October 02, 2007
祝!新国立劇場10周年 記念式典
新国立劇場は、構想から開館まで、長い年月を費やしていて、記念すべき年が、私の人生にとっても記念すべき年だったりして、なんだか、感慨深いものがあった。
オープンの1997年10月は、私が文化庁の在外研修員を終えて帰国した直後。
始めの頃は演出なんてさせてもらえるどころかで、もっぱら昴の演劇学校を手伝っていて、その頃は、本当にじぶんが演劇界に進むのかどうか、まだ決めてはいなかった。
よし、何を置いても、この世界で生きていこう!と決心したのは、2001年の秋。
昴が本格デビューを考えてますということで、2002年春の作品の演出が決まったときだった。
新国立劇場から声がかかったのが、その2001年。
オペラ研修所は春から始まったけれど、バレエ研修所を始めたのが、まさに2001年の秋。
在外研修にいるときから、もちろん、1997年に新国立劇場ができるのは知っていたから、そういうところにかかわって働けるといいなあ、なんて漠然と思っていて、在研の同期生にポロっと言ったら、「そんなの無理に決まってんじゃん」とにべも無く言われたっけ。
ところが、私がこの世界で生きていく、と決めた年に新国立劇場と直接関わりができ、こうして記念式典に呼んでいただいている。
在研から帰国して10年かあ。
と、新国立劇場10周年記念式典にいながら、自分のこの10年を振り返って、感無量。
いろんな方たちが来て、去っていった。
新国立劇場の渡辺浩子元演劇科芸術監督、今オペラ科芸術監督の若杉弘さんが芸大で『ドンジョバンニ』を指揮したときの演出家実相寺昭雄さん、高校演劇の審査員として私を推してくれた田村さん、クラシックスアップデートの和紙の衣裳を作ってくださった関根先生、それから、ママ。大事なママ。
この10年で、私を可愛がって大切にしてくださった人たちを、こんなに多く失ってしまった。
一方、私は、何をやってきただろう。
なさけない。
がんばろう。
そう言って瞳を上げる。
今日は、いい日だ、10月1日2007年。
神様、今日をありがとう。
さて
式典自体が終わり、30分の休憩の後、バレエとオペラのガラコンサートがありました。
その、バレエが始まる寸前、2階席に皇太子殿下と妃殿下がお見えになりました。
雅子さまはとてもお元気そうで、クリーム色のスーツで落ち着いた感じで、姿をお現しになり、私たちは、なんだかとっても嬉しくて、自然と全員起立の上、暖かい歓迎の拍手と多分に励ましの拍手をお送りしたのでした。
バレエの時には牧阿佐美芸術監督がお隣にお座りになり、オペラの時には若杉芸術監督がお隣で、それぞれ作品の解説等をなさったようです。
以前、なんの作品だったか、皇后陛下がお見えだったときは、私はすぐお傍で、これまたなんだかとってもほのぼのしました。
なんで?
なぜなのでしょうねえ。
やっぱり、オーラが違うっていうのでしょうか・・・
私の在英時代は、仕事柄、皇太子殿下や英国王室や貴族の方たちとお目にかかる機会がありましたが、これって、ただ偉い人の傍にいて嬉しいファン的心理なのでしょうか?
ま、それでもいいけど。
さて、作品は、バレエが、ジョージ・バランシン振付のチャイコフスキイのセレナーデ。
いやー、凄い振付って、こういうのを言うんだ〜
プログラムを見ていなかったので、誰の振付だろう、とにかくドエライふりつけだ、さすがのさすがだ、と思ってみていたのです。
先入観なくてみて、これだもん。
恐るべしバランシン。さすがのさすがのさすが。
研修所出身のダンサアたちが、何人も出ていて、この難易度の高い振付についていっていて、私は凄く嬉しかった。
オペラの方は、マイスタージンガーのオーバーチュア(前奏曲)で開けて、芸術参加と領主万歳をほぼ殿下妃殿下に捧げて歌って、それから、海外からメゾ(Elena Zhidkova)とテノール(Alberto Cupido)のソリスト、日本人のメゾ(林美智子)とソプラノ(大村博美)のソリスト、そして研修所出身の若手男女二人ずつ(渡辺敦子・中村恵理・村上公太・町英和)、というとてもよい配分で、名曲を披露してくれた。
ことに、大村の蝶々婦人「ある晴れた日に」はすばらしかった。
例の名曲の直前の台詞から入って、曲に入った最初の音から、ぐわわわわーっっって感動的な何かがあふれ出して、私の目からは涙が幾筋もこぼれてしまった。
私だけの現象かと思ったら、あとでレセプションのとき、しばらくお話した、理事か何かとにかく日本の伝統芸能界でえらく偉い人の奥様で、伝統芸能界と上流社会ではよく知られているらしいかたも、(このかた、おひとりで和服でコーヒーを飲んでらしたので、私はつい話しかけてしまったのだ。知らぬが仏の怖いもの知らず)、で、この方もやっぱり、「なんだか目頭が熱くなりましたね。」と仰っていらした。
もっともっと演出したい。
いい作品を作りたい。
観る人の目頭を熱くしたい。
写真は頭(こうべ)を揚げるエリザベス1世