「耳に差し込まないイヤホン」は何が凄いのか

商品はスペックよりストーリーで売れていく

常に付けたままにしていても気にならない(写真:ambie公式サイト)

映画やテレビドラマには音楽がついていますよね。日常生活にも音を常に付きまとわせたら何が起きるか。たとえばロケーションを自動的に把握して曲が変わったら面白いかもしれない。これは、ストーリーですよね。

今大事なのはストーリーです。物を売るための従来の常識は、テレビコマーシャルなどの広告でスペックを伝えて、デバイスそのものを売ることでした。しかし、今は違う。これを使うとどれだけ面白いか、ドキドキするか。利用シーンを伝えるストーリーに共感してもらうことが大事な時代に入った。

ソニーでは商品化できなかった

――発売前、ソニーからはどのような反応がありましたか。

試作品を作った際には、「デザインが変わってるだけで、それほど売れないかもしれない」とか、「音質がよくない」「音割れしそうだ」など、いろいろ厳しいことも言われました。これを作ったのは、ソニーのオーディオ事業部にいたエンジニアの三原良太(ambie開発責任者)です。彼はソニー時代にもプロトタイプを作ったんですが、ソニー社内での評価は厳しかった。しかし、ambieは2月9日の発売初日から4日目で初回生産分が完売してしまった。今はWebでの「予約販売」という形を取っています。

「ながら聞き」という潜在的なニーズはあったのに、それに的確に答えている製品が実はなかったから注文が殺到したわけです。今、いちばん求められているのは、潜在的なニーズを発掘することじゃないですか。

――どうして、日本の大企業は、これを製品化できないのでしょうか。

ヘッドホンでいえば、今の日本のオーディオ業界はハイレゾリューションタイプ、いわゆる「ハイレゾ」に力を入れている。音のクオリティを高くすることを重視しているわけです。しかし、ambieはハイレゾに対応していないのはもちろんのこと、低音も貧弱なので、この分野の製品を評価するスペックだけでみれば三流品なんです。だから、ソニーにとってはあえて出すものではないし見合わないということで、切り捨てられてしまう。それはそれで、一理あるわけです。

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