◎理科離れに歯止め 大学も直接指導に一肌脱ごう
小学生の理科離れに歯止めをかけるため、理科実験の支援員として大学生を小学校に派
遣する事業が、あすから石川県や富山県でスタートする。理科は、国語や英語に比べ、小学校レベルでも実験を行うための専門性が求められることが多く、「助っ人」として指導に当たる理工系の学生の役割は大きい。
理科離れが進めば、今後の日本のものづくりの土台が脆弱になるだけでなく、深刻化し
ている医師不足などをさらに助長する遠因にもなりかねない。北陸の理工系学部を持つ大学にとっても死活問題であるが、大学側独自の積極的な理科離れ対策は、まだまだ出足が鈍いように感じられる。
県や市町とも連携しながら、主体的にプログラムを組み、サポーターとして小学校の直
接指導に赴いたり、科学に関する部活動を支援するなどして「理科大好き」の児童生徒を増やす工夫をしてもらいたい。
理科支援員は、外部の人材を特別授業の講師や実験の補助員として配置する事業で、大
学生らは小学校五、六年生の授業に入り、手間のかかる実験などで教員を補佐し児童に助言する。学生らは教員志望も多く、理科の面白さをいかに伝えるかを学校現場で体験できる貴重な機会となろう。
小学生の理科離れは、一九八九年から低学年で生活科の導入に伴い理科と社会が廃止さ
れ、九八年からは学校週五日制の実施で理科授業時間数が減少し、教育内容が貧弱化したことが要因とも指摘されている。いわば「ゆとり」路線の影響を最も受けた教科と言える。
近年では、大学の工学系の志願者が減る傾向も顕著になっている。北陸では理科離れに
危機意識を持った大学教員らがNPO活動として授業や部活動に助力している例もあるが、大学自体も本腰を入れて取り組んでいいのではないか。
たとえば石川県内には大学や短大、高専でつくる大学コンソーシアム石川という組織も
ある。出張キャンパスなども行っているのだから、各大学が協力して子どもを対象にした科学の催しや出張授業なども企画してはどうか。技術立国を支える人材を育成するという意味で、立派な地域貢献活動となろう。
◎ポスト京都議定書 柔軟な枠組みづくりを
地球温暖化防止対策として、二〇一三年以降の、すなわち京都議定書後の取り組みをど
うするか。それをめぐる本格的な交渉が十二月にインドネシアのバリ島で開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)から始まる。日本は「落ちこぼれ」を出さないために柔軟な枠組みづくりのまとめ役を果たしたい。
そのためには容易でないが、京都議定書の目標達成を果たさねばなるまい。同議定書は
、温室効果ガスの排出量を来年から一二年までの間に世界全体で一九九〇年比5・2%減らすことを目標に先進国中心に削減を義務付けている。日本の削減義務は6%であり、目標達成計画が〇五年四月に閣議決定された。
容易でないのは日本だけでない。米国やオーストラリアは途中で京都議定書から脱退し
、経済発展が著しい中国やインドなどは「発展途上国」として割り当てがなされていない。これらは要するに取り組みの難しさを示すものである。
したがって、ポスト京都議定書の取り組みを決める交渉では、同議定書の欠陥ともいえ
る問題点を克服し、各論では歩調が合わない各国を一つにまとめるのが最大の課題だ。
異常気象の頻発や、それについての科学による裏付けの進展などにより、各国は温暖化
に対する危機意識をようやく共有できるところまできた。が、先に開かれた国連ハイレベル会合でも明らかになったように、具体的な対処となると、足並みがそろわない。欧州連合(EU)は温室効果ガスの削減義務付けを主張しており、日米は各国の自主性尊重を重視し、中国やブラジルなどは先進国の責任の重さを指摘し、途上国は先進国からの省エネ技術支援を求めているといったぐあいなのだ。
温暖化防止には意識改革を進め、産業のあり方を変えるなど思い切った発想の転換が要
るという専門家の意見は貴重だが、一歩一歩それに近づいていくのが現実的でないか。来年の洞爺湖サミットはポスト京都議定書の取り組みをめぐる重要な一つの舞台になるだろう。どの国も参加できる妥協点を見いだし、柔軟な枠組みにするのもやむを得ないだろう。そこへ誘導するのが議長国の日本の役割だと考える。