4歳以下の乳幼児に多く、全身の血管に炎症が起きる急性疾患「川崎病」の新たな患者数が05、06の両年とも1万人を超えたことが、中村好一自治医科大教授らによる全国調査で分かった。0~4歳の人口10万人当たりの罹患(りかん)率も188・1(06年)に達し、80年代の大流行時に近づいている。【望月麻紀】
◇罹患歴がある場合は成人でも検査継続を
■乳幼児
調査は70年から2年に一度実施されている。今回は、小児科を持つ全国の2183医療施設が対象で70・7%にあたる1543施設が回答した。それによると、新たな患者は05年が1万41人、06年は1万434人に上った。増加傾向は90年代後半から続いているが、過去に1万人を超えたのは82年の1万5519人と86年1万2847人のみ。現在は長期的な流行が続いている。少子化が進行しているため罹患率の上昇が著しく、06年の188・1は、過去最高だった82年の196・1に次ぐ高率。とりわけ男児の罹患率は212と高く、女児の163を大幅に上回った。冠状動脈に瘤(こぶ)ができるなど、後遺症が残るケースは3・8%あったが、死亡は05、06年ともに各1人で、致命率は過去最低の0・01%にとどまった。診断基準が定められ、血液製剤のガンマグロブリン投与や新たな治療法が効果を上げているためという。
川崎病は40年前に新病として正式報告されながら、今なお原因が解明されていない。患者数が増えていることもあり、予防法を確立する上でも解明が急務になっている。
ただ、これまでの調査で▽過去6年間共通して1月に患者が多く、時期的な流行が見られる▽出生時の免疫力が低下する0歳後半の患者が多い--などの傾向が見られ、中村教授は「感染症の関与が考えられる」と指摘している。
■大人も要注意
初期の患者が中年期を迎えていることも、大きな課題になっている。一般に中年期には動脈硬化が始まるためで、専門家の中には「後遺症がなくても、中年期には積極的に検診を受ける必要がある」との指摘もある。
しかし、川崎病の一般的な管理基準では後遺症がない患者の場合、定期的な検査は発症後5年で終える。そのため「川崎病の子供を持つ親の会」は、検査継続の啓発と、検査時に医師に情報を提供するため、急性期の症状を書き残す「川崎病急性期カード」を患者や親に配布している。
親の会は10月12日午後5時半、東京都港区の品川プリンスホテルで、川崎病の長期の予後管理を学ぶ講座「アメリカにおけるフォローアップの現状」を開く。入場無料。講師はロサンゼルス小児病院のマサト・タカハシ医師。米国では予後の管理を「5年」と限っておらず、タカハシ医師に成人した患者の検診状況などを聞く。問い合わせは、浅井満代表電話044・977・8451。
毎日新聞 2007年9月30日 東京朝刊