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自殺未遂者の4割は「過去にも」 横浜市大調査

2007年09月25日12時10分

 自殺を図って一命を取り留めた人のうち、4割以上が過去にも自殺しようとした経験があることが、横浜市立大学精神医学教室自殺予防研究チーム(横浜市)の調査で分かった。26、27両日に埼玉県内で開かれる日本精神科救急学会で研究成果の一部が発表される。自殺未遂者が再び自殺をする危険性が統計的に裏付けられたことで、救急医療の現場における自殺対策の重要性が浮かび上がった形だ。

 同大では02年に研究チームを立ち上げ、03年度から同大付属市民総合医療センター(田中克明院長)の高度救命救急センターに搬送され入院した全自殺未遂者への調査と支援を始めた。05年からは精神科医を常勤で置いている。

 03年度から今年7月までに入院した自殺未遂者は計554人(男性222人、女性332人)。その全員に聞き取り調査をした結果、それまでに1回でも自殺を図ったことのある人は41.8%で、2回以上の人は20.0%に達していた。初めての人は48.1%だった。

 自殺を複数回図った患者のうち、そのたびに異なる手段を使った人は約4割だった。研究チームによると、過去の自殺未遂は自殺の最も強い危険因子で、回数を重ねるごとに確実に自殺できる手段を選ぶようになる人が少なくないという。

 原因は健康問題が21.9%と最多で、家庭問題、家庭以外の人間関係、経済問題、仕事上の問題と続いた。全体の8割以上が精神疾患にかかっており、うち3割近くがうつ病やそううつ病などの気分障害に罹患(りかん)していることも分かった。

 一方、退院後の生活を支援することで、その後の自殺リスクを減らせることも分かってきた。自殺未遂の背景に精神疾患があれば専門医を紹介したり、生活苦があれば病院のソーシャルワーカーが生活保護の行政窓口に同行したりしている。その結果、05年度中に入院した人を対象にした約1年後の予後調査では、再び自殺を図った人は4.3%(5人)、自殺した人は1.7%(2人)と、比較的少なく抑えられた。

 チームリーダーを務める河西千秋・同大准教授は「救命救急センターが自殺予防の拠点になることを裏付ける調査結果。医療機関だけでなく、行政全体が地域の優先課題として取り組むことも不可欠だ」と指摘する。

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