みんなのニュース:小学生から「負け組」 勉強の目的見えぬ子供たち
「勉強が役に立つ」と考える東京の小学生の割合は、世界6都市の中で最低であることが、ベネッセコーポレーションが実施した学習調査でわかった。進学希望でも「四年制大学まで」が18%にとどまり、「中学まで」「高校まで」が合わせて21%と、6都市の中で最も“低学歴志向”が強い。学校外での勉強時間も3時間半以上が14%もいる一方で、「ほとんどしない〜1時間半」も半数以上いるなど、二極化が浮き彫りになった。 調査は東京、ソウル、北京、ヘルシンキ、ロンドン、ワシントンDCの6都市の学校に通う10歳と11歳の小学生を対象に、2006年6月〜07年1月にかけて実施した。回答者は5都市で約900人〜1300人、ヘルシンキのみ約500人で、計108校。男女比は半々。各都市の公的な教育機関などに依頼したほか、ホームページの学校情報などを参照して、地域の教育水準、学力レベルが偏らないように対象を抽出した。 「金持ちになるために勉強が役立つ」と考えている子供の割合は、他の都市が6割を超えたのに対し、東京は43%。「一流の会社に入るために(役立つか)」など、経済的な豊かさや社会地位と関連づけた質問のほか、「尊敬される人になるために」「心にゆとりがある幸せな生活をするために」といった質問でも、最下位だった。 調査を担当したベネッセ教育研究開発センターの木村治生・教育調査室長は「英米では、授業の中で、勉強の目的や、何に役立つかなどをしっかり説明している。中国や韓国では、勉強して良い大学にいけば、豊かな生活を送れるという意識が社会全体で強い。日本では、勉強の価値を下げるような言説があるのではないか」と推測する。 北京と東京の子供が、学校外で平日に学習している時間(塾での時間も含む)を比べると、3時間半以上の長時間勉強する子供の割合はほぼ同じ14%。だが、北京は「2時間から3時間半」が計46%いるのに対し、東京は「ほとんどしない〜1時間半」が合計で60%と、学習時間の面でくっきりと二極化している。木村室長は「東京は、学習時間に長短がある子供が混在しており、学校の授業で教えにくいのではないか」と格差の大きさを心配する。 ヘルシンキ、ロンドン、ワシントンDCの子供たちの学習時間は「ほとんどしない〜1時間」までで7割に上る。一方で、テレビを3時間半以上見ている子供が、ロンドン25%、ワシントンDC28%いる。東京も22%で3位。平均試聴時間でみると、東京が135分で6都市中、もっとも長い。 一方、ソウルでは、週5日塾に行っている子が半数いる。木村室長によると、ソウルでは学校の校門前に塾が乱立しており、成績優秀者の写真を掲げたり、学校まで送迎バスが来たりするケースがあるという。 木村室長は「欧米の小学生の学習時間は短いが、年齢が上がるにつれて長くなる。ソウルと北京は小学生からずっと長時間勉強している。東京は小中学生の方が高校生より勉強時間が長い」と説明した。高校生同士で比べると、東京の子供の学習時間の短さがさらに際立つかもしれない。 大学院まで進学したいと答えたのは、北京市が最多で65%、ソウルの30%が続く。それに対して東京は14%。四年制大学への進学を希望する子も18%にとどまった。 学校の成績を7段階に分けた場合、最上位の「1」をとりたいと思っている子の割合も、東京は低い。最多は北京市の86%で、東京は49%。6都市中5番目だった。最下位はヘルシンキの19%だが、がんばれば「1」をとれると思う子供の割合になると、ヘルシンキは一転して5割を超える。北京のトップ(76%)と東京の最下位(37%)は変わらず、小学生の段階で「負け組」意識を持つ児童が東京には多いといえる。【岡礼子】 2007年9月21日
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