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動けば「不安」な「豪快な号外」

9月26日18時34分配信 オーマイニュース


 てんつくマン氏に小豆島から届けられた「不安」の声がオーマイニュースに掲載された2日後の9月11日、TEAM GOGO! 事務局は約束していた収支報告書ならびに活動報告書をサイト上に掲載しました。

 しかし大変残念なことに、これによって前の記事で言及したインターネット内の「不安」の声が収まることはありませんでした。

 たとえばその収支報告書は8月末の時点で収支がゼロなので、運営費としての経費が一銭もプールされていないのに一体どうやって9月以降の運営費を捻出する(した)のかという「不安」を感じざるを得ません。

 それ以上に、領収書また発注書兼納品書として掲げられた書類(PDF)が通常のビジネス文書の体裁にのっとったものではなく、しかもそこに押してある社印(朱印)がパソコン上で同一画像を貼り付けたかのような不自然なものだったため、ネット内の「不安」の声はこの文書の公開によって否応なく高まりました。

 それで、その領収書、また発注書兼納品書に関して日本ウェブ印刷株式会社様、ならびに凸版印刷株式会社様にメールによる照会を行なったところ、凸版印刷株式会社様のご担当者の方から下記のようなメールの返信がありました。

 「弊社(凸版印刷株式会社)は、日本ウェブ印刷株式会社様がTEAM GOGO事務局様より受注した『豪快な号外』の作成につき、日本ウェブ印刷株式会社様より発注を請けました。2281万8000部を作成し、2007年7月までに納入しております。TEAM GOGO事務局様のウェブサイトに掲載された『印刷証明に関する書面』は、日本ウェブ印刷様より要請があり、内容に誤りがない事を確認した上で押印し、日本ウェブ印刷株式会社様に提出いたしました。ウェブサイトへの公開については、聞いおりませんでした」

 このメールを受け、凸版印刷株式会社のご担当者本人に、電話でメール内容の照会をしたところ、「伊須田記者に送ったメールは間違いなく自分からのものであり、そこで答えた内容以上のことは答えられない」とのことでした。

 とすると、確かに印刷され納入された2000万部以上の「豪快な号外」は一体どこに消えてしまったのだろうかという「不安」が頭をよぎります。

 なぜなら、オーマイニュース上の 「豪快な号外」に関するアンケートを見ても、日本の全人口の6分の1弱の人(つまり6人に1人)がこの「豪快な号外」を受け取っているようにはどうしても思えないからです。

 そして日本ウェブ印刷株式会社により印刷されたはずの800万部の「豪快な号外」は本当に印刷されているのか、あるいはそのために取り分けられているはずの寄付はもしかしたら流用されてしまったのか、一見して不自然なその社印は確かに本物なのか、といったネット上で言い表されている不安も、今のところ静まる気配がありません。 

 そもそもネット上には、この「豪快な号外」の内容そのものに「不安」を言い表す声が配布当初から存在します。

 それは、「豪快な号外」の内容は地球温暖化への啓蒙にしては極端過ぎるものではないか、という声です。

 たとえばその内容の大半を占める「ほんと 未来はどうなるの?」と題するマンガの中には、10年後の未来からやってきた主人公が「近い未来の世界」を案内するというストーリーのもとに、「平均1.5度温度が上がった東京」が「埼玉のすぐ近くまで海に沈む」というくだりがあります。

 しかしこのくだりの根拠として挙げられているIPCCのメッセージにも、スターン報告書にも、「インディペンデント紙」(恐らくは2007年2月3日付の論説他と思われる)にも、10年後ないしは「近い未来」に東京の気温が1.5度上がる結果として埼玉のすぐ近くまで海岸線が移動する、ということは直接言及されていません。

 むしろ、「IPCC第4次評価報告書 第1作業部会報告書に基づく主要な科学的な認識」 によれば、今世紀末、つまりおよそ100年後には「平均気温の上昇は、4.0℃(2.4〜6.4℃)に達すると予測」されており、「このような温暖な気候が数千年続くと、グリーンランドの氷は最終的には消滅してしまい海面水位を7メートル上昇させる」とあります。

 これは、 国立環境研究所地球環境研究センターの研究者の意見とも合致します。

 「今後100年間の上昇幅は、現在の海岸堤防がそのまま維持されるとすれば、東京湾、伊勢湾、大阪湾の海抜ゼロメートル地帯が水没するほどではありません。しかし温暖化を放置した場合、数百年以上後にはグリーンランド氷床の縮小等により水没の危険が高まることが指摘」されているに過ぎないのです。

 つまり、産経新聞(ウェブ版8月16日)などが伝える、今年の夏の猛暑による地球温暖化進行の懸念を仮に差し引いたとしても、10年後ないしは「近い未来」に「埼玉のすぐ近くまで海に沈む」というシュミレーションを根拠に行動を促すのは、明らかに煽り過ぎです。

 しかも「豪快な号外」はその対策として、

 ▼オーガニック食品を扱う特定カフェの紹介、▼環境にやさしい平和省設立、▼憲法九条を世界に広げるためのイベントの告知、▼「環境問題や社会問題に取り組むステキな会社」の株を買って企業を応援しようとの呼びかけ、▼ろうきんや非営利バンク(NPOバンク)などの「エコな金融機関」への預金の勧め、▼環境を変えるため(?)の先の参院選選挙への投票の呼びかけ、▼てんつくマン氏による「カーボンニュートラル大作戦!」の報告(これは紙媒体を使った今回の「豪快な号外」運動と明らかに矛盾している)

──などを掲げており、これは特定個人や団体への支持の呼びかけなのかと首をかしげざるを得ません。

 そして個人個人でできる省エネ行動に関しては、「お風呂は愛する人と電気を消してろうそくの灯りで一緒に入ろう」、「食べ残しをすると懐かしのもったいないおばけがでたらかなり怖いので完食しよう」、「冬は厚着をして暖房の温度を下げ、夏は部屋を「ここはサウナだ」と言い聞かせよう」とあり、どこまで本気で、どこまで冗談なのかいぶかられます。

 これをたとえば、環境省による「チーム・マイナス6%」プロジェクトと比べてみてください。

 率直な話、「豪快な号外」は良い事を行ないたいと願う多くの人を集め、1億円以上の多くのお金を集めたのに、多くの「不安」をも引き起こすものとなってしまった観が否めません。

 それは地球温暖化を含む環境問題を取り上げるすべての運動が信頼できるものなのだろうかという不安、環境問題や他のボランティアのための募金がその当初の目的通りにきちんと使われるのだろうかという不安、そして何よりも、そうした「良い事を行ないたい」と願う人々やその個人情報は将来一体何に使われてしまうのだろうかという不安です。

 一方で、てんつくマン氏はそうした「不安」の声に関心があるようには見えません。実際、アメーバニュース記者のインタビューの際にも「今後は冬至に向けて、イベントやインターネットの中から一人でも多くの人が今や未来の子供のことまで考えて動き出す人が増えるように、展開していきますよ」と述べています。(この記事では「本当にありえない値段で」「沢山の印刷屋さん」が「豪快な号外」を印刷したことになっているが、その詳細や今回の報告との整合性はいまだに不明)

 ある人がブログで率直に述べている通り、このことで一番「不安」を感じているのは、もしかしたら「豪快な号外」の表紙の写真にあるアザラシのような動物たちなのかもしれません。

(記者:伊須田 史子)

最終更新:9月26日18時34分

この記事は、市民記者メディアに登録された方々が書いたものです。

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