3 Lines Summary
- ・虚構を報じる上でのこだわりは「笑えるか」の一点のみ
- ・“誤報”による謝罪記事が長いのは、真摯に読者に向き合うため
- ・誤報対策として「一歩先」でなく「二歩先」までを考える
現実ではあり得ない世界を報じる続けるネットメディア「虚構新聞」。報道は真実を追求していくことが信条なはず。それにもかかわらず、2004年以降、これまでに1000以上の虚構記事を配信してきた。そこには一体何があるのか? 社主のUK氏にインタビューした。
虚構を報じるこだわりは「笑えるか」の一点のみ
−−なぜ虚構を報じるのですか? そのこだわりはどこにあるのですか?
それは単純に「笑ってほしい」という一言に尽きます。風刺画やシュール、ベタなものとか記事のパターンはいろいろありますけれども、結局そこに達するための通り道としてあるわけで…。最終目標は「笑えるか」なのです。「読者がおもしろいと思ってもらえるものを書く」というのがこだわりという感じです。
−−「笑えるかどうか」の判断は難しいはず。そのさじ加減はどうしているのですか?
完全に個人の判断でやっているので、ラインの見極めは難しいです。ただ、実際に存在する企業などについて報じるときは、その相手はきちんと見ています。例えば、過去にSHARPさんとかauさんなどの虚構記事がありますけれど、こういうのに寛容な企業だと分かった上で、これくらい書いても受け止めてもらえるだろうと考えて紹介しました。
逆に言うと、相手が見えないところには書かないですね。森永さんのところも、以前に「イルカの『おっとっと』がシーシェパードの抗議でなしになる」という記事を書いたときに、森永DARS(ダース)のTwitterの人が「DARSでも書いてほしい」とつぶやいていました。そこで「これはお墨付きをもらったな」と「DARS(ダース)がGROS(グロス)になった」という記事を書いています。
そんな思惑のなかで報じた記事も時には誤報(虚構新聞でいう誤報とは、報じた内容が真実となってしまうこと)となることがある。これについて、きちんと謝罪訂正を行ってきている。
“誤報”による謝罪記事が長いのは、真摯に読者に向き合うため
−−真摯に誤報を受け止め、謝罪と経過報告をしている理由はどうしてですか?
これは一般的な報道に対するカウンター的な意味合いがあります。虚構新聞では、謝罪記事をすごく長く作っているんですよね。通常の報道の場合、誤りだと分かっても、訂正記事になった途端にすごく小さいスペースで済ませてしまう事が多いですよね。例えば、紙面で数ページに渡って大きく取り上げたニュースでもです。
イチ読者の立場として見た場合、「なぜそういう間違いがあったのか?」というのを絶対知りたいはずなんです。「責任がどこにあるのか」というのも知りたいんですけども、そこがはっきりされないまま「もう訂正します。お詫びします」で済せちゃう部分に疑問を感じていました。そこが以前からちょっとおかしいなと思っていたので、自分で報じる際にはきちんと訂正謝罪をするようにしたのです。
最近は誤報がないですけれど、あった場合は必ず詳細を、時系列でどういうことがあって「現実」になってしまったのか、そして、なぜこのような記事を書いたのか。さらには処分の内容と処分、半分はジョークですけども出しています。これは読者からみると、真摯に謝っていると受けとってもらえているみたいで、信頼につながっているようですね。
誤報対策として「一歩先」でなく「二歩先」まで考える
−−その誤報ですが、2015年の10月以来出ていません。何か対策を取るようになったのですか?
2016年は誤報を出したくなかったので、ちょっと考えました。今あるパターンとして、例えば虚構新聞で企業に関する事柄を報じると、それに応える形で企業が実現させてしまうことがある気がするんですね。 出来レース的になってしまうのが好きではなく、ハプニング的に起こるから楽しいという思いがあるんです。そこで去年は、あまり相手が乗ってしまいそうな虚構は書かないでおこうと決めていました。
あと最近は特にAIなどが発展してきて、今までだったらSFの世界になっていたものがすぐに現実になる時代です。一歩先じゃなくて二歩先くらいまで考えるようになりました。
「AIが何かした」という記事だと実現するので、例えば、自動運転の自動車の報道として、「自動運転車が急に停まる事案が増えてきた。その理由は、自動車に乗っている人が運転しないことをいいことに怠けることから、知能がついた自動車が『ちょっとは歩け』という風に人を降ろすようになった」とか、こういう記事が増えました。
だから、50年後くらいには謝罪記事を出さないといけないかもしれないですけれど、当面は大丈夫だと思っています。ここには気をつけていますね。
10年以上に渡って虚構の世界を報じ続けるUK氏。長年続くのは、「笑えるのか」というシンプルな思いと、誤報に対する真摯なまでの姿勢があるのだろう。
文=重野真
【特集「エイプリルフールに「ウソ」を真剣に考える」】
第1回 人が嘘を信じるワケ。そして騙されないように気をつけることは?
第2回 「人間は嘘をつく生き物」…澤口俊之氏が明かす嘘を言うメカニズム
第3回 『ウソを報じ続ける』虚構新聞のコダワリ(この記事)