医師・看護師不足による医療継続の困難や医療機関の廃止・縮小などが社会・政治問題化する中、「病院医療が危ない! 都市部に求められる地域医療を考えるシンポジウム」が9月29日、東京都新宿区の新宿・紀伊國屋ホールで開かれた。現役医師や医療関係者ら約400人が参加し、医師不足等の原因となっている医療費抑制政策の転換、医師・看護師・病院医療の充実を図る世論を喚起していくことを確認した。
医療をめぐっては昨年から今年に掛けて、救急体制の未整備等により奈良県で妊婦の死亡や胎児の流産といった事故が相次ぐなど「安心して地域で出産できない、子どもを育てられない、患者になれない」といった深刻な事態が広がっている。こうした医療崩壊≠ヘ、地方だけではなく東京・埼玉・千葉・神奈川など首都圏でも進んでいるとして、都市部の医療機関の実態を通じ事態の打開を図るため、鈴木厚氏(川崎市立井田病院地域医療部長)・本田宏氏(済生会栗橋病院副院長)・安藤高朗氏(医療法人社団永生会理事長)らが呼び掛け人となってシンポジウムを企画した。 安藤氏は、東京都の病院の61%が赤字で(2006年度)、前年度の47%より増加していることを挙げ「都市部の病院で医療崩壊が進んでいる」と指摘。鈴木氏は、OECD(経済協力開発機構)平均の3分の2といわれる医師数の絶対的不足と医療費抑制策の結果、G7(先進7カ国)で最低となった医療費を示し「医療は生命と健康を守る安全保障で、経済と連動して論じてはいけない」と国の姿勢を批判した。
また、医療法人千葉県勤労者医療協会の石川広己氏は「現在の日本医療を考える上で、勤務医・看護師の絶対的不足を認識する必要がある。根本的な問題として低医療費政策の転換が必要で、結局は医療・介護を政治がどのように考えていくかが問題」と提起。東京医科大病理診断部講師の泉美貴氏は、女性医師の高い離職率の問題に触れ「医師の絶対数を増やすとともに、女性医師が働き続けられる環境づくりが欠かせない」と強調した。
会場との質疑では、勤務医の撤退≠ノ伴う医療継続の困難や医療機関の廃止・縮小問題や救急医療体制の在り方について論議。救急医療の崩壊などは医師不足が主因で、東北大学の日野秀逸教授が「医療現場から多様な問題の実態を伝え、国民的な大きな声として発信していくことが本当の意味での医療改革になる」とまとめた。
この後、「9・29 わたしたちのアピール」を採択。医師を増やす方向に転換し、医師数をOECD平均水準に早く近づける▽勤務医が働き続けられるように「まともな労働時間」を保障する診療報酬を引き上げる−ことなどを求め、「安全・安心の医療のために医師を増やし、医療費抑制政策より公的医療費を増やす政策に転換させること」で一致した。
更新:2007/10/01 キャリアブレイン
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