「経営戦略考−日経記事から毎日学ぶ経営戦略の原理原則」
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2004年7月20日 通巻1207号

劇団四季が劇場を新設 > 期待を裏切らない確実性

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■■   劇団四季が劇場を新設
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━━━━━━━ 情報源:日経流通新聞MJ2004.07.20【20面】━

◆投資の専門家との間で、「リスクとは何か」が話題になったこと
がある。投資の世界でのリスクとは、「期待リターンに対して、実
際のリターンがどれだけブレるか?」を指すのだそうだ。

◆通常のビジネスにおいても同様だ。将来を完璧に予測することは
至難の業であり、常に不確実性を伴う。ブレ幅が極端に大きい場合、
それはビジネスというよりバクチに近くなる。

◆ビジネスプランを綿密に立てたりするのは、ブレを抑え、より確
実にリターンを得るためだ。不確実と思えるものも、理詰めで考え
ていけば、より確実性の高い取り組みへと変えていくことができる。

◆確実性の大小は、業種によっても大きく差がある。当たりハズレ
が非常に大きい業種は何かと考えると、まず頭に思い浮かぶのは、
ショービジネスかも知れない。

◆20日付けの日経流通新聞MJには、劇団四季が今年の11月に、
「キャッツ」を上演する専用劇場を東京・品川に新設するという記
事が掲載されている。

◆不確実性の高いショービジネスといえでも、なるほど、「キャッ
ツ」なら確実に観客動員を見込めるのだろう。さらに劇団四季がう
まく運用しているのは、「四季の会」という会員組織だという。

◆この会、首都圏だけで6万人を擁する大きな組織だ。入会金と年
会費2,100円を払うと、優先的に席の予約ができるそうだ。この会
員をがっちりつかんでおくことでも、興行収入の確実性を高めるこ
とができる。

※劇団四季 → http://www.shiki.gr.jp/index.html

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■■   期待を裏切らない確実性
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●リリースする曲がすべて、ヒットチャートで初登場1位になるバ
ンドもある。ファンは、曲を聴く前に既に予約購入しているわけだ。
このような仕組みを構築するまでになれば、「バクチに近い」とい
う表現は、もはや適切ではない。

●安定的に収益を確保する仕組みを構築すべく、どの業界でも様々
な工夫をしているが、ショービジネスとて例外ではない。しばしば
批判されたりもするが、やはり有名なスターや脚本家、監督を使い、
確実にヒットさせようという意図は窺える。

●劇団四季の公演なら間違いない、と思わせる。そして実際に楽し
める。ファンを会員組織で囲い込み、ロイヤリティを高める。ここ
で大切なのは、ファンである会員の期待を裏切らないことだろう。

●実際、今回取り上げた記事では、「問題は舞台の質だ」という浅
利慶太芸術総監督の言葉が引用されている。期待を裏切らず、ある
いはそれを常に上回ることが、この「確実性」の仕組みを支えてい
る。

●ここまで、ビジネスを運営する立場での「確実性」について考え
てみたが、実は顧客の立場からみても「確実性」は重要だ。それな
りの金額を払って観劇することを考えてみて欲しい。言ってみれば、
それも「バクチに近い」かも知れない。

●ストリートミュージシャンならいざ知らず、ショービジネスに
「料金後払い」はない。すべて事前の購入だ。それでも不安なく、
「劇団四季の公演なら間違いない」と思ってもらえるかどうかだ。

●この域にまで達することが、ビジネスの「確実性」を高める。順
調に回るビジネスは、顧客の期待が十分に満たされるという、顧客
視点での「確実性」がある。そしてそれが結果として、ビジネスの
「確実性」をもたらすわけだ。

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■ 今日の教訓 ■
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あなたの企業が市場に新商品・新サービスを投入するにあたり、そ
れがヒットする確実性はどれほどのものだろうか。顧客の視点に立
ち、その新商品・新サービスで得られる満足の確実性について考え
てみれば、ヒットする確実性がどれほどのものか、わかるはずだ。

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