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「心の病から」過去最悪 理由はパワハラ

過労死・過労自殺の労災認定

 厚生労働省は30日、2016年度の過労による労災補償状況をまとめた。精神疾患による労災申請は前年度比71人増の1586人、労災認定は同26人増の498人で、いずれも過去最多。精神疾患による過労自殺(未遂を含む)は同9人減の84人で、広告最大手・電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)も含まれる。支給決定理由は「ひどい嫌がらせ、いじめ、暴行」などのパワハラが「仕事内容・量の大きな変化」を上回った。

     一方、脳・心臓疾患による申請は2年連続の増加で、前年度比30人増の825人、認定は同9人増の260人だった。過労死は同11人増の107人。

     厚労省の労災認定基準は、発症直前1カ月におおむね100時間、または2~6カ月前に月平均80時間以上の残業をしていた場合で、「過労死ライン」と呼ばれる。政府は労働基準法を改正して19年度から過労死ラインに合わせた残業時間の上限を設ける方針だが、未遂を含む自殺者84人(女性2人を含む)のうち37人と脳・心臓疾患の死者107人(女性3人を含む)のうち12人は過労死ライン未満でも認定された。

     高橋さんは15年12月に亡くなり、16年9月に労災認定された。労働基準監督署が認定した直前1カ月の残業は約105時間で、主な支給決定理由は「仕事内容・量の大きな変化」とされた。

     母親の幸美さん(54)は弁護士を通じて「これほど多くの人が、仕事が原因で命を落とした事実は本当に悲しい。大切な家族を亡くした悲しみは決して癒えない。これ以上、頑張って生きている人の夢、希望、人生、命を奪わないでほしい」とコメントした。【早川健人】

    死者、業種別で自動車運転業務、建設業が突出

     厚労省のまとめを業種別に見ると、前年度と同様に自動車運転業務、建設業の死者が突出して多い。この二つの業種は、最短で19年4月とされる改正労働基準法の施行後も5年間は残業規制の例外扱いが続く。過労死弁護団全国連絡会議の川人博幹事長は「過労死をなくすため、除外業種を作らないことが重要」と警鐘を鳴らす。

     脳・心臓疾患で過労死した107人のうち35人がトラック運転手など運輸・郵便業で、前年度に続いて業種別で最も多かった。精神疾患による自殺者(未遂を含む)も6人いた。建設業の自殺者(未遂を含む)は16人で、業種別ワースト2。脳・心臓疾患の過労死は7人だった。川人氏は「例外規定がきわめて危険だと改めて実証された」と批判した。

     例外の5年間継続は今年3月、政労使が合意して政府の働き方改革実行計画に盛り込まれた。自動車運転業務と建設業は「中小企業の人繰りの苦しさ」などを理由に例外とされた。【早川健人】

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