飲み会で女性同僚の容姿ネタに“違和感”を感じる僕らが女性を支援する理由

職場の飲み会で同僚女性の容姿をネタにする、仕事仲間でも男性だけになるとセクシュアルな話で盛り上がる、女性は優秀でも昇進しにくい —— 。

こうした日本の現状に違和感をもつのは、女性だけではない。Facebook COOのシェリル・サンドバーグの大ベストセラー「Lean In」の日本地域の公認団体Lean In Tokyoは昨年3月に発足し、女性が自由に挑戦できる社会をつくろうと活動している。学生から社会人までメンバー25人中、5人は20〜30代の男性だ。女性の支援といえば女性が中心になりがちだが、彼らはなぜ動き出したのか。Lean In に参加する5人の男性たちに、座談会形式で、本音を聞いた。

Lean In Tokyoの6人がずらりと並ぶ集合写真

若い男性が「女性支援の活動しています」と言いにくいのはなぜか

座談会メンバー(写真上の左から)

松木大地さん(28):日系大手メーカー勤務。4人兄弟の母子家庭で育つ。

中野優太郎さん(23):早稲田大学4年生。5月にLean In Waseda(Lean Inの早稲田大学でのサークル)を立ち上げた。

ワーグナー・フェリックスさん(25): 外資系大手戦略コンサルティング会社の東京オフィス勤務。日本人の母とドイツ人の父をもち、日独米で育つ。共同創設者の鈴木さんとは夫婦。

鈴木伶奈さん(26):Lean In Tokyo共同創設者。外資系投資銀行を経てベンチャーキャピタル勤務。投資銀行時代、根強い男性社会に違和感をもつ。シェリル・サンドバーグ氏を訪ねて渡米しLean In Tokyo 設立を決意。フェリックスさんとは夫婦。

ヘルフェルト-小山 ヒロさん(24):外資系大手会計事務所グループ勤務。日本人の母とドイツ人の父をもつ、ドイツ育ち。

青野巧弥さん(31):日系広告会社を経て、外資系大手コンサルティング会社東京オフィス勤務。

男性が男性に違う生き方を見せる

——みなさんがLean In Tokyoに加わったのはなぜですか

松木さん:自分は母子家庭の4人兄弟の末っ子です。子ども4人を大学に行かせると決意した母が、看護師として夜勤もしながら、大変な思いをして働く姿を見て育ちました。そんな中でがんばって早稲田に入ったのですが、周囲の優秀な女性が、出産や子育てを考えて就職先を変えてしまう。一般職を選んだ人もたくさんいます。仕事の上では不利になってしまうのをみて、すごくもったいないなと。

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松木大地さん「母が大変な思いをして働く姿を見て育ちました」

中野さん:大学では、女性の起業した会社で働いていました。7人中、男性は自分だけ。少数派って発言しにくいんだなと感じました。もうひとつは、インターン先の上司が女性だったこと。女性でも優秀な人はたくさんいるんだなと、そのときすごく思って。友達も女の人は多いですし。そういう人たちが上にいくのが難しいのはやっぱり不条理だなと考えました。みんな女性から生まれているわけです。それなのに、サポートされないのはなんか変だなと思って、活動に参加しています。

フェリックスさん:きっかけは妻ですが、今のモチベーションとしては、すごくイライラするからです。一番が日本で育った中高年の男性で、女性に対して差別的なことを言ったり、セクシュアルな発言をしたり、女性が働きやすくない環境にしている人がいる。その場を見たり聞いたりして、すごく気持ち悪いなと。そのモヤモヤを解消するためにも、もっと女性に活躍できる場を提供したいというのが強い思いです。

——どんなときにイライラします?

