外務省だけでは解決しない
北朝鮮にパイプ持つジャーナリスト 若宮清さん
三条ライオンズ例会で拉致問題講演
昨年暮れ、拉致議員連盟事務局長である平沢勝栄代議士らと北朝鮮外交筋の北京での接触のパイプ役を果たした日本人ジャーナリスト若宮清さんが、3月17日午後零時半から、新潟県三条市旭町2、ハミングプラザビップ三条で開かれた三条ライオンズクラブの例会で「北朝鮮拉致問題の今後の展望」と題して講演。
なかなか解決の糸口を見出せない拉致問題だが、鍵を握っているのは小泉首相自身であり、金正日総書記とのトップ会談で決めることだとし、今年11月の米国大統領選挙で、民主党のジョン・ケリー候補が勝つと、北朝鮮外交はブッシュ大統領以上に厳しくなるのに、北朝鮮はケリー候補を甘く見ているなどとした。
若宮さんは、同クラブ会員の相場産業(株)社長、相場健史さんと早稲田大学同期で、同じ釜の飯を食った仲。兵庫県淡路島の出身。
コラソン・アキノ元フィリピン大統領の夫、ベニグノ・アキノさん暗殺の目撃証人であり、これまでにも何度か来条、講演している。
今回も、相場さんの紹介で、同クラブのゲストスピーカーとして招かれたもの。
若宮さんは、北朝鮮とのコネクションを持っており、昨年暮れ、北京で、拉致議員連盟事務局長の平沢代議士らと、北朝鮮外交筋との秘密会談を設定。政府との公式協議とは別に、政治家、民間による外交で解決の糸口を見出そうと努力した。しかし、日本政府は、外交一元化の方針で、その後、活動を封じられているし、外務省主導の拉致問題解決の道はなかなか見えてこない。そうした舞台裏の話を含めて、50分ほどにわたって講演した。
若宮さんの講演要旨は次の通り。
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実際に北京で会談して感じたことをお話ししたい。北朝鮮は、常識や思いやりで対処してはいけない。国家が正々堂々とニセ札を作り、麻薬を作る。核兵器で堂々と商売する国。なぜクーデターが起こらないか。北朝鮮の国民は何もわかっていない。クーデターの概念がない。政権を奪い取って、この国をよくしようとか、統治する発想がない。
すべてが西側では考えられないことばかり。外から情報が入ってこない。洗脳教育されている。100万トンの米が、北朝鮮にいっても、人口2200万人のうち、エリートと言われる200万人くらいに50万トンいき、残りが2000万人のところにいく。餓死者が出てもかまわない国。
平沢先生らと北朝鮮側とで、北京で会談したが、平沢先生が、「日本から人をかっぱらったのだから現状復帰すべきだ」と言うと、北朝鮮側は「日本が戦争で800万人も連行しておきながら、20人くらいとどっちが」という話になる。800万人が正しいかどうかというような話では、話が進まない。「裃を脱いで好きなことを言い合う」ということで、「家族がピョンヤンまで迎えに来なければだめだ」ということになった。仮説の話の中で、国会議員、家族、マスコミを連れて、迎えに来るという話もあった。蓮池薫さんなど拉致家族も一度は行ってもいいというところまでいったが、外交一元化で、行かないことになった。
北朝鮮は、8人プラス1人を本当に返す気持ちがある。8人プラス1人がいるために、ややこしくなっている。この問題を解決しないと、日朝国交回復が進まない。国交回復したら、見返りとして、相当の経済援助を見ている。
対日政策を決めているのは20人くらい。中身はわからないが、こういうことなら合意しようと外務省に働き掛けている。
11月の米国大統領選挙で、民主党のジョン・ケリー候補が勝つか、ブッシュ大統領が再選されるかで、政治も経済も大きく変わる。
米国のリーダーは、知識だけでなく、地域のボランティアなどをしなければならない。
ケリー候補は反戦運動をしている。ケリー候補は僕の演説を聞いている。ベニグノ・アキノの追悼会で。当時、マサチューセッツ州の副知事だった。反独裁、反戦だが、予備選で、オハイオ州で勝ったとき、在郷軍人会が、ケリー候補を推した。日本は、昭和20年で戦争は終わったが、米国はベトナム戦争など、いままで戦争が続いているので、在郷軍人会の影響力は強い。在郷軍人会は保守だが、ケリー候補が戦地で、銃を取って戦い、仲間の兵士を救ったなどで、ケリー候補を支持している。
ブッシュ大統領は、キリスト教原理主義者だが、キリスト教原理主義は、処女で結婚しなければならないというほど。ブッシュ大統領は、ローラ夫人と結婚するまで、酒を飲むと女性にだらしなかった。ローラ夫人がブッシュ大統領を変えた。ブッシュ大統領は指導力がない。
大統領選挙は、拉致問題にも関係してくる。ケリー候補は、6カ国協議で、指導力のない、局長クラス6人が集まってもだめと批判、大統領になったら米朝協議をやると言っている。ケリー候補が大統領として北朝鮮に乗り込んで行ったら、北朝鮮が完全に裸になれば金正日体制を保障するが、嘘を言ったら許さないだろう。北朝鮮は、ブッシュ大統領より、ケリー候補の方がやりやすいと甘くみている。
小泉首相はブッシュ大統領べったりだが、ケリー候補が勝ったら、日米安全保障、経済にも影響が出てくる。
小泉首相が、もう一度、北朝鮮に乗り込んで、経済協力、人道支援とのバーターでやらなければ北朝鮮は返さない。藪中三十二アジア大洋州局長は、「マンギョンボン号で経済封鎖したのはタイミングが悪かった」と言っている。しかし、外交一元化で、外務省主導でやるので、国会議員が交渉をするのはまかりならんと言う。
まず、5人の家族をハッピーな状態に戻してやりたい。8人プラス1人を取り返さなければならない。5人は、まだ、北朝鮮で過ごした24年間のことをほとんど話していない。独裁政権だからだ。一般庶民が拉致されているのに、政府も、メディアも、なんでそんなことを許しておくのだ。日本のアイデンティティーが疑われると国民が怒っている。
金のためなら、核兵器のパーツも売る国。知識と情報と謀略がなければ日本の国を守れない。北朝鮮側は麻薬を売ったりしている者が外交をしているのだから、東大受験で勉強してきたインテリ、偏差値だけでは、拉致問題を解決する力を持っていない。
下からの積み上げでなく、小泉首相が直接やるべきだ。北朝鮮は日本との国交回復、内情は経済援助がほしいのだ。金正日総書記も、このままでは立ち行かなくなることを知っているし、経済特区を作ろうとしている。
世論も、家族会議も、原則論でやっているが、今のままでは平行線で動かない。3月20日の日朝協議、6月の6カ国協議でもなく、小泉首相が、政府専用機で飛び込んで行き、トップ会談で決めて、後は事務レベルで決めて迎えに行く。幸い日本政府は、拉致問題が解決しなければ経済援助は行わないとしている。
(社主)
