専門誌の記者、スポーツライターなど約20名が参加。机をロの字に囲み、意見交換しやすいような配置になっていた。
そもそも、JABBAが掲げるプロリーグ化とはどんなものか。
「当協会が推進しているプロリーグ設立活動は、単なるトップリーグの興行化、ビジネス化とは一線を画すものであり、世界と対等に戦い、対等に交流を深める「力」を強化するために、日本におけるすべてのバスケットボール関係者と、スポーツファンの力を結集して行う社会的事業であると考えられています。
FIBAの一員として世界と対等に戦い、世界のバスケットボール界に連なるプロリーグは国内唯一であるべきだと考えます。そして『人・金・物』がそろってこそプロリーグ。「人」とはトップアスリートの選手。「金」とは支援するスポンサー。「物」とは行政との関わり、体育館の確保、地域との融合・活用などです」と杉浦委員長。
JABBAが掲げるプロリーグについての説明があったあと、メディアとの質疑応答(というか議論)が行われた。特にこの中で特に議論となったのは、「プロ化の定義」「リーグの形態」「bjリーグとの関わり」の3点で、その中で確認できたことは以下のことだった。
●プロリーグは2007年10月開幕
●すでにJBLチームとは個別で意見交換をしている
●JBLに所属するチームの他、チームの一般公募を今年10月から行い、来年3月にはチームを内定
●チームが興行権を持つことさえ決まれば、プロリーグの参加形態はどんな形のものでも可能(※)
●プロの定義とは「興行権に責任を持つこと」
●興行権はチームに移管する
この中でひとつ不明瞭なのは、(※)印にもあるリーグの形態だ。11月に一足早く開幕するプロリーグの「bjリーグ」は地域に根付いたリーグを目指しており、この形態はサッカーのJリーグと同じ理念である。しかし、JABBAが目指すプロリーグは、冒頭で杉浦委員長が述べたように「地域との融合」を謳っておきながら、企業スポーツである既存のJBLスーパーリーグが軸としてあるため、リーグ形態がイマイチわからない。
これについての回答は「企業の中の一部署の参加(会社のひとつの事業として)もあれば、福利厚生としてのチーム活動もあるかもしれないし、クラブチーム形式のところもあるかもしれない」という。つまり、プロとしてチームが興行権を持つことさえ決まれば、参加形態はどのような事業体であってもいいというのだ。杉浦委員長は「当面の段階ではいろいろな形のチーム参加があってもいい。しかし、最終的には地域との関わりが密接でありたい」とも付け加えた。
しかし、そんな一貫性のないリーグ形態では、応募する側だって迷うだろうし、第一、「理念や条件がなければ公募をかけられないのではないか」という質問が飛んだ。委員会からは「その件に関してはもっともで、参加条件等は今進めている」という回答。
これらの委員会の甘い回答に食らいつき、辛辣な質問を浴びせたのは“明日の見出し”がほしい新聞・通信社の記者たちだった。「プロの定義が甘い」「これでは記事に見出しがつかない」「もっと具体的なことが決まってなければデスクに報告できない」…などなど。中には「そもそも、JBLの活動じたいがよく分からない」という、勉強不足のまま「プロ化」の見出しにひかれてやって来た新聞記者もいた。
もちろん、私のような専門誌雑の記者やライターたちも、協会の甘さを痛感したのは言うまでもなく、不明点を質問をしたり、意見をぶつけたりした。しかし、急いで答えがほしい新聞記者たちとは違い「プロリーグの行方を見守っていくしかない」という構えた様子が見えた。少なくとも私にはそう見えた。もちろん、早急にプロ化は進めてほしいが、専門誌雑の記者やライターというのは、バスケットボールで食べている人たちであるわけで、バスケットのプロ化については夢を抱いている。プロ化そのものは否定するつもりはなく、むしろ成功してほしいと願っている。
そもそも、参加チームやリーグ形態が決まらないうちに、発表したことがこういう混乱を招いたわけで。それでも、私たち支援者の意見を聞くことが、まず成功の第一歩であると考えて会を開いてくれたその姿勢は素直に受け入れたいと思った。
その一方で、新聞記者たちが欲しがった「見出し」が「ファンが知りたいこと」であり、バスケ界のことを知らないで出席した新聞記者が発した「素朴な疑問や意見」こそが「一般人がバスケ界に求めていること」であることも十分理解できた。バスケを知らない一般の人たちには、「根本的」なことから導いてあげなければならない。それは私たちメディアの仕事でもある。
また、先行してプロリーグを立ち上げた「bjリーグ」について杉浦委員長は「将来的に統合という意味では話し合いのリクエストは来ているが、まだ話し合っていない。独立リーグを作るのは自由だが、世界に出る時は必ずオフィシャル(FIBAの傘下)でなければならない。独立リーグを否定しているわけではない。ともに発展すれば理想」と述べるにとどまった。
プロリーグ設立には、協会だけが動いていては実現しない。何よりプレイヤーの高い意識が必要とされ、メディアやバスケットボールファンの声が必要になる。今回はそのためのメディア・ミーティングだったと受け止めたい。現状では狭い日本に理念の違う2つのプロリーグが設立されるという、対立するような形になっているけれど、この熱が日本のバスケットボール界にとって、いい方向に進んでいくと信じるしかない。協会もプレイヤーもメディアもファンも、今は動くしかないんだ。