INTERVIEW:
ラッパ我リヤ
四半世紀に近いキャリアを誇るヴェテラン・グループのアルバムに対してこの言葉が相応しいかは分からないが、ラッパ我リヤの新作「ULTRA HARD」は、とにかく「若い」。
それは“原点回帰”や“フレッシュ”とも近い感触であるが、マイクに齧りつくかのようなタフなスピット・ラップに、とにかくデカい声、“口気持ち良さ”が重視されたフロウとライム、火の出るような熱いスクラッチ、そしてロッキッシュな感触が中心になったビートの組み合わせは、とにかく理屈や理論を超えたような、単純な快感原則に貫かれた“若さ”を感じさせられる。そして、その無防備なエネルギーこそラッパ我リヤの魅力のひとつだろうし、このアルバムは徹頭徹尾、その「若い」エネルギーに溢れている。
年齢が若いことだけが若さではない。フレッシュで如何にエネルギーを放出できるか、その意気込みを問いかけられるような熱すぎる作品だ。
■前作「MASTERPIECE」から今作までの間は、我リヤのヒストリーからすると8年という最長の“ブランク”が空きました。
山田マン「でも、そんなに空いたかな?って感じなんだよね。我リヤとして最低でも月イチはライヴをやってたし、我リヤとしての制作も実はずっと動いてはいて。それぞれソロでも動いていたから、サボってたわけでも引っ込んでたわけでもないし、『そんなに経ってたのか』って」
Mr.Q「このアルバムに向けてビートも300曲以上集めてたし、リリックもラップもコンスタントに録ってはいたんだよね」
山田マン「ただ、そんな中で東日本大震災が起きてしまって。震災の3〜4日前には降谷建志(Dragon Ash)のトラックで新曲を作ってて、それが昔に発売されてたパナソニックのオーディオ機/ヘッドフォンを題材にした“SHOCK WAVE”って曲だったんだ。『衝撃の波が脳天直撃』っていうラップから始まるスゲェ格好良い曲が出来たし、そのままアルバムまで進めようって話になってたんだけど、震災が起こってしまって、とてもじゃないけどこの内容では出せないな、って。それで、アルバムの完成に進むタイミングを逸してしまったんだよね。個人的にも父親の介護があったり、バイクで事故って入院したりっていう、制作に向かうのが難しい状況にもなってしまって」
■活動的には止まってはいなかったけれども、状況的にハードだった、と。
山田マン「アーティストとしても職人と化してたよね。研究室でひたすら研究してしてたような感じだったから、傍から見たら『何やってんだ?』って感じだったと思うな」
■2015年の“MORE FIRE!”のフリー・ダウンロード・リリースや、2016年にQさんが『フリースタイルダンジョン』に出演したりといった、我リヤの次の展開を感じさせる動きもありましたが、同時に16年にQさんがラップCMを制作された際は、山田マンさんがその動きを批判するYouTubeをアップされましたね。正直、そこでもう我リヤとしての動きはもうないのかな、とも邪推させられました。
山田マン「『Qの代わりは誰もいない』、そう思ったからあの動画を作ったんだ」
■すごい信頼感ですよね。メンバーの動きに対して「それはそれ、これはこれ」で割り切って関わるんだったら、あの動画は作らないわけで。
山田マン「夫婦より長いからね、この関係性は。怒ってくれる人もキツイこと言ってくれる人も少なくなってるから、違うと思ったらメンバー間で言い合わないと」
Mr.Q「我リヤは決して順風満帆ではないからね。だから、その悔しさも乗っかって凄まじい勢いが出てると思う。“My Way feat. Kj (Dragon Ash)”の歌詞の通りさ。リアルだよ」
山田マン「そういった、そのときそのときの積み重ねによって、気持ちをこのアルバムに高めていけたと思う」
■前作「MASTERPIECE」を振り返ると、すごく“マトモ”な作品だったと思うんですね。押韻重視の曲もあれば“MY GIRL”のようなラヴ・ソングもあり、状況を映したような曲もあって、ビートもその当時っぽい感じに寄せたり、バランスの考えられた、“理屈”で考えられた作品だったと思います。
山田マン「ラヴ・ソングのレコーディングとかイヤでイヤで仕方がなかった記憶があるな」
■その意味でも、イメージのすり合わせが上手くいってなかったんだと思うし、それによって「我リヤ的な破壊力」という部分では弱まった作品だと、正直に言えば思います。ただ、今回はそういった「意味性を考えた構築度」よりも、シンプルにカッコ良い、とにかくブチ上がるという「単純なラップ強度」。もっと言えば「我リヤ強度」が今回の作品の肝になっていて、「我リヤとして気持ち良いこと」しかやっていないアルバムだと感じて。
DJ TOSHI「その意味では、作品全体が前作のカウンターかもしれない」
Mr.Q「今回は、自分たちでも曲毎の解説は難しい。例えば、『これはラブ・ソングで……』とか、『これはこのときの経験を元に……』とかって話じゃないから。最近、自分が思ってた以上に『聴いてました』って過去形で言われることが多くて。だから、『どの辺(の時期)で聴かなくなったの?』って興味も含めて訊いちゃうんだけど(笑)」
山田マン「“ヤバスギルスキル”のパートいくつで聴かなくなったかがバロメーターだよね(笑)」
Mr.Q「その意味でも、そこで聴かなくなった潜在的なファンを引きずり出すには、俺たちのこれまでのオールタイム・キャリアの中で注目された理由、表現してきた俺たちの凄味をとにかく出そうと思ったんだよね。同時に、俺たち自身がオールタイムで好きなことも詰め込もうって」