「菅氏から指示、首相から電話注意」謝罪会見
「撤回し、おわび申し上げる」と、防衛相辞任を重ねて否定
稲田朋美防衛相は30日の記者会見で、東京都議選の自民党候補の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛相としてもお願いしたい」と述べたことについて「撤回し、おわび申し上げる」と謝罪した。公職選挙法違反との指摘が出ていることに関しては、「地位を利用した選挙運動をする意図はまったくなかった」と繰り返し釈明。防衛相の辞任を重ねて否定した。
公選法は第136条の2で、公務員の地位を利用した選挙運動を禁止している。会見で弁護士でもある自身の見解を求められると、稲田氏は「(同法違反という)指摘があるのは承知している」としながらも、「発言の誤解を招く部分は撤回した。あくまで自民党の国会議員として応援演説に行った」とかわした。
27日夜に発言を撤回したことについては、菅義偉官房長官から「誤解を招くような発言は撤回し、謝罪した方がいい」と指示されたことを明らかにした。安倍晋三首相からも同日、電話で注意を受けたという。
自身の進退については「しっかりと防衛相としての職務を果たしたい」と述べ、続投に意欲を示した。
しかし、与党内では次の内閣改造で稲田氏の交代を求める声が強まっている。自民党関係者によると、稲田氏は7月1日に都議選の応援が予定されていたが、失言を受けてキャンセルされたという。
稲田氏は7月中旬、米ワシントンで日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)に出席する。交代論が協議に悪影響を与えるという懸念も出始めた。防衛相経験者は「米側は交代の可能性が高い稲田氏との会談を快く思わないだろう。マティス米国防長官も困るのではないか」と指摘した。
野党の追及は続いている。民進党の大串博志政調会長は「謝ったから済む問題ではない。防衛相としての能力、資質はない」と述べ、共産党の志位和夫委員長も都議選の応援演説で「稲田氏の発言は自衛隊の私物化だ。許すわけにはいかない」と批判した。【木下訓明】