フェリックスさん:男性だけのロッカールームトークになると、普通にエロい話になりますね。それも女性を見下しているような。みんな周りに女性がいるじゃないですか。母親だったり、娘だったり、同僚の女性や妻もいます。なのに、なんでこんなに女性に対してリスペクトがないのだろうと。 ではなぜ私が(Lean Inの活動を)やらないといけないかというと、やっぱりそういう男性って女性の話を聞いてくれないんですね。だからこそ、Lean In Tokyoに男性がいる意羲がすごくある。男性が男性に違う生き方を見せることに、大きな意味があると思っています。

中野優太郎さん

中野優太郎さん「少数派って発言しにくいんだなと感じました」

小山さん:私はドイツで育ち、日本に来たのは1年と少し前なんです。ドイツでは女性はけっこう強いです。自信を持っている。キャリアをつくりながら子どもの面倒をみられることが大事なので、政府や会社がシステムを作り、社会がそのシステムを受け入れて進歩しています。日本に来てみると(キャリアと子育ての両立が)それほど普通ではないし、社会でもあまりよく見られてない感じがします。

あと、例えば会社の飲み会で男性が、女性の体型とかスタイルに失礼なコメントをします。ジョークという場合が多いのかもしれませんが、ドイツで同じことをしたら、犯罪なんですよ。女性の前では絶対にアウト。日本ではみんな笑うんです。笑いながら飲んでいました。

どう考えてもボディタッチはなし

——女性も?

小山さん:女性も笑っていましたが、私は男性として、女性の考えがあまり読めませんから。そこも男性がもっと女性のことを考えて、本当はどう思っているのかを知って行動してほしいですね。

フェリックスさん:それよくありますよね。職場の飲み会などで、女性が体型を褒められるのがオッケーなのがすごく不思議。

——仕事の能力ではなくて ?

フェリックスさん:欧州でそんなことをしたら、普通に「は?」ってなります。あくまでプロフェッショナルとして付き合っているのであれば、そういうことは絶対に言わない。あと、日本の飲み会でよく見かける、おじさんのボディタッチもよくわかりません。

ワーグナー・フェリックスさん

ワーグナー・フェリックスさん「あくまでプロフェッショナルとして付き合っているのであれば、そういうことは絶対に言わない。」

青野さん: 私の職場では、そういう状況はほとんどないですね。ハラスメントに対しては、かなり厳格です。むしろ、男性上司の気遣いが過剰なために、チームがなかなか打ち解けられず、かえって働きづらく感じてしまう女性の声を聞くこともあります 。

松木さん:そうですね。女性の少ない会社なので、そういう機会自体が少ないんですけれども。居酒屋へ行ったとしても、外見の話って絶対にしない。どう考えてもボディタッチはない。

——どんなボディタッチ?

小山さん:こういうふうに(肩を抱く様子)。居酒屋でよく見かけますが、これって本当に普通なのかな?と思ったんです。

「女性だから」という過度の一般化

青野さん:(Lean In Tokyoに参加した理由として)私はもともと性別だけではなく、学歴や職業、国籍や人種、宗教などのいわゆる属性によって、その人の内面を過度に判断することに、抵抗があります。女性の活躍はその中で、1番インパクトが大きく、かつ実現可能性が高いものです。人数が単純に2分の1ですし。基本的には少しずつ改善の方向に向かっていて、もう一押しでだいぶ変わる。だからこそ、微力でも前向きに変わるお手伝いができれば、すごく意義のある活動だと思っています。

私は中学、高校の頃、けっこうな劣等生だったんです。それでも自分を変えて大学に行きたいと思って、初歩の初歩から勉強を始めたんですよ。そうしたら、周りが『お前どうせ頭が悪いんだから、そんなことやったって時間の無駄じゃない?』ということを、すごく言ってくるわけです。これは頭にきたし、とても辛かった。

過去や属性だけをみて「お前にはできない」と決めつけてくる。同じ構造が今の社会における女性にも当てはまると思います。大した根拠もなしに、『女性ってロジカルシンキングが弱いよね』みたいなことを言う人がいる。 ロジカルシンキングなんてトレーニングの質と量さえ伴っていれば、誰だって身に付くはずです。にもかかわらず、『女性だからできない』という発想は、あまりにも思考停止じゃないかと。女性だからという過度の一般化ではなく、一人ひとりの個性に目を向けて、もっと個人に向き合うべきと思っています

