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2007年09月29日

胎盤癒着狭い 大野病院公判・弁護側医師証言

 福島県大熊町の県立大野病院医療過誤事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた大熊町下野上、産婦人科医加藤克彦被告(40)の第8回公判は28日、福島地裁(鈴木信行裁判長)で開かれた。弁護側請求で子宮などを病理鑑定した男性医師の証人尋問を行った。公判は休憩などを挟み午後8時ごろまで約10時間にも及び、検察側と弁護側が論戦を繰り広げた。
 医師は、争点の1つとなる癒着胎盤の範囲について、「子宮後壁を中心として癒着はみられたものの、前壁部分には明らかな癒着はなかった」と証言。検察側の「子宮口を挟んで子宮後壁から前壁に癒着していた」との主張よりも範囲が狭いとの見解を示した。子宮摘出に移行せず胎盤剥離(はくり)を続けたことの正当性が裁判の最大の争点だが、その判断に影響を与えるとみられる。
 「前壁に癒着あり」とする検察側鑑定医は胎盤の一部である絨毛(じゅうもう)が前壁の一部に見られたことを根拠にしていたが、今回の医師は「絨毛はばらけやすく、標本をつくる過程や手術で本来あるはずのない位置に存在する場合がある」と述べ、事件の後に人工的に絨毛が移った可能性を指摘。「絨毛が見られただけで癒着と判断するのは乱暴」と、検察側鑑定医の見解に疑問を呈した。
 さらに医師は癒着の程度について「絨毛が子宮筋層に5分の1程度入っていた」とし、「2分の1程度」とする検察側鑑定医の判断よりも癒着が軽度だったとした。
 検察側は医師の鑑定経緯を細かく質問。医師が子宮を直接見たのは1度だけだったことなどを引き出し、同医師の鑑定結果の信用性に疑問を投げ掛けた。
 起訴状によると、加藤被告は平成16年12月17日、楢葉町の女性=当時(29)=の出産で帝王切開手術を執刀し、癒着した胎盤をはがし大量出血で女性を死亡させた。女性が異状死だったのに24時間以内に警察署へ届けなかった。
 次回公判は10月26日午前10時からで、弁護側の臨床に関する鑑定医への尋問を行う。



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