物事には必ずきっかけというものがある。好きになるきっかけ、嫌いになるきっかけ…。
そこかから何かが始まることもあれば、終わることもある。
私がウィスキーを美味しいと思ったことにも、あるきっかけがあった。それまではウィスキーに味の違いがあることが信じられずにいたものだ。
今思うと、あの味は私にとって大きなきっかけだった。今の店に勤めだして半年ほどたった頃だっただろうか。その日、いやいや参加したウィスキーの試飲会での出来事だった。当時は、なぜ同じ味しかしないウィスキーをわざわざ飲み比べる必要があるのか、面倒で仕方なく思っていた。
『クライヌリッシュ23年』
一口飲んで衝撃を受けたことを、今でも覚えている。それまで飲んできたウィスキーとは全く違う味がした。私は一口でこのスコッチウィスキー、クライヌリッシュに恋をした。その日を境に、猛烈にウィスキーのことを学び始めた。そして今日に至るのだ。
少々、面倒な話になるが、スコッチウィスキーにはオフィシャルボトルとボトラーズボトルというものがある。元の蒸留所から樽ごと購入し、会社独自の処理をして瓶に詰めたもの。これがボトラーズである。
蒸留所が販売するオフィシャルボトルの種類には限りがある。しかし、ボトラーズボトルを含めると、銘柄ごとに数え切れないほどの商品が存在するというわけだ。
クライヌリッシュにもオフィシャルボトルとボトラーズボトルがある。
長年ウィスキーを扱ってると、いろいろな話を聞く。そしていろいろなウィスキーを飲む。
その中で、クライヌリッシュに限っては「口に合わなかった」という感想を耳にしたことがない。もちろん、私も思ったことはない。どのクライヌリッシュでもだ。
クライヌリッシュは決して人を裏切らない。
秀逸すぎるスコッチウィスキーなのだ。ベースがしっかりとしているからなのであろうか。
それでも、時にはちょっと違った表情のクライヌリッシュも体験したいと思うこともある。好き嫌いがはっきり分かれるようなパンチのある風味も体験したい。
こう思うのはマニアックなのだろうか。しかし、それが何かのきっかけとなるのかもしれない。