通信販売王国を一代で築き上げたジャパネットたかた前社長の高田明氏。テレビ通販の顔役で「スター経営者」でしたが、きっぱりと身を引きました。その後を引き継いだ長男の旭人社長は、偉大な父でありカリスマ経営者の引退をどう受け止めているのか。「90秒にかけた男」の番外編として、創業の時代から変わりつつある今のジャパネットの経営や悩みを旭人氏につぶさに語ってもらいました。
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――父親の明さんから2015年に社長の座を引き継ぎました。
「社長のポストを継いで2年になりますが、基本的には言いたいことは山ほどあるのだけれど言ってはダメだと、我慢してくれている感じですね。社員の中にもそれを感じている人はいると思います」
「創業者が退けば商品周りの力は落ちることは明白だったので、それをカバーする戦略、仕組みを充実し、もともと実行しようとしていた企業統治(コーポレートガバナンス)の効果によって業績をカバーできているのかと受け止めています。ここからさらに上に伸ばすには、伝える力やMC(番組進行役)の力を付けていかないと、いつか苦しくなるかなぁと思いながら、今はもがいている感じです」
「組織論で言うと、従来の文鎮型の組織から、天辺(てっぺん)にいた人が抜けました。放っておいたら、そこに私がスポッと入るだろうと皆が思ってしまう。だから箱の形(組織)を大きく変えました。15年に持ち株会社制度を導入して分野・事業別に6子会社がぶら下がる仕組みにしました。その際に4人しかいない役員を9人に増やし、少なかった部長職も20人ほどに増やしました」
「しかし、なかなか思った通りにならない部分もあります。その一つが人材管理。今まで部長でなかった人が部長に急に上がっても、部長の仕事を知っている人がいないので、部長はどこまでやるんだろうということを当人たちももがきながらやっている。私がそこをサポートしています。ただ、父が絶対的な存在として皆を引っ張っていた時と違い、少しずつですが、自発的な社員が増えてきて、それが心地よい変化ではあります」
――社内の文化も変わりつつあるようですね?
「創業者がいなくなって強烈な何かが必要になるのがわかっていたので、中身を変えました。社員の数を増やしました。創造的な仕事ができるよう、休みも増やしました。よく社員に、『言い訳をできないようにするのが僕の仕事だ』と言っています。人が足りないなら増やすし、体力的にきついと言うのであれば、きちんと休みを取ってもらえるようにします」
「残業で乗り切る仕事の仕方も強制的にできなくしようと思って、以前は時には日付が変わるまで会社に残って仕事をしていたこともありましたが、今は午後8時半以降に会社に残るのは一切禁止しています」
「全く残業をしないノー残業も水曜日と金曜日に設定し、午後6時半には会社から追い出します。社員の入退社を管理するセキュリティーカードをチェックしているので、本当に6時半以降は居残れないのだということが、皆にも浸透してきました。残れないことがわかって、仕事の段取りを考え出す人がやっと増えてきたかなという感じです」
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