北朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議が二十七日から北京で開かれる。三十日まで四日間の日程だ。七月に首席代表会合が行われているが、全体会合としての協議は今年三月以来である。
今回の協議は、二月の合意に沿って、北朝鮮が寧辺の核施設の稼働中断・封印を実施、韓国が見返りとして重油を提供するなどの「初期段階措置」の履行に続き、核施設の無能力化と、核計画の完全申告などの「次の段階」の措置で具体的手順に合意できるかどうかが焦点となる。その意味では、非常に重要な協議といえよう。
米朝は既に年内の核無能力化に合意しているが、具体的な手順など詰めていけるかどうか、なお不透明だ。協議筋によると、米国は北朝鮮が再稼働する事態になっても、できるだけ時間がかかるように無能力化措置を定めたい立場だが、北朝鮮は早期の再稼働も視野に技術的に複雑な手順は避けたい方針といわれる。協議は米朝の駆け引きを中心に推移しそうだ。
無能力化と並行して行われる核計画の完全申告では、高濃縮ウランによる核開発が争点となろう。しかし、先に北京入りした北朝鮮の首席代表、金桂冠外務次官は「今、急いで話し合う問題ではない」と記者団に話し、今回の協議では踏み込まない構えをみせている。
また、シリアの核施設に北朝鮮が協力しているとの米メディアなどの報道も懸念材料だ。金次官は「でたらめだ」と強く否定したが、疑惑が強まれば協議の進展に影響を及ぼしかねない。北朝鮮がどのような立場を示すかがポイントだが、非核化プロセスがさらに一歩進むよう、踏み込んだ議論を期待したい。
一方で、日本は核問題のほかに、懸案の日本人拉致問題の解決を抱えている。今月初めにモンゴルで開かれた六カ国協議の日朝国交正常化作業部会でも、北朝鮮側は「拉致問題でさらなる措置を取る状況にはない」とかたくなな姿勢を崩さなかった。答えはそう簡単には出ないだろう。米国が拉致問題の全面解決とは切り離して、北朝鮮のテロ支援国家指定を解除する可能性を示唆していることも気がかりだ。
就任したばかりの福田康夫首相は、安倍前政権が北朝鮮への制裁重視など強硬路線を貫いてきたのに対し、「圧力というか、話し合いを閉ざすようなことではいけない」と、「対話重視」の柔軟姿勢を打ち出している。局面打開につながるかどうか、福田政権は今後も難しいかじ取りを迫られよう。
僧侶や市民による大規模な反政府デモが続いているミャンマーの最大都市ヤンゴンで、治安部隊が僧侶らに威嚇発砲を行い、死傷者が出た。
ついに当局が武力行使するという重大局面を迎えた。流血の惨事は許されない。国際社会の働きかけにより軍事政権と民主化運動指導者との対話を促す必要がある。
きっかけは今月初め、中部パコクで僧侶三百人がガソリンなどの燃料高騰に抗議してデモを開始したことにある。僧侶は市民の尊敬を集め影響力も大きい。デモは瞬く間に各地に飛び火した。
背景には軍政による長年の抑圧に対する反発がある。一九八八年に国軍が民主化デモをクーデターで抑え、全権を掌握した。そのとき死者千人以上が出た。その後、軍政は自ら「民政移行への一歩」と位置付ける国民会議で新憲法の基本原則を討議したが、それはノーベル平和賞を受賞した民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんを自宅軟禁下に置いたままの見せかけの民主化であった。
今回のデモは八八年以来、最大規模に膨れ上がり、当初の経済要求から「民主化を」に変わっている。ブッシュ米大統領は二十五日、国連総会の一般討論で演説し軍政指導部への経済制裁強化を表明した。だが、いまは制裁よりも双方の対話を促すことが重要だ。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは国連安保理に対し直ちに使節団の派遣を求めている。国際社会の素早い行動が必要だ。
日本は政府開発援助(ODA)などで最大援助国であり軍政、民主化勢力の双方と関係が深い。影響力を行使し軍政に強く自制を求めるとともに、民主化プロセスの促進を働きかけるべきだ。
(2007年9月27日掲載)