学歴を得るために消極的に大学に入学し、進級・卒業するためにまじめにキャンパスライフを過ごし、就職活動は安定志向−。社団法人「日本私立大学連盟」がまとめた学生生活実態調査で、こんな傾向が強まっていることが分かった。希望すれば誰でも入れる「大学全入時代」を象徴しているようだ。
調査は4年に1度、調査票記入方式で実施。今回は昨年9〜10月、加盟する122私大の学生6639人が回答した結果をまとめた。回答率は68・0%。
大学進学の目的では「大卒の学歴が必要」が50・2%でトップ。「家族、先生の勧めや友人も進学するから」(26・2%)とともに4・6ポイント増加し、主体性に欠ける傾向が強まった。その半面、「自分のしたいことを探す」(35・7%)は5・7ポイント減。「自由、青春を楽しみたい」が4・2ポイント、「より深く学んだり研究したい」は1・2ポイント減らした。
大学生活で大切なことについては「進級・卒業」(21・0%)が12・5ポイントの大幅な伸びを示した。「講義・ゼミなどの出席」(21・9%)や「良い就職先を見つける」(12・2%)も3ポイント前後増えた。
代わりに、「良い友人・先輩を得る」「趣味を生かし才能を伸ばす」「経験を豊富にし見聞を広める」「専門的知識・技術を習得する」は6・6〜3・2ポイント減らした。形式的な勉強を重視する姿勢が強まっているようだ。
どんな企業を志望するかでは、「安定している」(47・9%)が2ポイント増加し、トップに躍り出た。「給与が高い」(24・9%)も3・9ポイント増えて3位。安定志向が強いようだ。
逆に、前回首位だった「自分の能力をいかせる」は38・1%と9・4ポイント減少して2位に転落。もともと少なかった「能力主義が徹底している」は3・5ポイントも減らし、2・9%に落ち込んだ。
調査した私大連盟では「進級、卒業、就職という現実的意識が思いの外のしかかっている」としている。
和田秀樹・国際医療福祉大教授の話 「就職氷河期が終わり、大手銀行が2000人規模で採用するなど“売り手市場”になっている。大量採用時代になり、企業側はベンチャー精神がある人材より、無難な優等生を求めるようになった。学生気質が変わったというよりは、社会環境の変化に学生が敏感に適応した結果ではないか」
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