弁護側「満額回答」 最高裁判決高く評価
誰にも知らせることなく、全地球測位システム(GPS)を取り付ける捜査は許されるのか。若手弁護士たちの率直な疑問に、最高裁大法廷は「違法」との結論で応えた。だが、容疑者を日夜追う捜査現場からは影響を懸念する声が漏れた。
「まさに満額回答。憲法や刑事訴訟法の理念に沿い、非常に踏み込んだ判断」。15日の最高裁判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見した主任弁護人の亀石倫子弁護士(42)は、大法廷の判断を高く評価した。
窃盗罪で起訴された被告の弁護人となったのは2013年末。「警察はぼくの車にGPS端末を付けた。こんなことまでできるのでしょうか」。接見で聞いた言葉に耳を疑った。大阪地検が開示した捜査書類にGPSの文字はなかった。確信を持てないまま指摘すると、地検は大阪府警に確認し、車やバイク19台に取り付けていたことを認めた。
「この被告の問題だけにとどまらないのでは」。権力の乱用を疑い、恐ろしさも感じた。自分と同様、若手5人とともに弁護団を結成した。GPS端末を取り寄せ、実際に車に取り付けて独自に実験した。端末を府警に貸し出した会社に照会すると、繰り返し位置を検索した膨大なデータが開示された。捜査の対象には、事件とは無関係の被告の知人も含まれていた。
「GPSを使えばプライバシーを無視した常時監視が可能になり、検索記録がどう扱われるかも決まっていない。規制するルールが必要だ」。弁護団の主張が固まっていった。
1審・大阪地裁は府警の捜査を「強制捜査に当たり令状がない捜査は違法」としたが、2審・大阪高裁は明確な判断を示さなかった。被告と話し合って上告を決めた。
大法廷は、現在の刑訴法で令状を取ったGPS捜査が許される余地をほぼ認めず、立法措置の必要性にまで踏み込んだ。弁護団の小林賢介弁護士(40)は「判決を読めば、ほぼ(現在の)検証令状でGPS捜査を行うことはできないと述べたと考えて良いのではないか」と顔を紅潮させた。被告は「GPS捜査が令状なしにできるのかどうか、はっきりしてくれて良かった」と感想を話したという。【伊藤直孝、飯田憲】