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 裁判員裁判で市民裁判員が下した一審判決を、プロの裁判官のみで審理する高裁(控訴審)判決で破棄する割合(破棄率)が高まっている。2016年に控訴審を終えた376人中、約13%の49人で一審が破棄された。10年と比較すると約8・4ポイント上昇した。裁判員制度は21日で開始から8年。市民感覚が反映された一審判決を、控訴審でどこまで尊重すべきかが課題となっている。(田中宏樹)

 最高裁の司法統計によると、裁判員裁判の控訴審での破棄率は、10年が4・6%。11~13年も1桁台だったが、14年に11・3%、15年には14・2%にまで上昇し、16年は約13%だった。一方、一審が通常裁判の控訴審判決では、11~15年の破棄率は9%台で推移し、16年は11・2%に上った。

 最高裁の司法研修所は裁判員制度スタート前年の08年、「裁判員による判決を二審もできる限り尊重すべき」との見解を示しているが、控訴審での破棄率は、14年から3年連続で通常裁判を上回っている。

 今年は大阪高裁が3月、神戸市の小1女児殺害事件の君野康弘被告(50)と大阪・ミナミの通り魔殺人事件の礒飛(いそひ)京三被告(41)に対し、裁判員裁判で審理された一審の死刑判決をいずれも破棄し、無期懲役とした。控訴審は計画性の程度や従来の量刑との公平性を重視した。

 甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「市民の良識を生かした判決を積み重ねるのが裁判員制度導入の目的だった。裁判官が従来の判例や量刑を優先し、裁判員の判断を尊重する考えを失っているのではないか」と指摘する。

 一方、裁判員制度に詳しい関西学院大法科大学院の丸田隆教授(英米法)は「控訴審判決は高裁が適正な手続きで一審判決を是正したもの。裁判員による判決の破棄率が高いのは、一審の判断を軽視しているのではなく、司法制度として正しく機能した結果と言える」と話した。

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