なぜ男性は、女性を応援しづらいのか

——日本では若い男性で、女性の活躍を応援したいというのは珍しく感じます。Lean In の活動を言いにくい雰囲気や、余計な目で見られないかといった心配ってありますか。

松木さん:実際言われますよ。友達から冗談交じりに『変な宗教入ってんな』とか。耳障りなので、あえて(Lean In の活動を)強く公表はしてないです。会社にも、自分からは言っていないです。やっぱり風当たりはありますね。

青野さん:私のいる会社では、ダイバーシティ推進の文脈で、女性の活躍は盛り上げるべしと言われているので(Lean Inの活動についても)表立って否定できる人はいません。しかし残念ながら、否定的な雰囲気はゼロではありませんね。男性陣が女性を『脅威』に感じているからなのかもしれませんが。

小山ヒロさん

ヘルフェルト-小山ヒロさん「お前男でしょ?なんでそこに参加するのと言われることも」

——脅威ですか?

青野さん:脅威です。男性は本当に女性と対等な立場で、同じ仕事に向かったときに、自分は女性に負けてしまうんじゃないかという意識や、新たなライバルが増えることに対して、本心としては怯えているような側面もあるのでは。

鈴木さん:Lean Inメンバーで、女性でも会社に言えない人がけっこういます。私自身も、夫が会社ですごくLean In Tokyoをプロモートしてくれているのですが、時々『あんまりやりすぎないほうがいいよ』と言ってしまって。 もしかしたら彼が変な目で見られたり、そういうのをよしとしない人もいたりするかもしれない。そこで仕事に差し触りがあったらどうしよう、と思ってしまいます。そういう1人の女としての気持ちもあり、一方で(Lean Inの活動を)やってほしいという思いと、すごく葛藤があります。

あと男性にLean In Tokyoを説明する際に、相手が全く知識がない場合は女性活躍の4文字を言ってしまうと強すぎるので、Facebookのシェリル・サンドバーグが…というところから入ります。自分でもそこはすごく気をつけているなと、今、思いました。

——鈴木さんの夫のフェリックスさんはどうですか。そう言われて。

フェリックスさん:私は上が何を考えているか、あんまり考えていなくて。そういうのって心配してもしょうがないじゃないですか。とは言っても、週末何していたの?と聞かれたときに、Lean In Tokyoの活動について初めて言い出すのはちょっと勇気が必要でした。周りはみんな男性なので、これって興味持ってもらえるのかなと。そこは気にしていたのですが、話すたびにすごく楽になってきて。かつ、私の会社もダイバーシティを推進しているのもあって、いろんな方からサポートしてもらえています。今はもうみんな、私がLean In Tokyoやっているのを知っていて、今は社内でももっと何かできるんじゃないかと、積極的に発言しています。Lean In Tokyoで勉強したものを実際にアウトプットしています。

青野巧弥さん

青野巧弥さん「もう一押しでだいぶ変わる。だからこそ、すごく意義のある活動だと思っています」

他のメンバー:「それはすごいな。両立しているよね」「うらやましい」

小山さん「私もコンサルティング業界ですので、そういう女性の立場や平等性を強めたいと話しても、誰にも悪く言われない。ただ、一般の人と話すと『お前、男でしょ、なんでそこに参加するの?』ということはある

——日本人ですか。欧州でも?

小山さん:国に関わらず、理解しない人はやっぱりいます。でも、欧州の方がサポートしてくれる人の数が多い。それに比べると、日本では『ヘン』と思われることが多い。社会システムはあって、会社も男女平等をもっと推進して優秀な人材を得たいという、経営層の意識はある。ただ、下に行くほどまだその意識が高くない。制度があって実行させるのが難しいという。そこをもっと変えたい気持ちはあります。

松木さん:さっきロッカールームトークの話がありましたが、自分はそれにはあまり嫌悪感はなくて。女性は女性で、給湯室トークをやっていますよね。自分は母子家庭で姉も2人いる中で育ったので、女性の生身の姿も家で見ているので。 ただ、組織になると、やっぱり大多数が男性になると発言もしづらくなるのかなと。個人的には女性が劣っているという感覚は全くないけれど、どうしても出産や子育てがあると、そこに行きつくまでのプロセスがすごく大変で、途中で諦めてしまう女性もいる。日本社会では出産子育てを経て活躍するのは、本当に一握りだなという感触はすごくあります。

——学生である中野さんの周辺はどうですか?

