人間関係、仕事、家族、日常生活……あらゆる場面で「怒り」を感じることがあります。怒りのせいで「また失敗した」と感じることも。
怒りを外にぶつけて、苦い思いを繰り返すか、ぐっとのみ込んで、時間が経つのをひたすら待つか。いずれも、苦しい状態です。
怒りから、もっと自由に、ラクになれる方法はないものか――“人生の達人”ブッダに聞いてみると、意外な「怒らない方法」が返ってきます。
「人生を快適にする合理的な方法」として仏教を説く、独立派の出家僧・草薙龍瞬氏(著書に『反応しない練習』がある)が、ブッダ流「怒りの消し方」を紹介します。
「怒り」は、誰にとっても切実なテーマです。その最大の理由は、人間関係に支障を来すこと。自分にとって、ストレス・苦しみになることです。
だから「怒らないようにしよう」と考えるわけですが、現実には「つい怒ってしまった」「やってしまった」ということばかり……。
「怒ってはいけない」と頭ではわかっているのに、なぜ怒ってしまうのでしょうか。
仏教流に考えれば、それは「怒りの正体が見えていない」からです――。
■怒りのほとんどは、理由がない
怒りは “心の反応”のひとつ。不快な反応です。その理由は、世間ではさまざまだと思われていますが、仏教的には、実は2種類(! )しかありません。
ひとつは「物理的な刺激」によるもの。たとえば、危険な目に遭ったり、体に触られたりしたときの不快感――これは、生き物に共通する最も原始的な怒りです。
これ以外の怒りは、1種類だけです。つまり「精神的な刺激」による怒りです。
たとえば、嫌いな相手の振る舞いや、思いどおりに進まない現実への怒り、いつ始まったのか自分もわからない慢性的なイライラなど――これらはすべて、肉体ではなく、心が刺激を受けて生まれた反応です。
しかし、不思議な現象だと思いませんか? なぜ物理的な接触がないのに、心が刺激を感じて怒ってしまうのでしょうか?
心が刺激されてしまう理由――そこを突き止めることが、「怒らない方法」の決定的なポイントになります。
■初公開・怒りを克服する3つの対策
ブッダの知恵を生かせば、怒りのタイプは3つです。そのタイプごとに「怒らない方法」を、まとめてみましょう。
《その1 貪欲タイプの怒り》
ひとつは、「貪欲」つまり “欲求過剰”(求めすぎ)な精神状態からくる怒りです。
たとえば「もっと高く評価されたい」「もっと業績を上げたい」「もっと早く、もっと高いスコアで試験に受かりたい」といった願望です。
人間関係で「あの人とは話が合わない」「わかりあえない」という不満・ストレスも、意外かもしれませんが、貪欲タイプの怒りだったりします。
つまり、相手に「わかってほしい」「こうあってほしい」「味方でいてほしい」という過剰な期待や要求が、そうはならない現状に「怒り」をつくり出しているのです。
<対策>
こうした求めすぎタイプの怒りは、「私が求めすぎているんだな(欲求過剰なんだな)」と客観的に理解することが、コツになります。
というのも、求めすぎている精神状態では、何も変わらないからです。他人は、自分以上に変わりにくい(期待できない)相手なので、そのままでは、不満も、相手との衝突も、続いてしまいます。
そこで、求めすぎている状態に気づいて、「考え方を切り替えよう」と考えます。「自分に今できることは何だろうか?」と、自分に聞いてみるのです。
体を動かす作業。自分の役割。自分にとって有意義で、楽しいこと。できることは、意外とたくさんあります。自分の持ち分・領域のほうに心を向けることを基本とするのです。
こうした心掛けを、仏教の世界では「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」と表現します。反応するより、自分の足元をよく見よう、という意味です。

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