胸を見せたエマ・ワトソンさんは反フェミニストなのか?
- 2017年03月7日
チェリー・ウィルソン、BBCニュース
英女優エマ・ワトソンさんが、ファッション誌「バニティ・フェア」のグラビア撮影で胸の一部を見せたことで、ソーシャルメディアでは「フェミニストとは何なのか」について、激しい議論が繰り広げられている。
ラジオ司会者のジュリア・ハートリー=ブルワーさんは、「女性が性的なものとして扱われていると文句を言いながら、自分は仕事で性的な表現をしている。偽善だ」とツイートした。
これに対してワトソンさんは、自分が「反フェミニスト」だと非難されていることに「混乱している」と述べ、フェミニストとは何か、その意味について「誤解ががある」と指摘した。
ではどうだろう? 胸をさらけ出しても、フェミニストと言えるのだろうか?
「エマ・ワトソンは、私たちの誰よりも女性や若い女の子のために活動してきた」 性の平等や女性の権利のために活動する「フォーセット協会」のサム・スメザースさんはこう言う。
「なので(胸を見せることに)したからといって、ただそれだけで、私たちが彼女を批判できる筋合いはないと思う」
「力のある女性が、とても趣味のいい写真のためにポーズをとっている。搾取されているわけではなく、自分が物事を決められる立場に立って、自らそうしている。自分の体をポジティブに使っている」とスメザースさんは話す。
英大衆紙サンが3ページ目にトップレス・モデルの写真を掲載することに抗議し続けた団体「セクシスト・ニュース」は、映画「ハリー・ポッター」シリーズでおなじみのスター女優が、「世間の目の前で成長してきた彼女が、フェミニズムを探求して応援している」ことを大いに歓迎している。
バニティ・フェア誌の写真が騒ぎになっているのは「おかしな話だ」と同団体は言い、「男性がファッション写真でどれだけ、乳首に直接ふれるクローシェ編みの上着を着たからって、こんな議論にはならない」と指摘する。
「私たちの社会の家父長的な枠組みの外に出て、女性が何を着るか選ぶことはできない。エマ・ワトソンのような人は、ほかの女性よりもはるかに厳しいあり得ないスタンダードにさらされてしまうのだという、今回のことはその一例に過ぎない」
少女や若い女性を支援する英団体「ガールガイディング」のメンバー、ビクトリア・ジェンキンソンさん(20)は、写真を口実にワトソンさんを「騒ぎに巻き込み」、女性の権利推進のためのワトソンさんの活動を「損なおうとする」人たちがいると考えている。
「写真は偽善的ではないし、フェミニストとしての彼女の活動を損なうものでもない。私たち女性は、平等のための闘いで今まで以上に一致団結するべきです」とジェンキンソンさんは言う。
「女性にああしろこうしろ、あれをするなこれをするなと言ってもいいと、どうしてそんなことが思えるのか分からないし、彼女を批判する人たちはピントがずれてるというエマと同じ意見だ」
「自分がどうしたいのか、女性は自分で選んでいいはずです。それこそが2017年のフェミニズムです」
一方で、ウエストイングランド大学のフェミニズム研究者、フィン・マッケイ博士は、フェミニズムとは女性に「選択肢」を与えることだという見方を否定し、フェミニズムとは社会正義運動だと指摘する。
「エマは、フェミニズムとは選択に関することで、自分がやりたいことは何でもできる選択肢に関することだと言うが、それはナンセンスだ」
「とんでもない選択をする女性もいる。女性の中絶権を禁止したり、女性への医療提供を妨げたり、母親への福祉提供を妨げる政党のために働くことを選ぶ女性だっている」
しかしバニティ・フェア誌の写真のようなポーズをとったからといって、ワトソンさんがフェミニストでないことにならないと、マッケイ博士は考えている。
「本人が自分はフェミニストだと思い、女性の権利推進を支持するなら、自分の仕事をしているからといってそれを損なうことにはならない」
「しかし、グラビア撮影で胸を出すことがフェミニストとしての行動だと言いたいなら、話は別だ」
フェミニズムを推進したいなら、体ではなく声を使った方が効果的だとマッケイ博士は考えている。
「この文化で女性ができる、なによりラディカルな行動とは、服を身に着けたまま口を開いて、政治的な主張をすることです」
ワトソンさんのグラビア写真にまつわる議論から、フェミニストとは何かという論点が浮き彫りになった。
しかし性の平等を求める団体やフェミニストは、議論されるべきは女性を物扱いする風潮や、不平等だと主張する。
「フェミニズムを腐したいだけ」
スメザースさんは「本当の問題は、若い女性に対するプレッシャーです。若い女性には一定の決まった外見が求められ、外見で判断されてしまう。なので、何かひとつを取り上げて議論するなら、その問題を最優先にすべきです」と話す。
マッケイ博士は、有名人が胸を出したことにのみ議論が集中するのはなぜなのか問いただす。議論されるべきは、女性の経済状況や女性に対する社会福祉の削減だと。
「ハリウッド・スターがおっぱいをちょっと出してみせたからって、私にはかなりどうでもいいことです」
「今フェミニズムがどうのと話をしている人たちは、本当はフェミニズムを腐したいだけのように見える。女性を物扱いするハリウッドの全般的な問題を、議論したいわけではないようだ」
「セクシスト・ナウ」はこう付け足す。「このファッション写真1枚だけがなぜこれほど騒ぎになったのかを、じっくり見定める必要がある。ファッションや有名人の写真に問題がないというわけではなく、その正反対だ」
「私たちの文化が、女性の体をどうやって提示し、規制し、消費し、その行動を非難するか。そこが議論されることなく、今回もいつもと同じで、女性が何をすべきか、あるいはすべきでないかの、そこだけが注目されている」
「挑戦すべきは、そういう社会のありかただ。社会制度の中に押し込められて身動きできない女性個人を、批判するのではなく」
(英語記事 Is Emma Watson anti-feminist for exposing her breasts?)