最初のデートで一時間半遅刻した。
しかも連絡もせずにである。
白金高輪から新宿に向う電車の中でiPhoneを家に置き忘れてきたことに気づいた。私は25歳だった。新宿で待ち合わせなのはわかっていたけど、新宿のどこなのかは知らない。駅に着いてから電話なりLINEなりでやりとりすればいいやと思っていたのが災いした。
とりあえず新宿に行ってしまおう。
間抜けな私の、最初の判断ミスである。言うまでもなく新宿駅は広い。とんでもなく広い。でもなんとなく会えるかもしれないという希望的観測で電車に乗り続けた。
当時、私のイメージでデート=おしゃれ=西口という勝手な図式があったので新宿駅西口に出た。一階のロータリー、いない。2階もいない。当然だ。いたらかなりの幸運である。
家に帰ってすぐさま連絡を入れるべきなのだが、私はまたも判断ミスをした。
公衆電話から、電話してみよう。
もちろん、相手の電話番号は知らない。電話番号を覚えないのも手帳にメモしないのも、現代あるある。
公衆電話を探した。それだけで何分も経過する。長い信号を待って新宿の大きな道路を渡り、やっと入った電話ボックスの中で気づいた。小銭がない!
私はまた道路を横断し、キオスクでお金を崩した。今度こそ。また何車線もある巨大な道路を横断し、同じ電話ボックスに入る。
さて、誰にかけるべきか。
といっても私が記憶している電話番号は実家の母のみである。とりあえず母に電話した。何もデートに遅刻していることを母に報告しようというわけではない。私には綿密なプランがあった。
まったく意味不明だと思うんですが、要するにこういう伝言ゲームである。
母→妹→同期Aちゃん→同期Tくん→デートの相手
「→」で繋がってるところは連絡先を知っているもの同士。こんなふうに伝達していけば、デート相手の電話番号がわかるだろうと思ったのだ。
私は真剣であったが、このプランはすぐに頓挫した。妹まではたどり着いたものの、同期AちゃんのLINEはなかなか既読にならない。待ってる間にキオスクで入手した10円玉も尽きてしまった。
ここまでに何十分もかかってる。
ダメだ、こんなんじゃ。
ようやく気づいた私はとぼとぼと電車で帰宅した。エレベーターなしの古い団地を5階まで駆け上がると、ベッドに転がっているiPhoneには相手からのメッセージが2、3着ていた。
これは、めちゃくちゃ怒られるかもしれない…
すでに約束の時間から一時間以上経っている。繰り返すが最初のデートである。私が男ならこんな女には関わりたくない。恐る恐る電話をかけた。
「何かあったのかなぁと心配してたよ〜」
iPhone越しの、朗らかしろくまボイスである。
「これからでよければ一緒にご飯食べよう」
心の広すぎる提案に、私は謝りまくりの大急ぎで再び新宿に向かっていった。
さて、デート=おしゃれ=西口という図式はこの日あっけなく崩れ去った。
相手のプランで、この初デートは「つけ麺」を食べに行くことになっていた。ちなみに、つけ麺屋は東口にあった。
私は綺麗なブラウスとスカートに日傘を差して、何十分もつけ麺店の行列に並んだ。狭いカウンター席で大量の麺を啜り、お腹を壊した。もちろん、一時間半も遅刻している身であるからして1mmの文句も不満もない。
さて、これは私と夫の初デートの記録である。
角田光代さんの『恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。』という本に、「恋人との初デートを覚えている?」というエッセイがある。
友達が何気なく言った言葉で、つくづくそのとおりだなあと思っていることがある。
最初のデートが、相手のすべてを象徴している、とその友達は言ったのだった。
ほう、と思った。
なるほど私は類まれなドジであるし、夫は広い心を持った食いしん坊である。
こうしてみると、最初のデートにすべては凝縮されていた。真実である。
一緒にいるようになって3年ちょっと、相乗効果で極まってゆくドジとデブ。
そうである。
ドジは治らなくても、二人そろっての体重増加は避けなければならない。
皆さん、恋人との初デート、どんなでしたか?
Sweet+++ tea time
ayako
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