田辺市芳養町の団栗町内会(37世帯)が、2011年5月末までに既存住宅への設置が義務付けられている火災警報器の一括購入を決めた。同町内会の警報器設置率は約95%となり、市内では群を抜いて高いという。市消防本部は「町内会で希望者を募り、一括購入するところはほかにもあるが、これほどの高い設置率はない。モデルとなる地区だ」と話している。 団栗地区では、消防本部による説明会を開き、その後、町内会役員が各家庭を回り、購入希望者を募った。申し込んだのは37世帯中、35世帯。計51個の警報器を購入した。10月初旬までに設置する予定。 ほとんどの世帯が設置を決めたことについて、町内会の坂本博保会長(70)は「お年寄りが多いことや一体感の強さ、隣の家と距離があることが理由に挙げられる」。松下茂副会長(58)は「説明会で火災現場の映像を見て、火事のすさまじさを知ったことが大きい」と説明する。 団栗地区では、70歳以上の夫妻2人暮らしの世帯が11世帯あり、住民約120人のうち、3分の1が65歳以上だという。坂本会長は「年を取ると、鍋に火を付けたことをすっかり忘れて危なかった時がある。そんな時のためにも必要だと思った。遅かれ早かれ設置しなくてはならない」と話す。 市消防本部予防課によると、8月末現在、旧市内にある84町内会のうち、65町内会で説明会を終了している。このうち一括購入を検討か決定、もしくは既に設置を終えているのは20町内会。これまでの最も高い設置率は約40%だったという。しかし、旧市内全体でみると、設置率は15・3%で依然低いのが現状だ。 同課が勧める一括購入のメリットは、購入数が多いので価格が下がることが多い▽悪質な業者にだまされにくい▽入札方法にすれば、「取り付け工事込み」といった条件を付けることができる―などがあるという。警報器の市販価格は、およそ4000円から。電池の寿命によって値段が高い物もあるという。 市消防本部は「『付けておけばよかった』では遅い。自分や家族のためにも設置してもらいたい。要望があれば説明会も行う」と話している。 火災警報器は、2004年の消防法改正に伴った市町村の条例により、11年5月末までに既存住宅の寝室などに設置が義務付けられている。06年6月以降に建てられた新築住宅でも設置しなければならないと定められている。