中野さん:社会のことを知らないからだと思うのですが、いまだにやっぱり男が働いたほうが、経済生産性が高いと考えている学生がいます。あともう1つは、多分よくわからなくて、男子学生が『(自分は)ちょっといいかな』と、とりあえず避けるのはありますね。働いていないから、当事者意識を持てないというか。そこは僕も理解ができます。確かに怖い。Lean In Wasedaっていうのを立ち上げてやってるんですけど、やっぱり僕以外、全員女性です。12人いて僕だけ男性。

乗り越える働き方の工夫

——今後、何が変化のきっかけになると思いますか ?

フェリックスさん:優秀でキャリアも積んでいても、じゃあ管理職に行けるか社長になるかみたいな話になると、周囲の女性は『絶対無理』となります。一方、私にしてもそうですが男性は、なりたい、なりたくないかは別にしても『絶対なれる』という自信はあるんですよ。女性にそうした自信を持ってもらうためには、数だけ増えればいいっていう問題ではないと思います。

鈴木伶奈さん

鈴木伶奈さん「1人の女としての気持ちと、活動をしてほしいという思いとの間に葛藤があります」

鈴木さん:ティッピングポイント(臨界点)と言われているのは35%。それより増えると、女性が1人の個人の意見としてやっと認められる人数って言われています。35%以下だと、個人ではなく女性代表の意見として捉えられてしまう。人数というのは、やっぱり大切ですね。就活の段階で、コンサルや金融の総合職なんて絶対に無理だと思った、という女性は少なくないです。自信という意味ではロールモデルも必要かもしれません。

——女性があえて、トップクラスの大学や大企業にいかないという風潮もありませんか?

小山さん:ドイツでは、いい大学に行くのも女性はまったくバリアを感じていないですね。むしろ、トップ大学では半分以上女性です。ですからそこは全然感じていないと思います」。

青野さん:日本は働き方の問題だと思います。重要なのは、妊娠・出産・育児といったライフイベントがある中で、どうやって女性のキャリアの連続性を担保するか。(出産や子育てで)連続性が切れてしまうということは、当然大きな仕事に就きにくいとか、責任のある立場が任されにくい面があると思います。

例えば、チーム戦で仕事を共有したり、時短勤務でも平等に評価されるように時間あたりで成果を測るなどの施策はすぐに実行できます。投資は必要ですが、テクノロジーを使って、リモートで仕事ができるような環境を整えることも効果的です。働き方の工夫みたいなものが敷かれれば、もう少しチャレンジしてみようという意欲を、実行に移せる女性が増えていくはずです。

松木さん:重要なのは(男女共に)お互いの長所と短所をよく理解することだと思っています。これはちょっと偏見もあるかもしれませんが、一緒に活動していても、気がつかなかったところに気づいてくれるなど、女性は多角的にモノを見ているな、と。逆にどうしても、力業で押さなきゃいけないときは男性のほうがいいかなと。そこら辺は本当にうまく組み合わせてやったほうが、絶対にいいアウトプットが出るし、作業効率関係も上がるなと思っています。

小山さん:コンサルティング業界は、比較的、労働時間が長い業界として知られています。そんな業界でも、私の会社では、ひとり、子どもが2人いるのですが、毎日5時に帰る女性がいます。しっかり時間内に仕事をしているから、自信をもって5時に帰っています。周りは彼女に本当にいい刺激をもらっています。彼女をみると、日本も良い方向に進み始めていると感じます。

(撮影:今村拓馬)

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