*この物語はフィクションでありファンタジーであり実在の人物団体変態とは一切関係ありません。って文言すごい便利で無責任で打算的。
納豆の薄いビニールを剥がした時にビニールに納豆が一粒も残らなかった。今日は良い日かもしれない。だけどメーカー側の企業努力のおかげなのかもしれないし、単に私の納豆ビニール剥がし技術の向上に由るものかもしれない。
ってどうでもええわ。しかしどうでもよくない。ビニールに納豆の粒が残るといつも、ああ、ちょっともったいないかな、剥がして食べようかな、でもこれくらいならええかな、棄てようかな、どうしようかな、ってそんなみみっちい事で葛藤、逡巡する自分が惨めで情けなくなり、三島由紀夫を読みたくなり、三島由紀夫を読んだらますます自分が惨めで情けない気持ちになり、雨の中タンクトップ一枚で家を飛び出して河原で対岸に向かって長渕剛を熱唱したくなる。
そんな事になったら、風邪を引いたり、世間から白眼視されたり、カラスに阿呆、阿呆、阿呆、お前はやっぱり阿呆だな、お前みたいな阿呆は生まれてくるべきじゃ無かった、などと言われる幻聴が聴こえてきたり、死にたくなったりして、松任谷由実の「ハローマイフレンド」を歌いながら特急電車に飛び込んでしまうかもしれない。
そうなると私はバラバラになるし、バラバラになった私を拾い集める人や電車が止まった事によるダイヤの乱れにより多くの人に迷惑がかかり、その責任を追及された遺族にも迷惑がかかる。
だからたかが納豆と思って甘く見てはならない。私は情動が内に向かう性分だし、なんらの武力も権力も保有していないからまだよいものの、どこかの国の長なら納豆がビニールに張り付いたとき「むむむっ、むかついた、ええーい、おかめ納豆!!」と言いながらミサイル発射ボタンを押下して、世界がバラバラになってしまうかもしれない。
そんな危ういこの世界で、雨の中、野良猫が発情期特有の鳴き声を発している。
わおーん、わおーん。
ハロー、マイフレンド。
僕が生き急ぐ時には、そっとたしなめておくれよ。