土曜午後の向団地公園(和歌山市)。同会の金川佳史さんと則藤智司さんが「冒険あそび工房」の子どもたちの所にやってきた。リクエストに応え、滑車ロープの道具を取り出す。その横から「お相撲したい」の声。滑車ロープ派と相撲派がともに「やりたい」を連呼。わいわいがやがや言い合ったが、やがて「じゃ、こっちでロープをして、ここら辺で相撲しよう」と落ち着いた。
リーダーの幸前里穂ちゃん、金井田歩未ちゃん(ともに小3)は「何して遊ぶとか、どこかへ行くとかみんなの意見を聞いてから決める。けど、半分に分かれて、決めるのに長いことかかる。でも、決まったら、あーできたってうれしい。みんな喜んでくれるし」とにっこり。
中学2年の野島権斗くんもリーダーの1人。「ちびっ子とつきあっていたら気持ちが落ち着ける。おもしろいよ」と鬼ごっこに汗を流す。
リーダーはなりたい子がなる。金川さんら大人はサポーターやガイドに徹し、遊びを紹介したり、場所を教えたりすることはあっても、活動内容は子どもたちが決める。子どもたちから要望があれば、施設利用の手続きをしたり、交通手段の手配をする。“冒険”という言葉には、大胆な遊びにチャレンジするだけでなく、子どもたち自らが責任を持って遊びを計画、実施するという意味を込めている。
金川さんは2年前から、「子どもを知りたい」と、大人が“児童”として学校生活を送る「小学校留学」と名づけた活動を続けている。一方、同市梅原の里山にあるプレーパーク(冒険遊び場)で子どもを見守り一緒に遊ぶプレーワーカーの顔も持つ。
「里山でのプレーパークは秘密基地づくりや自然体験などに適した貴重な存在であることがわかったが、それと共に子どもたちが山の中以外でも気軽に集まれる場所を求めていることもわかってきた」。そんなとき、小学校留学で出会った子どもたちが大勢、団地内の公園で遊んでいる様子を目にし、「これまで、里山に子どもを呼び集めることを考えていたが、生活圏にある公園で冒険あそびをするのはどうか」と思いついた。顔見知りの子どもたちと始めたところ、その友達、兄弟と輪が広がった。また、活動の様子を地域の目に触れさせやすくなった。
「昔は“プレーワーカー”なんかつくらなくても、誰かが公園にいて、場の安全や子どもたちの安心を保っていた。それが今はあまりかかわろうとしない」と金川さん。「この活動は、子どもの自主的な遊びを応援するものですが、『もっと地域の子どもたちの方を向いてあげてよ』という大人への投げかけでもあります」とねらいを話す。
|