» 前回:観察すること | Aliice pentagram
前回は、知的作用の第二要素である「観察すること」について考えてみました。今回は、第三要素である「言葉を定義すること」について書いてみます。
言葉と知的作用
思考は言語で成り立っています。私たちは、言葉を使って考えるのです。
そもそもとして、「言葉を使うこと」だけでも知的な作用は発生しています。もし火星人が地球に降りたって、何かしらの言葉を発し始めたら、それは「知的生命体」と呼ばれるでしょう。その生命体の「知的さ」を担保するものが言語活動なのです。
私たちはごく当たり前にそれを行っているのでなかなか気がつきにくいですが、言葉を使って意思の疎通をはかったり、心象風景を表現したりする行為は、それだけで十分に「知的」な活動と言えます。
そして、それを一層ディープに推し進めるのが、「言葉を定義すること」です。
言葉を定義する=世界を把握する
言葉は心象を固定し、概念を同定します。心(頭)に浮かぶものを、記号と対応させるのです。
私たちは幼少期に言葉を「覚え」ますが、それは辞書的な定義を暗記する行為とはまったく違っています。実際は、他者と共有できる意味を有する形で言葉を定義しているのです。最初は、人を乗せて運ぶ大きな乗り物すべてが「新幹線」と定義され、その後現実的経験とフィードバックの蓄積により、「電車」「飛行機」「トラック」という別の言葉が定義されていく中で、「新幹線」の意味が精緻化(再定義)されていきます。
新幹線であれば飛行機ではなく、飛行機であれば新幹線ではありません。言葉を定義することは、世界を知ることとイコールです。つまり、定義を増やすこと(≒語彙が増えること)と並行して、その人間の世界の知覚は広がっていくのです(あるいは精緻化していきます)。
結局これは、学者が現実的出来事を研究し、ある出来事が別の出来事と違っているので、それに新しい名前を与える行為と変わりありません。幼児から学者まで、共通して持つ知的作用が「言葉を定義すること」なのです。
そしてそれが、「考える」ことのベースとなります。
言葉と思考
言葉は情報です。知的生産の成果物も情報です。
つまり、知的生産にとって言葉は、素材でもあり、道具でもあります。
私たちは言葉を並べて知的生産の成果物を生成します。そして、その裏側では言葉を使って思考を組み立てています。執筆者が言う、「書きながら考える」は、この対応関係について言及したものです。
「考えること」に言葉が欠かせないからこそ、書くことは考えることに貢献できます。
これまで紹介してきた二つの知的作用との関連で言えば、すでに存在している言葉の定義に「疑問を持ち」、実際の現象を「観察した」上で、そこに新しいものが見出されるのならば、古いものと区別するために新しい「言葉を定義する」こと。あるいはすでにある言葉を、新しい意味を持って使うこと。どちらにせよ、新しいことを言おうと思うなら、新しい言葉が必要です。
この《新しい言葉》には、これまで存在しなかった新語だけではなく、新しい意味(文脈)をまとった既存の言葉も含まれます。どちらであっても、対応する言葉を持たない心象を表現するための記号が生まれ出たならば、それは《新しい言葉》と言えます。
その《新しい言葉》は、それ自身が一つの成果物でありながら、別の新しい概念を引っ張り出す触媒ともなりえます。その言葉によって、他のものを包括する説明ができたり、あるいはそれに触れた他者に、思考の刺激を与えたりするのです。そうしたダイナミズムが知的生産活動の面白さでもあるでしょう。
さいごに
何もないところから新しい言葉が生まれてくることはありません。それは真っ白い部屋に閉じ込められて、何一つ知覚刺激を与えられない幼児が言葉を覚えられない(≒定義できない)のと同じです。
新しい言葉を定義するためには、参与し、観察しなければいけません。そこで、今までになかった心象と巡り会ったり、すでにある言葉に違和感を覚えるからこそ、新しい言葉への欲求が高まるのです。それ以外は言葉遊びに過ぎません。
新しい発見があるからこそ、それに対応する言葉が生み出されます。ただし、言葉遊びで生み出された新しい言葉であっても、触媒的機能を有することはあります。先駆的に提示された言葉から、新しい心象が予見されるのです。嘘から出たまこととはちょっと違いますが、希望というのはまさに言葉によって示されるという点は覚えておいた方がよいでしょう。
言葉の力は実に奥深いものです。
▼今週の一冊:
村上春樹さんのこれまでの翻訳作品が紹介され、それぞれひと言コメントが付いています。あと、柴田元幸さんとの対談も面白いです。
Follow @rashita2
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▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
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