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教科書検定:集団自決問題 沖縄11万人「撤回を」 県民大会「集団自決は強制」決議

 太平洋戦争末期の沖縄戦で起きた住民の集団自決を巡る文部科学省の教科書検定意見の撤回を求める沖縄県民大会が29日、同県宜野湾市の宜野湾海浜公園であり、約11万人(主催者発表)が参加した。超党派の大会としては、約8万5000人が参加した95年の少女暴行事件に抗議する大会を大幅に上回り、歴史認識を巡る沖縄と政府の対立軸が改めて鮮明になった。大会は旧日本軍の命令、強制、誘導などの表現が削除された教科書検定を批判。検定意見の撤回と集団自決を巡る強制性の記述回復を求める決議を採択した。

 ◇真実を学び、伝えたい

 県議会など22団体でつくる実行委が主催。実行委は10月15、16日にも福田康夫首相や渡海紀三朗文科相に決議を渡す。

 大会の壇上には、仲井真弘多知事と41市町村中、首長36人、議長27人が並び、県選出国会議員らも出席。会場は参加者で埋め尽くされ、同公園周囲にもあふれた。

 実行委員長の仲里利信県議会議長は「(検定意見書をまとめた文科省の)教科用図書検定調査審議会を隠れみのにした文科省の自作自演としか思えない。県民にとって絶対に許すことはできない」とあいさつ。仲井真知事も「日本軍の関与は覆い隠すことのできない事実。検定意見の撤回要求に応じない文科省の態度は極めて遺憾」と文科省を批判した。県市長会長の翁長雄志(おながたけし)那覇市長は「国は県民の平和を希求する思いに対し、正しい過去の歴史認識こそが未来のしるべになることを知るべきだ」と訴えた。

 また、登壇した高校生代表は「うそを真実と言わないでください。私たちは真実を学び、子供たちに伝えたい」と訴えた。

 文科省の教科書検定は3月に発表された。米軍普天間飛行場移設作業への海上自衛隊投入(5月)も相まって、政府の沖縄に対する強硬姿勢に反発が強まり、県議会が2度抗議の意見書を可決、全41市町村議会も意見書を可決した。

 一方、集団自決があった座間味(ざまみ)村で、沖縄戦当時、村助役だった男性(故人)の妹が「兄は軍の玉砕命令が下りたと言っていた」など軍の命令をうかがわせる新たな証言をするなど、生存者の証言も相次いで出てきた。

 反基地をテーマに県民大会を主導してきた革新勢力とは一線を画してきた教育関係団体が大会開催を模索、自民党の支持母体である県遺族連合会も同調し県民大会へとつながった。【三森輝久】

 ◇渡海文科相「受け止める」

 渡海文科相は毎日新聞の取材に「教科書検定は教科用図書検定調査審議会の専門的な調査、審議に基づいている」と説明。その上で「悲惨な戦争の教訓を風化させることなく、継承すべきであるという県民の思いを重く受け止めなければならないと考えている」と大会への理解も示した。

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 ■ことば

 ◇集団自決と教科書検定

 来春から使用される高校日本史の教科書検定で、沖縄戦で起きた集団自決について、従来認めていた日本軍の強制を趣旨とする記述に「沖縄戦の実態について誤解する恐れがある」と検定意見がついた。教科書会社は強制性の記述を削除、修正した。

 この結果「日本軍に集団自決を強制された人もいた」が「集団自決に追い込まれた人々もいた」(清水書院)など記述が変わった。文科省は検定意見について、集団自決を命令したとされる元日本軍少佐が裁判で命令を否定する証言をしていることなどを指摘し「最近の学説には命令を否定する記述もある。片方の通説だけではバランスが取れない」としている。

毎日新聞 2007年9月30日 西部朝刊

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