妊婦搬送拒否:医療集中の東京でさえ 現場「多忙で手回らぬ」
東京都荒川区の産婦人科医院に通院していた妊婦が、切迫早産と診断されながら十数カ所の病院に受け入れを断られた問題。全国で最も病院が多く、医師が集中する東京ですら、妊婦の搬送先探しに困難を極めるケースがあることが明らかになったが、氷山の一角に過ぎない可能性が高い。 切迫早産などのハイリスク出産に対応する全国の総合・地域周産期母子医療センターを対象に毎日新聞が今年2〜4月に実施した調査。回答があった都内5病院でみると、05年度には受け入れ要請が延べ1139件あったが、過半数の675件は受け入れ不能だった。受け入れ不能だったケースで最も多い理由は、「新生児集中治療室(NICU)が満床」が4病院で、「診療できる医師がいなかった」は1病院だった。 東京都日野市の産婦人科開業医で、日本産婦人科医会広報委員長を務める加来隆一医師は「都内の産科医はみな、受け入れ先探しに苦労した経験がある。搬送先が見つからないのは地方だけの問題ではない」と話す。都内でも産科医や小児科医、NICUのベッド数が不足していることを挙げ、「東京には搬送先を周産期センターの医師が探すシステムがあるが、どこの医師も忙しくて手が回らない」と説明する。30病院以上に受け入れを断られたケースもあるという。 日本の人口当たりの医師数は経済協力開発機構(OECD)加盟国中最低レベルで、さらに産科はなり手が少ない。加来医師は「過酷な労働環境の中、医師はぎりぎりまで頑張っている。医師数を大幅に増やして労働環境を改善しなければ解決しない」と訴えている。【鯨岡秀紀、苅田伸宏】 毎日新聞 2007年9月27日 東京夕刊
|