本当に「強い女性」だ。彼女の闘争心、勝利への執着心は薄れることがないのだろうか。世界柔道で七度目の優勝を飾った谷亮子選手。二〇〇五年末に長男を出産し、母親として初めて臨んだ国際舞台で、再び世界の頂点に立ったのである。
これまでの谷選手の輝かしい戦績は承知している。しかし、失礼ながら今回の優勝は無理だと思っていた。長い休養期間、復帰戦となった四月の全日本選抜体重別選手権決勝での敗戦、三十二歳という年齢。アスリートとしてのピークは過ぎたと思っていた。
シドニー、アテネで金メダルを獲得し、選手として上り詰めた彼女をなおも厳しい戦いの場に駆り立てるのは何なのか。どうやってモチベーションを保っているのか。出産、育児で失った筋力、体力を取り戻すため、どれほど過酷なトレーニングを続けたのか。われわれ一般人には想像すらできない葛藤(かっとう)や、見えない裏の努力を考えると、今回の勝利には本当に頭の下がる思いがした。
日本にはまだまだ少ないママさんアスリート。外国には、男女問わず稼げる方が仕事をすればいいという感覚の国もあり、出産経験のある女性の活躍は珍しくない。今回の谷選手の活躍を機に、日本でも出産後に現役を続けられる環境整備をはじめ、周囲の認識も深まれば、と思う。
北京五輪開幕は来年八月。谷選手には「ママでも金」をぜひ実現してほしい。さらに先の世界選手権で五連覇を飾ったレスリングの吉田沙保里選手、姉妹そろって世界一となった伊調千春、馨選手らからも目が離せない。そして新たな「強い女性」出現にも期待したい。
(整理部・三輪陽子)