アジアで有数の知日家といえば、この人を挙げる人が多いのではないか。マレーシアのマハティール前首相である。「日本に学べ」というルック・イースト政策を掲げ、二十二年にわたりマレーシアを発展に導いた。
その人が今、「日本の過ちに学べ」と訴えている。先日の本紙に掲載されたインタビュー記事で「日本は変わってしまった」と落胆し、あらゆる意味でアメリカ化しようとしていると嘆いていた。
かつての日本は企業と従業員の間に信頼関係があり、人々はよく働き、きちんとした仕事をしていたと評価する。政府と民間の緊密な協力関係なども含め、日本の社会・経済システムを手本に国づくりを進めたとするマハティール氏の胸中は複雑なようだ。
日本のアメリカ化について「中国や韓国の急成長に恐れを感じて、ますます米国に近寄ろうとしている」とその理由を冷ややかに分析する。
極端な対米追随姿勢と並び、もう一つ大きな懸念材料を挙げる。「良い方向であれ、悪い方向であれ、急激な改革には破壊的なところがある」と構造改革の進め方に疑問を呈する。
就任したばかりの福田康夫首相は、小泉政権時代から顕著になった米国偏重の外交や改革の在り方を修正する姿勢を見せる。具体的にどう変えていくのか。成功、失敗ともに「日本に学べ」というアジアきっての知日家も注目している。