公文書管理法 「廃棄」の抜け道をふさげ
国の活動を現在と将来の国民に説明する責務が全うされるようにする―。行政機関の文書の作成や整理、保存、廃棄などの基本事項を定めた公文書管理法の目的だ。
学校法人森友学園に国有地が格安で払い下げられ、財務省が当時の交渉記録を「廃棄した」としている問題は、法が骨抜きになっていることを浮き彫りにした。行政の裁量で公文書を廃棄できる余地を残していては、国民への説明責任は果たされない。
6年前に施行された同法は、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置付けている。ただ、保存期間については「行政機関の長が設定する」としているだけで、具体的な基準を示していない。
このため、各省庁が内閣府のガイドラインに沿って「規則」で文書の種類ごとの保存期間を定めている。
財務省の場合、国有財産売却時の決議書は最長の30年と設定。だが、交渉や面会の記録は保存期間1年未満の「その他の行政文書」に分類している。決定に至る過程は軽く扱われていることになる。「決定」と「過程」をセットで残さなければ、問題が起きたときに検証しようがない。
そもそも、1年「未満」という設定は保存期間としての意味をなさない。いつ廃棄してもよいからだ。実際、財務省の理財局長は「事案の終了(売買契約締結)とともに速やかに廃棄した」と国会で答弁。払い下げ問題の真相解明の壁になった。
公文書の管理を巡っては、南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報も問題になった。防衛省の規則で、やはり保存期間1年未満に分類され、情報公開請求に対し「廃棄済み」と答えていた。実際には電子データで保管されていた。
「1年未満」が、国に都合の悪い文書の隠れみのになっている。そう言われても仕方がない。
社会保険庁(当時)の「消えた年金記録」や薬害肝炎の患者リストの放置、インド洋で給油活動をした自衛艦の航海日誌の無断廃棄…。ずさんで恣意(しい)的な文書管理が次々と発覚したのを契機に公文書管理法は制定された。情報公開法と車の両輪になって、行政の透明度を高めると期待された。
今回の「廃棄」問題は、法制定でもなお教訓が生かされない現実を映し出した。公文書が真に「国民共有の資源」となるよう法と運用を検証し、改めるべきだ。
(4月8日)
学校法人森友学園に国有地が格安で払い下げられ、財務省が当時の交渉記録を「廃棄した」としている問題は、法が骨抜きになっていることを浮き彫りにした。行政の裁量で公文書を廃棄できる余地を残していては、国民への説明責任は果たされない。
6年前に施行された同法は、公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と位置付けている。ただ、保存期間については「行政機関の長が設定する」としているだけで、具体的な基準を示していない。
このため、各省庁が内閣府のガイドラインに沿って「規則」で文書の種類ごとの保存期間を定めている。
財務省の場合、国有財産売却時の決議書は最長の30年と設定。だが、交渉や面会の記録は保存期間1年未満の「その他の行政文書」に分類している。決定に至る過程は軽く扱われていることになる。「決定」と「過程」をセットで残さなければ、問題が起きたときに検証しようがない。
そもそも、1年「未満」という設定は保存期間としての意味をなさない。いつ廃棄してもよいからだ。実際、財務省の理財局長は「事案の終了(売買契約締結)とともに速やかに廃棄した」と国会で答弁。払い下げ問題の真相解明の壁になった。
公文書の管理を巡っては、南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報も問題になった。防衛省の規則で、やはり保存期間1年未満に分類され、情報公開請求に対し「廃棄済み」と答えていた。実際には電子データで保管されていた。
「1年未満」が、国に都合の悪い文書の隠れみのになっている。そう言われても仕方がない。
社会保険庁(当時)の「消えた年金記録」や薬害肝炎の患者リストの放置、インド洋で給油活動をした自衛艦の航海日誌の無断廃棄…。ずさんで恣意(しい)的な文書管理が次々と発覚したのを契機に公文書管理法は制定された。情報公開法と車の両輪になって、行政の透明度を高めると期待された。
今回の「廃棄」問題は、法制定でもなお教訓が生かされない現実を映し出した。公文書が真に「国民共有の資源」となるよう法と運用を検証し、改めるべきだ。
(4月8日)