(出所はWIKIパブリックドメイン画像)
もうすぐ3月も終わりますが、本年の初春には、各国で21世紀の移動手段を変える重要な取り組みが始まりました。「空飛ぶ自動車」の開発をめぐって1月~3月にいろいろな試みが始まっているのです。
日本のメディアはまだ、さほど注目していませんが、「自動運転」と並行して「空飛ぶ自動車」の開発競争が2017年に加速しています。
今日は、これに関連した早春のニュースを紹介してみましょう。
オランダ:PAL-V社「Liberty Sport」が4500万円で予約開始
3月2日にはフォーブス誌がオランダのPAL-V社が空飛ぶ自動車の予約受付を開始したことを報じています
同社の「Liberty Sport」は10秒で道路走行と飛行という二種類のモードを切り替え可能な「自動車」。折り畳み式のプロペラで空を飛びます。スペックは最高飛行高度:3500m、最高速度:時速180km。最大500kmの飛行が可能とされていました。
(世界初『空飛ぶ自動車』の予約開始 4500万円から、納期は来年末」3/2)
※<PAL-V社の動画URL⇒https://youtu.be/GfMNtCPChxo
特筆すべきは、運転には自動車免許と飛行機の操縦免許が必要なことです。
将来的には自動運転で空を飛ぶ可能性が高いのですが、現在では、飛行機が扱える人向けのマシンなので、希少品になっているわけです。
しかし、技術革新の歴史はお金持ちのための希少品を庶民が持てるレベルに大衆化してきた歴史なので、筆者は、21世紀中には「空飛ぶ自動車」も大衆が利用できるようになるはずだと考えています。
昔は貴族しか馬車に乗れなかったのに、現代では庶民が自動車を乗り回しているのですから、やがてはみんなが空を飛べる時代が来るに違いありません。
(※そのほか、空飛ぶ自動車で有名なのはterrafugia社。以下、イメージ動画)。
ヨーロッパ:エアバス社が17年内に試験飛行開始宣言
フランスに本社を持つエアバスは2月にCEO(トム・エンダース氏)が「空飛ぶ自動運転車」のテストを17年内に開始すると表明しました。ReadWrite誌(2017/2/21)はその中身として以下の3点を報じています(「エアバス『空飛ぶ自動運転車』、年内にテスト開始か」2017年2月21日、デイヴィッド・カーリー)
- "空飛ぶ自動運転車"を導入することで大都市の交通渋滞問題を緩和できる
- 橋や信号、コンクリート舗装の道路について悩む都市計画のインフラ予算を抑えられる
- エアバスは昨年、都市空中移動部門を設立。消費者が実際に乗るのは、2020年頃
タクシー的な感覚で空飛ぶ自転車を使うエアバスの未来構想はウーバー社のプランとも軌を一にしています。
エアバスは2016年時点で、空飛ぶ自動車の構想をHP上で公開していました(Airbus - Future of urban mobility)。
ただ、これにはドローンと同じく安全面での規制や、タクシー、バス業界等の抵抗があるので、政治と既得権の壁が薄い地域から順に具体化していくのかもしれません。
本年の夏にはドバイでドローンタクシー(100kgまで輸送可能)の実用化が始まることがテクノロジー系のネットメディアで報じられていました。
イスラエル:アーバン・エアノーティクス社「コーモラント」を2020年に市場投入
そして、ヨーロッパだけでなく、イスラエルでも、アーバン・エアノーティクス社が小型無人機「コーモラント」を2020年に市場投入することを発表しました(同社HP:動画URLはこちら)
東洋経済社の記事(2017/1/6)によれば、「コーモラントは昨年11月、初めての単独飛行に成功」し、「プロペラではなく内部のローターを利用して飛行するため、ビルの合間や電線の下をプロペラがぶつかるリスクなしに飛行できる」という特色を持っています。
この「コーモラント」に関しては、ニューズウィーク日本版(2016/11/22)の記事にスペックデータと前掲動画が紹介されています(【動画】イスラエル発の「空飛ぶロボットタクシー」、初の自律飛行に成功 高森郁哉)
- 全長:6.2m
- 幅:2.15m
- 胴体の下部に揚力を生むローター(回転翼)を2基。
- 後部には前方への推進力を生む小型のローター2基を搭載。
- 後部ローターを含めた幅は3.51m、車輪を含む全高は2.3m
- 機体重量:918kg
- 積載量:500kg超
- 最大速度:時速180km
- ペイロードが300kgの場合、400kmの距離を2.6時間で飛行可能
センサー群を用いて自律飛行を行うことや、イスラエルが軍事利用する可能性なども報じられていました。これが稼働したら、ヘリコプターの役割のうち、人員輸送等が代替されることになりそうです。
16年7月、イスラエルは世界に先んじてAI(人工知能)による自動運転車を陸軍で配備したので(毎日新聞8/23)、軍民をあげて空飛ぶ自動車の実用化を進めていくはずです。
21世紀には「飛行技術の大衆化」が実現する?
従来の車の開発競争とは別次元のイノベーションを目指す動きが各国で進んでいます。
2017年~2020年代初期に、空飛ぶ自動車も実用化され、まずは高値の希少品として市場投入されていくでしょう。
同時期に自動運転車も実用化が並行していきます。
まずは半自動運転。次に完全自動運転。完全自動運転が実現した後に、その技術が空飛ぶ自動車に転用されるとしても、空という異次元のワールドなので、実用化には一定の時間を要します。
ただ、21世紀の前半のどこかで、我々は、その技術の広がりを目の当たりにするのではないでしょうか。
20世紀の大きな技術革新の一つはモータリゼーションでした。
自動車の大規模な普及に続き、21世紀には、空を飛ぶ技術が大規模に普及することで、社会の仕組みが変わると思うのです。