2007年09月28日 更新

ゴジラも酔った!ヤ軍、ドン底から奇跡のシャンパンファイト

チームメートからのシャンパンシャワーを浴びる松井秀(代表撮影)

チームメートからのシャンパンシャワーを浴びる松井秀(代表撮影)

シャンパンファイトで、ミンケイビッツ(左)の肩を抱き、感慨深げなトーリ監督(AP)

シャンパンファイトで、ミンケイビッツ(左)の肩を抱き、感慨深げなトーリ監督(AP)

 【セントピーターズバーグ26日(日本時間27日)】ヤンキースがデビルレイズに12−4と大勝し、13年連続のプレーオフ進出を決定。地区10連覇を逃しても、ワイルドカード(最高勝率の2位)で地区シリーズに進む。今季最多の借金8となった5月29日から70勝38敗という歴史的な逆襲を演じた。松井秀喜外野手(33)は不振を理由にスタメン落ち。岩村明憲内野手(28)は「1番・三塁」で3打数1安打だった。

 シャンパンの栓を抜くのに手間取った。試合直後、歓喜に沸くロッカールームでモタモタしていた松井秀は、ロジャー・クレメンス投手(45)らに囲まれ、あっという間にずぶぬれ。体中からアルコールを吸い込んで、約1年ぶりとなる儀式に酔った。

 「栓が抜けなかった? フフフ、久しぶりですからね」

 通常、優勝決定時に行われるシャンパンファイト。ジョー・トーリ監督(67)の粋な計らいで、今季に限ってはプレーオフ進出を決めたことを祝して特別に催された。「打撃での上半身と下半身の動きがバラバラ。スランプだろ」と同監督に指摘され、この日のデ軍戦には出場しなかった松井秀も感激はひとしおだ。

 「前半のことを考えれば大変な道程だった。(プレーオフに)出られることを信じて、みんなが毎日毎日頑張ったから、きょうがあるんだと思いますよ」

 奇跡的な巻き返しだった。5月29日、首位のレッドソックスに14.5ゲーム差をつけられた。しかし、後半戦はメジャー最高勝率の48勝24敗。松井秀も7月に打率.345、13本塁打で初の月間MVPに輝いた。松井秀いわく「僕たちはあきらめが悪い集団」は、気がつけば、レ軍と地区首位を争っていた。

 「いつも通りにするだけ。準備をして試合に出るだけ。結果はどうなるか分かりませんが」

 ゴジラは不振に陥っている。だが「焦っても仕方がない。よくなると思ってやるだけ」と持ち味のプラス思考は失っていない。今季はあと4試合。地区優勝の可能性も残っている。きっかけさえつかめれば「ミスター・オクトーバー(10月)」になれるはずだ。

★松井秀喜に聞く

 −−プレーオフ進出を決めた試合に出られなかった

 「そりゃもう、全然(出なくても関係ない)。特別なのはない。うれしいですよ」

 −−今までとは違う状況(優勝決定でなくワイルドカード)でのシャンパンファイトになった

 「プレーオフに出るという意味では大きな違いはないと思う」

 −−27日(日本時間28日)以降の戦い方は変わるか

 「基本的に最後まで普通。明日の試合もプレーオフも一緒。出るか分からないけど」

 −−打撃の調子は

 「特別に悪いとは思わない。そう映っているなら仕方がない。実際、結果も出ていませんから」

 −−トーリ監督と抱き合っていたが何か会話は

 「僕からは何も言っていない。グッド・ジョブ(よくやった)といわれた」

 −−(レッドソックスに)14.5差、借金8のときの心境は

 「プレーオフどうのこうのより現状の危機感があった。まだ5月。このチーム状況を何とかしないといけないと強く思っていました」

 −−巻き返せた要因は

 「これっていう1つはないと思う。みんながあきらめずにやったからだと思う」

 −−後半戦の手応えは今までで一番ではないか

 「結果的にみれば、そうかもしれない。それがプレーオフにどうつながるか分からない。いい形でつながればいい」

◆奇跡的なプレーオフ進出に涙を流したヤンキースのジョー・トーリ監督(67)

 「ずっと信じ続けた結果だ。プレーオフ進出を(シャンパンファイトで)祝うのは、今季が特別だから。序盤の不振を考えれば、プレーオフに進めたことを誇りに思っていいだろう」

◆この日は無安打だったが、本塁打と打点の2冠王でMVP当確のアレックス・ロドリゲス内野手(32)

 「信じられない。正直言って5月にはシャンパンファイトができるとは思っていなかった」

◆同点の12号ソロなど3安打2打点だった主将のデレク・ジーター内野手(33)

 「最も厳しいシーズンだった。シーズンを通じて、あきらめずに戦った結果だ」

◆今季2勝に終わったヤンキースの井川慶投手(28)

 「貢献できなかった。(シャンパンかけは)下で優勝したときにやっている」

■米大リーグのプレーオフ

 ア、ナ両リーグが東西2地区制になった1969年にスタート。東、中、西の3地区制が実施された95年(94年はストで中止)からワイルドカード(WC=リーグ2位の最高勝率チーム)が導入され、両リーグとも地区優勝とWCの4球団が進出する。ただし、最高勝率とWCのチームが同地区の場合は、勝率1位と3位、2位とWCの組み合わせとなる。地区シリーズ(5回戦制)とリーグ優勝決定シリーズ(7回戦制)を経て、リーグ王者がワールドシリーズで争う。現地26日(日本時間27日)の段階では、ア・リーグはレッドソックスVsエンゼルス、インディアンスVsヤンキース、ナ・リーグがメッツVsパドレス、ダイヤモンドバックスVsカブス。

■GODZILLA in USA

 ゴジラは前日(25日)までプレーオフ進出を決めただけではシャンパンファイトをしないと思っていた。「ヤンキースですからね、地区優勝の可能性が残っている間はしないでしょ。ワイルドカードだった97年や95年もしていないんじゃないですか」。地区10連覇に執念をみせていたトーリ監督が方針を変更して、シャンパンファイトを行った。絶望的な状況から巻き返し、13年連続で10月もプレーできる喜びを分かち合った。

◆デビルレイズの岩村明憲内野手(28)

 「うちのチームは勝てるゲームを落としている。勝てるゲームを大事に取らないとぶざまなことになる」